中国との貿易において、FOB(Free On Board)取引は最も一般的な取引条件の一つです。この記事では、FOB取引の基礎知識から実務上の注意点、CIFを避けるべき理由までを解説していきます。
中国との貿易取引・FOBで進める方法
FOB取引の基本
FOBは、貿易条件のインコタームズの一種、「Free On Board(本船渡し条件)」の略です。商品の売主が輸出国側の船積港に停泊する本船に貨物を積み込むまでの費用と危険を負担します。一方、買い手は、輸出国側の本船積載以降の全ての費用と責任を負担します。
詳細はFOBの基本知識をご覧ください。
FOB取引における責任範囲
- 売主の責任範囲:工場出荷→運送→通関→船積みまで
- 買主の責任範囲:船積み後の海上運賃、保険料、輸入通関等
中国貿易におけるFOBの特徴
メリット
- 買い手側で船会社を選択できる。
- 複数の仕入先がある場合の一括混載が可能
- 過大(無駄)な費用を請求されにくい。
デメリット
- フォワーダーの手配が必要
- 船積みまでの進捗管理が重要
- 予期せぬ追加費用が発生するリスク
【中国売り手目線】FOB価格の計算方法
ここで中国側のセラーの立場(売り手)でFOBを考えてみましょう。FOB価格には、次の費用が含まれます。
FOB価格 = 製品原価 + 国内運送費 + 輸出通関費用 + 港湾諸費用 + マージン
具体例:アパレル製品の場合
- 製品原価:1,000円
- 国内運送費:50円
- 輸出通関費:30円
- 港湾諸費用:20円
- マージン:200円
→ FOB価格:1,300円
例えば、あなたが日本側の買い手であり、中国側のセラーに「FOB 上海の価格で見積もりをください」などと依頼をします。すると、中国側のセラーは、上海港に停泊する本船に貨物を載せるまでの費用を負担するFOB 上海価格の見積をしてくれます。
もし、あなたが広州港で引き取りたいのであれば「FOB広州の価格を知りたい」と伝えます。このようにして、引き渡し先の港を指定してFOB価格を取得します。
*後述するEXWなどのインコタームズを選ぶと、売り手の見積もり価格は、製品原価及びマージンの合計額になります。
*EXW=中国側の倉庫や工場で貨物を引き渡す契約
【日本買い手目線】FOBにおける輸送
FOBの場合、売り手は、中国側の本船に貨物を搭載する迄の費用を負担します。そこから先の費用は負担をしない為、買い手側で手配が必要です。そこで、自社が取引をするフォワーダー(中国に強い業者)に依頼して、中国側の港から日本側への輸送費の見積依頼します。
これにより….
- 中国のセラーが提示する見積もり価格:中国の倉庫や工場~中国の港までの価格
- フォワーダーが提示する見積もり価格:中国の港から日本の任意の地点までの価格
上記の通り、中国側から日本側への物流費を算出できます。なお、「日本の任意の地点」には様々な所があります。
例えば、
- 東京港
- 大阪港
- 名古屋港
などの港までの費用が含まれる場合もあれば、そこから先の輸入通関、国内配送費などを含む場合もあります。フォワーダーに対して、どこまでの費用を含むのかを確認します。
実務におけるチェックポイント
実務において中国側のセラーとFOBで話を進める場合は、以下の点に注意しましょう。
- 積出港の明確な指定(何港なのか?)
- 納期の設定
- 各種費用の負担
- 必要書類を用意できるのか?
- 船積スケジュール
- 通関状況の確認
例えば、現在、中国側のセラーとCIFなどで取引している場合は「FOB価格で見積もりを出してほしい」と依頼してみましょう。
まだ全く取引をしていない場合は、中国のセラーとの交渉時、3つのインコタームズに基づき商品の価格を提示してもらいます。
- EXW(具体的な引き取り場所)の価格
- FOBの価格
- CIP/CIFの価格
セラーに対して上記3つの価格を提示してもらえば、より有利な価格で取引ができます。
参考情報:中国輸入では、CIFを避けた方が良い理由
中国から商品を輸入する際は、できる限りCIFなど、売り手側が輸送費を支払うインコタームズを避けた方が良いです。その理由は、過大請求、結託にあります。
- 中国のサプライヤー(販売者)=A
- 日本の輸入者(買い手)=B
- 中国側のお抱えフォワーダー=C
例えば、中国のサプライヤーA社から日本のB社が輸入するとしましょう。このとき、中国のサプライヤーA社は、お抱えのフォワーダーC社などがいます。つまり、サプライヤーAは、フォワーダーCを使う前提の下、日本のB社にCIF価格を提示します。
この時、フォワーダーCは、このようなことをすることがあります。
- 中国側の輸送費用を日本側に支払わせる。
- 貨物をロックする。
1.中国側の費用を日本側に支払わせる。
- 本来、中国のサプライヤーAが負担するべき輸送費用をゼロにする。
- 日本のB社は、輸入時にA社が負担するべき輸送費用を払わされる。
具体的には、日本側で貨物を受け取る際に発行されるアライバルノーティスの請求項目の中に、本来、中国側のA社が負担するべき費用を加えているのです。日本のB社は、日本の港までの貨物を到着させる条件で、すでにサプライヤーに送金しています。ですが、この結託行為は、サプライヤーにも、フォワーダーにも送料を二重で払わさられることです。
2.貨物をロックする。
貨物のロックとは、B/Lのコンサイニー欄(荷受人)が、フォワーダーC(●●代理店など)など、本来の輸入者以外の名義(上記の場合は日本のB社)になっていて、貨物が留め置かれることです。
非常に簡単に表現すると、フォワーダーC社から「貨物を受け取りたければ、余分に料金を支払え(シッパーへの料金とは別)」と、物理的に留め置かれて追加の諸費用を請求されます。しかも輸入側の港に到着したときに通知をしてくるため、引き取りまでの時間の関係から、嫌々、払わさられることがあります。
上記2つの仕組みは、中国側の販売者とフォワーダー(代理店)による結託行為によるものです。CIFは、あらゆる部分で過大に請求をして、その利益を両者(中国側の販売者、フォワーダー)で分かちあう仕組みです。
特にCIF以外の取引は拒否するようなサプライヤーとは付き合わない方が良いです。上記の結託にはめ込まれる可能性があります。
輸送の主導権を自社へ。他社に依存する部分を減らすことが大切
この結託行為から逃れるために、インコタームズはFOB又はEXWがおススメです。上記の説明の通り、FOBで契約をすれば、中国側の港までの手配は輸出者が行います。輸入者(買い手)は、中国側の港から先の手配を自社がお付き合いをするフォワーダーに依頼します。これにより、中国側のサプライヤーやフォワーダーが付け入る隙がなくなります。
純粋な商品価格を比較したければ、EXWを選ぶべき
もし、可能であれば、FOBよりもさらに売り手側で取引をするEXWをおすすめします。EXWは、中国側の施設から先の全ての費用と手続きが必要です。逆に言うと、純粋に商品価格で比較検討ができる為、サプライヤーに価格競争力があるのかを判断できます。
EXWは、CIFと比べて輸送知識が必要です。本来は、初心者向きではないタームであることは間違いないです。ですが、最近では、中国の郵便番号や住所と日本側の郵便番号を指定するだけで一気に国際輸送をしてくれるサービス(中国側の引き取りサービス)もあります。これを使えば、貿易初心者であってもEXWでの取引を実現できます。
余談:見積を取得する上でのインコタームズの重要性
例えば、今、ある商品を購入しようとしているとしましょう。
- A社は、一つ5ドル(EXW)
- B社は、一つ6ドル(FOB)
上記は、どちらのサプライヤーの方が価格競争力があると思いますか? 当然、答えは、わからないです。但し、少なくてもB社の価格が高いからといって、A社よりも価格競争力がないとは言えないです。理由は、インコタームズが違うからです。
インコタームズ上、上記の2つは、商品の引き渡し場所が全く違います。販売者側の負担するべき費用や義務等も違う為、当然、価格差があります。
中国のサプライヤーから見積もりを受け取る場合は、必ず見積条件を揃えましょう!
よくあるトラブル事例と解決策
事例1:通関の遅延
- 原因:書類の不備
- 対策:事前の書類チェックリスト作成
事例2:追加費用の発生
- 原因:検査による保管料発生
- 対策:契約書での費用負担の明確化
事例3:船積み遅延
- 原因:現地運送業者のスケジュール管理不足
- 対策:自社でフォワーダーを手配する。
輸出入と国際輸送の手引き
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