原産地証明書の基礎知識
貿易取引を始めると必ず耳にする「原産地証明書」。この書類は国際取引における重要な証明書の一つですが、初めて貿易に携わる方にとっては、その必要性や取得方法がわかりにくいものです。この記事では、原産地証明書について、基礎から実務のポイントまでわかりやすく解説します。
原産地証明書とは?
原産地証明書は、輸出入される商品の原産地(どの国で生産されたか?)を証明する文書です。通関時の必要書類として使用され、関税の減免や貿易統計の作成などに活用されます。
一般の荷主は、基本的に輸入時の関税の減免税を受ける為に活用します。
なぜ原産地証明書が必要なの?
原産地証明書が必要な理由は以下の通りです。
- 輸入者からの依頼
- 契約書の取り交わし
- L/Cなどの開設
原産地証明目的は「貨物の原産地、品目の国籍を証明すること」です。また、これにより輸入国側の関税を減免又は減税するために使います。
輸入の関税率を下げられるか?を判断
- EPAやFTAによる特恵関税の適用
- 一般特恵関税(GSP)の適用判断
特恵国又は、EPA締約国の産品は、他の国の産品よりも優遇税率を適用します。その判断を原産地証明書で行います。
輸入規制の対象産品か?を確認する
- 数量制限の管理
- アンチダンピング措置の適用判断
例えば、日本政府が特定の国に対して制裁的な関税率(北朝鮮など)を課しているとしましょう。このとき、その商品が特定国の産品でないことを確認するために使います。
どういうタイミングで使うの?
原産地証明書は、いくつのシーンで使います。仮にあなたが日本にいる輸入者又は輸出者だとしましょう。その視点で考えると….
- 途上国の産品を輸入するとき
- 商品を輸出するとき
などで使います。
例えば、あなたが発展途上国から商品を輸入する際は、輸入元国側で発行された原産地証明書を日本税関に提出することで、特恵関税率を適用できます。(有利な税率を適用できる)
原産地証明書の種類と用途
原産地証明書には、いくつかの種類があります。また、種類による用途の違いがあります。
1. 一般の原産地証明書
- 最も基本的な原産地証明書
- 商工会議所が発行する
- 特定の優遇措置を求めない場合に使用
日本から商品を輸出する際、日本の商工会議所で取得します。この原産地証明書は「確かに日本で生産された商品であること」を証明します。
*輸出貿易管理令の規制物品を輸出する場合など
2. 特恵原産地証明書
- GSP原産地証明書(フォームA)
- 開発途上国からの輸入品に対する特恵関税の適用に使用
- 輸出国の政府機関が発行
特恵国の政府機関が発行する原産地地証明書です。日本側の輸入通関で提出すると優遇税率を適用できます。
3.特定原産地証明書
- RCEP含むEPA締約国間の貿易で使用
- 第三者証明制度、認定輸出者による自己証明制度、自己申告制度などがある。
- 第三者証明制度の場合は、日本商工会議所が発行する。
EPA締約国の産品であること
を証明するために使います。日本からの輸出の場合は、日本商工会議所が発行する特定原産地証明書を使います。(相手国税関に提出)日本への輸入の際は、相手国政府が発行した特定原産地証明書を使います。(日本税関に提出)どちらも輸出側が証明書を取得し、輸入者が輸入側の税関に提出することで、関税の免税や減税を受けられます。
原産地証明書の取得方法
1.商工会議所での取得
一般の商工会議所で原産地証明書を取得する場合は、次の通りです。
必要書類
- 原産地証明申の請書
- インボイス(商業送り状)の写し
- パッキングリストの写し
- 原産性を証明する根拠資料
申請手順
- 必要書類を準備する(根拠書類:完全生産品又は実質的変更基準を満たす産品)
- 最寄りの商工会議所に申請する
- 審査・確認
- 証明書の発行
2.特恵原産地証明書を取得する方法
特恵国の原産地証明書は、輸出国側の政府が発行します。
例えば、A国の産品を日本に輸入する場合は、売り手を通してA国政府が発行した原産地証明書を取得して、日本の税関に提出します。(あなたが買い手の場合は、何もしなくてもOK!)
3.日本商工会議所で取得する方法(第三者証明制度)
あなたが輸出者の場合:
EPAで使う原産地証明書は「特定原産地証明書」と言います。こちらは、日本商工会議所で取得します。これを「第三者証明制度」と言います。原産性ルールを確認し、根拠資料を用意した後、オンラインシステムにより申請をして証明書を取得します。取得した証明書は、買い手に送ります。
原産性立証資料とは、輸出する商品が「日本の原産品」であることを立証する資料です。具体的には、対比表、ワークシートの基礎資料と合わせて、基礎資料の根拠を示す書類(請求書や各種計算書など)などがあります。輸出者は、これらの資料を取りそろえると、はじめて日本商工会議所への判定依頼をかけられます。
あなたが輸入者の場合:
売り手側(輸出国側)で証明書を取得してくれるため、あなたは、何もしなくれも良いです。但し、売り手側で証明書を取得するときのHSコードは、日本税関が基準になります。よって、売り手に対して、日本側のHSコードは何番であるかを伝えましょう!
4.その他の証明方法
EPAによっては、第三者証明制度が認められていないです。この場合、協定で定められている方法により原産地証明書の代わりとなる書類を用意します。例:自己証明制度、原産品申告書、宣誓文など
特定原産地証明書 | 一般原産地証明書 | |
適用国 | 日本とEPAを締結する国 | 全世界 |
発行主 | 日本商工会議所 | 各市区町村の商工会議所 |
目的 | 相手国の関税削減 |
|
申請方法 | 専用サイトによる電子申請 |
|
原産地証明書を扱うときの注意点
特恵に基づく原産地証明書を使うとき、又は、EPA協定に基づき特定原産地証明書を取得する 又は自己証明制度等により原産地証明書に代わる生類を用意する場合は、次の点に注意しましょう!
1.記載事項を確認する
- 輸出者・輸入者の正確な情報
- 商品の情報は正しい?
- 原産地基準の適切?
- 積み地、揚げ地に直送している?
特に原産性がない物に原産品と偽る行為は脱税行為です。適宜、輸入国側の政府は、減税又は、免税が適切であったのかを遡及的に調査しています。十分に気を付けます。
2.よくある不備と対策
- 記載内容の不一致(インボイスと証明書の内容が異なる)
- 署名・印章の漏れ
- 原産地基準の誤記載
- 有効期限切れ
3.書類を管理すること
EPAの原産性に関する書類は、保管期間が定められています。保管期間内であれば、輸入国側政府から、原産性に関する質問が来る可能性があります。
- 原本を適切に保管すること
- 保存期間の遵守(一般的に3~5年)
- 税関の求めがあった場合、すぐに回答ができるよう書類を整理すること
保管するべき資料例
基本的に特定原産地証明書を取得するときに使ったすべてです。資料の保存方法としては、特に特定原産地証明専用にしておく必要はありません。しかし、後から色々と資料を探し回る手間を考えると、特定原産地証明書専門の資料集を作り、輸出取引ごとにまとめておくことが賢明だと思います。
- 特定原産地証明書のコピー(念のため)
- 対比表またはワークシート
- 対比表またはワークシートの数字の根拠を示す各種書類(請求書など)
- 材料原価計算書(デミニマス/僅少ルールを使っているとき)
- 製造工程フロー図
- 総部品表
- インボイス
- パッキングリスト
- B/L
- DHLの発送状(書類を輸入者に送付した資料)
5年間 | 日メキシコ、日マレーシア、日チリ、日タイ、日インドネシア、日フィリピン、日インド、日ペルー、日オーストラリア、日モンゴル、TPP、日欧EPA |
3年間 | 日ブルネイ、日アセアン、日スイス、日ベトナム |
輸入価額が20万円以下は原産地証明書は不要
一回の輸入価額が20万円以下の場合は、少額貨物の簡易税率が適用されます。かつ、原産地証明書はなくてもインボイスやB/L等を基準にして特恵関税、EPA税率を適用してもらえます。
まとめ
原産地証明書の取得は、一見複雑に思えますが、基本的な流れを理解し、適切な準備を行うことで、スムーズに手続きを進めることができます。特に以下の点に注意して取り組みましょう!
- 必要書類の事前確認
- 記載内容の正確性確保
- 期限管理の徹底
- 社内体制の整備
不明な点がある場合は、最寄りの商工会議所や税関に相談することをお勧めします。また、EPAやFTAの活用を検討している場合は、事前教示制度を利用して、原産地規則の適用について確認することも有効です。
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