輸入を行うときに気になるのが「個人使用目的」「商売目的」の線引きです。どちらに当てはまるかによって、課せられる関税や適用される法律が異なるためです。この線引きは、税関と見解が分かれることが多いです。
例えば、自分が所有している会社の中で食べるお菓子を輸入するとします。このとき、仕事をしながら輸入したお菓子を食べることは「個人的使用に含まれるのか」です。
個人として単独でみると、自分で食べるお菓子ですから「個人的に使用する目的」であるといえます。しかし、もう少し広い視野で考えたとき、お菓子を食べて業務効率を上げているとすれば「商用に使っている」との見解もあります。個人使用目的と商用利用目的には、不明確な線引きが存在します。そこで、今回は個人使用と商用利用をケース別にご紹介していきます。
個人使用?商用?
個人使用目的の輸入とは、非営利であることはもちろんのこと、自分以外の人が一切使用しないことです。例えば、先ほどのお菓子であれば、自分以外の人が一切食べないことが条件です。また、服などであれば、自分だけが着るものが対象です。
注意する点は、個人輸入した物は、有償・無償問わず、人にあげることも禁止されていることです。また、よくあることとして海外の物品を誰かと共同購入するときがあります。共同で購入することによって、送料などがかからず色々と都合が良いことがわかります。しかし、この行為も個人輸入の定義から外れて「違法行為」です。
他方、商用利用の場合、個人的使用の定義から外れている物に適用されます。最も大きいポイントは、個人使用が「自分で楽しむことを目的」とする中、商用利用は「販売をして儲けること」または「業務用に用いること」です。したがって、個人使用目的で輸入するよりも厳しい関税が適用されたり、貨物に対する必要な法律が異なってきたりします。
商用利用例:輸入した商品を誰かに販売をする、職場で使うオフィス家具を購入する、無償の商品見本を輸入するなど。
なぜ、個人使用目的が重要なの?
個人使用目的は、輸入者の本人が使用することを前提として課税価格を減免する措置があります。これを0.6掛けルールといいます。また、この0.6をかける対象は商品価格のみです。海外の小売価格×0.6をかけた価格が「課税価格」です。ちなみに、この課税価格には、送料や保険料金を含める必要はありません。このような優遇措置を与える代わりに制限をしているのです。
法人輸入?小口輸入?
輸入を調べると、法人輸入や小口輸入なる言葉が見つかります。基本的に、これらの言葉は、関税法上の区別はありません。実務上、個人使用と商売目的を区別するために使います。いわゆる個人輸入は、個人使用目的で輸入すること。他方、商売目的の輸入は「小口輸入」又は「一般商業輸入」と言います。法人輸入なる言葉は、関税法上も実務上も存在しません。
税関が個人使用と商用利用を判断している基準例
税関が商用利用目的か個人使用目的かを考える場合、以下の基準で判断しています。
- 基準1.貨物の送り先は、屋号や会社名になっていないか。
- 基準2.購入する商品に反復的(繰り返し)に輸入していないか。
- 基準3.表記されている金額に不自然さがないか。
- 基準4. 購入する数量が「個人使用する分」としては適量か。
それでは、上記のルールなどを頭に入れながら、ケースごとに個人使用目的か、商用目的かを見ていきたいと思います。
その輸入、個人使用目的?それとも商用利用目的?
友達との共同購入での輸入
友達とある国のネットショップを見ていたところ、同じショップ内で別々の商品を気に入りました。国際送料などもかかりますし、同じショップの中の商品なので、まとめて共同購入することにしました。これによってAさん名義の注文の中にBさんの商品が含まれる状態で輸入をしました。この場合、共同購入をしているため、個人的使用での輸入は認められません。
会社のオフィスで使う商品を輸入
会社のオフィスで使用する商品は、基本的に商用利用目的です。しかし、個人事業主などの場合は、自宅の一室を作業スペースにしている場合があります。この部屋の中で「自分専用」に使う場合、個人使用目的での輸入との判断はできません。したがってこの場合の輸入は、キワドイです。
貨物の受け取り先の名前を「屋号」などにすると、一発で商用扱いです。そのため、このケースの場合であれば「個人名」を宛先にすることがポイントです。
同じ商品を何度も輸入(反復性)
革靴などを輸入するときに定期的に何度も輸入する人がいます。この場合、税関としては「なぜ、個人使用目的なのに、何度も輸入する必要があるのか」という疑問がでてきます。このように輸入に反復性(繰り返し)があると商業輸入として判断される可能性が高いです。
家庭用菜園のために麦わら帽子を輸入
家庭菜園は、個人的に趣味で楽しむ範囲だと考えられます。したがって、ここで使用する帽子は「個人的使用」として判断できます。
業務用の畑で使う農機具を輸入
この場合、畑は利益を生む場所にあたります。この場所で使う農機具であれば、利益を目的としている貨物に当たります。したがって商業輸入貨物として判断される可能性が高いです。
世界中の帽子を集める趣味があり、一回で10個ほどを輸入
この場合、おそらく「数量的」に個人使用目的であると判断されない可能性があります。通常であれば、個人が帽子を使うのに、それだけの数を必要としないからです。したがって「商業輸入」として判断される可能性が高いです。もし、どうしても個人使用であることを伝えたいのであれば、その旨を説明する書類を用意する必要があります。
友達の代わりに輸入
共同購入と同様、個人使用目的とは認められません。個人使用目的とは、輸入する本人が使用する前提で認められている特例的な制度です。
化粧品を既定の数量内輸入
化粧品は個人輸入であっても「薬機法(薬事法)」の規制を強く受けます。個人が使用する前提で一品目当たり24個まで輸入が認められています。この数量以上を輸入すると、すべて商用扱いとなります。化粧品、バスソルト、石鹸などは海外のお土産として目にすることが多いです。しかし、日本へ商用的に輸入することは、実質ほぼ不可能と考えてください。
詳細は、海外の化粧品を輸入する際に必ず知っておくべきポイントをご覧ください。
太陽光パネルを輸入
太陽光パネルは、次の二つの目的があると考えられます。
1.太陽光パネルによって売電収入を得る。
2.売電収入を得る目的ではなく、自分の電気を太陽光パネルによっておぎなう。
1であれば、商用目的に輸入です。2のケースであれば、個人使用目的と判断できるはずです。もし、税関に説明を求められた場合は、1を説明すると一発で商用目的であると判断されます。つまり、個人用で輸入するときの減免措置は受けられないと考えてください。
祖父の誕生日プレゼントをおくるために輸入
少し言いずらいですが、このケースも個人使用目的とは認められません。なぜなら輸入した本人が使うのではなく、第三者が使用するためです。
明確な基準がない曖昧さ
少し首を傾げたくなる判断基準があることも事実です。特に最後のケースで説明をした「プレゼント用に輸入する~」のは、疑問を感じる人も多いはずです。しかし、これらは関税ルールの中から判断しているだけです。このような制度があるもの、実際のところは、輸入者が話さなければわからないことばかりです。つまり、曖昧な状況の中で判断されることが多いといえます。
輸入者は、このあいまいな基準の中で、どのように説明をすれば、自分自信も税関も納得するのかを考える必要があります。それが輸入を成功させるポイントでもあります。偽りがない程度に聞かれたことだけ、確認されたことだけを答えればいいのです。余分なことを話すと、その分だけ「関税を徴収するポイント」を税関に伝えます。
まとめ
個人的な使用で輸入する目的と、商売用に輸入する目的は、すべてのケースにおいて明確に分けられるわけではありません。そこには必ず不明確な部分があり、税関と見解がわかれることもあります。この場合は、輸入書類や実際の貨物を検査するなどして適正な関税を算出します。これでも見解が異なる場合は、最終的には税関の判断にゆだねられて決定します。
この記事で例として紹介をしたケースを参考にして、どのような物が商用輸入扱いされるのかを判断してみてください。ポイントは、輸入者本人が使うだけなのか? 業務用に使ったり、貨物自体を売却して収益を得たりしていないかということです。
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