輸入時の価格と、日本国内で販売される価格との間には大きな差があります。物によっても異なりますが、輸入価格の5倍~10倍ほどが一般の小売り価格である場合が多いです。
中小企業が輸入ビジネスをする場合、新しい事業を作り上げるというより、海外の安い資材を調達して「コスト削減」を目指す場合が多いです。しかし、実際のところ、このような資材は「輸入企業」を通して調達していることが多いため、思うようなコスト削減効果を得られないことが多いです。
そこでお勧めするのが輸入商社を通さない「直接貿易」によって、海外から資材を調達することです。これであれば、輸入企業を通す分、高くなってしまうコストを下げられます。また、海外企業から直接、資材を調達するため、より価格が安かったり、品質が良いものを安く調達できたりします。
そこで、この記事では、中小企業による直接貿易の方法をご紹介していきます。
関連記事:副業から始める輸入ビジネス まずはアマゾン・メルカリからスタート!
中小企業のための貿易の流れ
目次
輸入商社を通さない「直接貿易」をすれば、輸入商社が入る分の無駄なコストを削減でき、今よりも利益を増やせる可能性があります。貴社が資材として購入する商品の大まかな輸入価格を知りたいときは「財務省統計局が発表する輸入価格」をご覧ください。ここで発表されている価格と、輸入商社からの販売価格との差が「輸入商社の利益」です。もし、直接貿易をすれば、商社の利益部分をごっそり削られます。
中小企業が直接貿易をするときは、以下の8ステップを考えます。
- 輸入したい商品を探す
- 引き合いで貿易取引に関する交渉をスタート
- 代金の決済
- 船積み書類を受け取る
- 貨物の引き取り準備
- 輸入通関と関税の支払い
- 輸入許可
- 貨物の引き取りと出番
1.輸入したい商品を探す。
現在、輸入商社を通じで商品を仕入れている場合は、製品に記載されているメーカーなどへ直接問い合わせをします。このとき「日本の輸入会社を通さないと販売できない」と言われたら、海外のメーカーから仕入れるのではなく、海外の商社などから仕入れられないかを検討します。いわゆる「並行輸入のルート」が存在しないかを考えます。並行輸入は違法なの?
一方、現在は、特に輸入をしていないときは「アリババ」や「ジェトロのパートナー探しサービス」を使って、海外の商品を探してみましょう。このとき、できれば輸入する国を「EPA締約国」から探すと良いです。EPAとは、関税ゼロで商品を輸出入する貿易制度です。
2017年現在、日本は16の国と地域との間でEPAを結んでいます。これらの国を原産国とする商品であれば、「関税無税」で輸入ができるため、コストを削減したい企業によっては、大きなメリットがあります。
関連記事:「HUNADE EPA貿易スタートガイド」、輸入ビジネスの商材選びのコツとは?
2.貿易取引の交渉をスタートします。
輸入したい商品が見つかったら、海外の企業に「引き合い」を出します。引き合いとは、海外の企業に対して「商品に関する問い合わせ」ることです。具体的には、商品の価格、最低数量などを問い合わせたり、商品のカタログ、見本などを問い合わせたりすることです。
輸入者側から問い合わせを行うと、輸出者から「オファー」が届きます。オファーの中には、どのような条件で商品を輸出できるのかが記されています。オファーによって相手に提示した条件は、気軽に変更はできません。
この輸出者からのオファーを輸入者が受け入れを行えば契約は成立します。もし、輸入者が受け入れることができなければ「カウンターオファー」を出して、貿易条件の変更を要望します。このように輸出者と輸入者が複数回にわたるオファーを繰り返すことによって、最終的に貿易取引が成立します。
3.代金の決済をします。
契約条件の通りに代金を決済します。どのタイミングで、どれだけの額を決済するのかは、それぞれの契約内容によって異なります。
例えば、契約成立時に半額を支払い、残りの半額は船の船積みが完了してから支払うなどの方法があります。これについては、輸出者と輸入者が個々に取り決めます。入金をしたけれど、商品が送られてこなかったという不安を除きたいのであれば、先ほどの「半額ずつの決済」を行うことをお勧めします。
関連記事:貿易はどうやってお金のやり取りを行うのか?、為替で損しないコツ!為替予約とは?
4.船積み書類を受け取ります。
輸出者側で船積みが完了すると、貿易関係書類が送付(ファックスや郵送)されてきます。主な物は、下記の書類です。インボイス、パッキングリスト、B/L(写し)などは、ファックスやEメールによって送られてきます。一方、船荷証券(B/L)や特定原産地証明書(EPAを利用して無税で輸入するための書類)は、DHLなどを使って貨物とは別に「原本」が送付されてきます。
B/Lの原本は、日本側で貨物を引き取るときに必要です。いわゆるサレンダーでない限り必ず原本がいります。もう一方の「特定原産地証明書」も税関への申告の際に必要です。この書類を出すことにより、本来関税がかかる商品を「無税」で輸入ができます。
これら輸出者から送付された書類は、後ほど輸入通関を行う際に使用します。
・インボイス(FAXでOK)
・パッキングリスト(FAXでOK)
・保険証券など
5.貨物の引き取り準備
日本へ到着した貨物は、コンテナであれば「コンテナヤード(港のコンテナを保管する場所)」へ。コンテナ未満の貨物であれば、港の近くにある倉庫(CFS)で保管されます。輸入許可になった場合に、これらの貨物を引き取れるように準備します。この場合の準備とは、D/O(デリバリーオーダー)です。
D/O(デリバリーオーダー)は、船会社やフォワーダーから出される貨物引き取り用の書類です。輸入者がコンテナヤードなどから貨物を引き取る場合は、このD/Oと輸入許可書を一緒に提出します。
では、このD/Oを受け取るには、どのような手続きがいるのでしょうか。大きく分けると以下の2つがあります。
- B/Lがサレンダー(元地回収)である場合
- B/Lがサレンダー(元地回収)ではない場合
B/Lは、輸出国で船積みが完了すると、船会社から輸出者へ発行される書類です。この書類は3枚発行されます。日本側でいずれかの一枚を差し出すことで、貨物を引き取れます。しかし、昨今は、船の高速化によって、B/Lが届く前に本船が到着してしまいます。そこで、輸出国側でB/Lを回収して、輸入国側で「B/Lなしで引き取れる仕組み」を作りました。これが「サレンダー」や「元地回収」です。
1.サレンダーB/L(元治回収)の場合
B/Lの原本は、輸出国で差し戻されているため、日本側でB/Lオリジナルを差し出す必要はありません。輸入者は、船が到着したときに届く「アライバルノーティス」に記載されている料金を船会社や船会社の代理店で支払うことで、D/Oを受け取れます。通常、この部分も含めて通関業者が代行します。
2.B/Lがオリジナルの場合
輸出国でB/Lを回収していないときは、日本側でB/Lの原本が必要です。もし、B/Lの原本がないときは、銀行が発行する「バンクLG(信用状)」と船会社から発行される「アライバルノーティス記載の金額」を差し入れることで引き取れます。
6.輸入通関と関税の支払い→輸入許可
輸出者からインボイスなどの書類がファックスされてきたら、取引をしている通関業者(税関への申告を専門に行う業者)へ書類をファックスします。また、B/Lの原本が到着したときは、通関業者へ郵送します。このとき、必ず追跡ができるように書類を送付します。
通関業者は、貴社からファックス送信されてきた書類を基にして、輸入通関の準備を行います。このとき、通関業者からは、輸入する商品の税番号を確定するための質問を何度か受けるはずです。通関業者は、これらの質問を行うことにより、輸入者が「輸入する商品の税番号」を確定していきます。無事に書類作成が終わると、コンピューター上から税関への輸入申告を行います。
輸入申告の後、税関は貴社の書類を審査して、税関検査を行うかどうかを含めて検討します。無事に税関検査等もなく、審査が終了すると、輸入許可がなされます。多くの場合、この許可を受ける際の関税や消費税は、通関業者が立て替えて支払っています。後日、輸入者は、通関業者から輸入通関料、取扱手数料と合わせて、関税や消費税の立て替え金を支払います。
【委任状】初めて通関業者に依頼する場合に用意しなければならない書類
7.貨物の引き取りとデバン
輸入許可になったらコンテナや貨物を引き取ります。コンテナ単位で輸入する場合は、コンテナのまま自社の倉庫へ移動した後に、デバン(コンテナから商品を取り出すこと)を行うのが一般的です。コンテナ未満で輸入(CFS)する場合は、すでに港でデバンされているため、荷物を受け取るだけでOKです。
関連記事:海上コンテナを自社につけるときの注意点
以上で輸入の流れの説明を終わります。
輸入の流れ まとめ
海外から商品を輸入するまでの流れを説明してきました。輸入会社を経由して輸入することは、国内取引と何ら変わらないため、誰でも簡単にできます。しかし、輸入によってコストの削減を目指す場合は、できるだけ取引の中間に業者を入れないことが重要です。
輸入の場合であれば、なるべく輸入会社を通すのではなく、海外の企業と直接輸入取引を行うことがポイントです。良い仕入れ先を見つければ、それだけで大きなコストの削減を行うことができます。直接貿易のメリットは、それだけではありません。
一般の大きな企業では取り扱わないニッチな商品を見つけて、既存の事業に加えて別の収益の柱を立てることもできます。コスト削減という意味でも、新しい輸入ビジネスをやる上でも直接貿易を行うことが貴社にとってメリットになる場合が多いです。
この記事でお伝えをした輸入の流れを参考にして、貴社の輸入ビジネスが発展することを願っています。