タイを拠点とする事業(商売)を成功させるためには、貨物の適正保管・流通面・コスト面での問題解決が重要です。そこで、この記事では、タイの保管倉庫について詳しくご紹介していきます。
タイの貨物保管
日本からタイに輸出した商品は、どのように保管すればいいのでしょうか? まずは、輸入貨物の税務上の特性と倉庫が設定する「受託条件」を確認していきましょう!
貨物の特性と保管・受託条件
輸入貨物の特性と関税
日本からタイへ輸出した製品や部材等の輸入上の取り扱いを確認します。ご存じの通り、タイに輸入された商品には、輸入者がタイ税関に関税を支払う義務があります。 しかし、保税の仕組みを利用することで、輸入時の関税支払いを留保できます。
例えば、タイにいるとしましょう。アメリカから仕入れた商品をタイに輸入します。輸入商品には10%の関税が発生します。しかし、保税倉庫に保管するから関税等の支払いをしなくてもよい。これが保税の仕組みです。
タイの場合は、保税ゾーンにもいくつかの種類があります。保税倉庫の他、輸出加工区(Export Process Zone)が存在し、この保税を利用して、在庫調整をしたり、加工したりしています。
貨物の保管・受託条件
タイへの輸入品を分類すると、次の2つがあります。タイ税関に対してすでに納税をしているのか?が需要なポイントです。そして、これが貨物を保管する「倉庫の受託条件」の違いとなって表れます。
- 関税や消費税等を支払っている物
- 上記を支払っていない物
1番の関税等支払い済の製品であれば、現地ユーザーへ販売(出荷)する、又はユーザーが指定する倉庫へ入れ、そこから国内へいつでも入出庫が可能、民間業者の物流倉庫で受託してくれます。
一方、二番の保税貨物を現地倉庫で預かる場合は、保管倉庫の受託条件が変わり、入出庫にも様々な制約を受けます。また保税貨物を受託できる倉庫も限定されます。
関税等を支払っていない物は、管理等が厳しいことを覚えておこう!
タイの倉庫の種類/4タイプ
タイの倉庫の種類は、次の4つです。保管する貨物の特性(課税済・保税など)・種類・用途などの違いにより分類されます。
- 一般倉庫(General Warehouse)
- 冷凍・冷蔵倉庫(Cold Warehouse)
- 危険物倉庫(Dangerous Goods Warehouse)
- 保税倉庫(Bonded Warehouse)
1.一般倉庫(General Warehouse)
一般倉庫は、紙類・木材・金属・プラスティック製品、部材などの基本的な貨物のみを保管します。
2.冷凍・冷蔵倉庫(Cold Warehouse)
冷凍・冷蔵倉庫は、近年、大型スーパーマーケットやコンビニの普及に伴い、国内・海外から精肉・鮮魚・冷凍食品の需要の高まりにより発展しています。輸入の際は、税関での検疫が必要です。
3.危険物倉庫(Dangerous Goods Warehouse)
危険物倉庫は、法律により取り扱い品目が細かく決められています。一般的な倉庫業者では…
- CLASS3. 可燃性液体
- CLASS6. 毒物
- ClASS8. 腐食性物質
までに限定している所が多く、火薬や禁水性物質(自然発火)など、危険度の高い物は、遠方郊外かつ特定の専門工場内の保管倉庫で取り扱っています。(官庁届け及びタイ消防法の適用を受ける。)
4.保税倉庫(Bonded Warehouse)
保税倉庫は、関税やVATなどの諸税を課税されない所です。この税金等が留保される点を利用して、加工輸出等をするときに利用します。
例えば、近隣の国から生地を輸入し、完成品に仕上げる。又は、AとBのアイテムを組み合わせて完成品Cのセットを作るなどです。課税されない状況で様々な加工をして付加価値を高めます。その他、販売状況等に合わせて輸入量を調整する「調整弁」としての役割もあります。
例えば、日系の保税倉庫には、日通タイの他、三井倉庫・日立物流などがあります。そして、この保税倉庫を機能面で分けると、次の2つがあります。
- Bonded Warehouse
- Free Zone Warehouse
2タイプの保税倉庫の特性比較
Bonded Warehouse | Free Zone Warehouse | |
保管期限 | 2年間 | 2年+1年延長可能 |
保管できる荷物 | 輸入品のみ | 国内貨物のみ |
税金の支払い | 入荷荷時点での一旦全数分の税金を払う | 出荷した数量のみ支払い |
出荷 | 入庫と同数量を出荷しなくてならない。 | 入荷した一部のみ出荷可能 |
Free Zone Warehouseの利便性が高いです。
貨物の輸出入許可と制約(入出庫)
現地法人がないと輸出入ができない又は契約できない?
原則、タイでは、現地法人がない又は現在居留住所がない場合は、日本との貿易(商取引)は不可能です。一般的な貿易体形では、輸出者が売り手、輸入者が買い手の関係が原則です。タイに相手がいなければ、成り立ちません。
しかし、保税運送に限れば可能です。この場合、売り買いではなく、単にモノの移動なので、保税倉庫を持つタイの通関業者か物流業者と貨物保管の委託契約を結びます。さらにFree Zone保税倉庫には、IORとEORという制度・ライセンスがあります。
IOR(Import of record)とは輸入代行、EOR(export of record)とは輸出代行のライセンスであり、Free Zoneの保税倉庫を持っていれば、タイで貨物の荷受け又は船積みが可能で問題解決です。
貨物の保管倉庫の選び方(利便性と立地条件)
次に倉庫の選び方をご紹介します。基本的にスワンナプーム空港、レムチャバン港など、加工と輸送に便利な所に人気があります。
日系物流業者 (空港・港付近)
これらは流通面で利便性のある、スワンナプーム空港、バンコク港、レムチャバン港近くに立地。
- Nittsu Logistic Thailand Co.,Ltd(日通)
- United Thai Logistic Co.,Ltd (九金昭和運輸)
- Nissei International Co.,Ltd(日成)
- Mitsui-Soko Thailand Co.,Ltd(三井倉庫)
郊外工業団地
Bang Na Tradエリアに集中しています。
- ナワナコンディストリビューションC(住友商事)
- アマタナコン工業団地(公営)
一般貨物の倉庫探しは、インターネットのローカル/民間倉庫・工場検索サイト「Find Warehouse Thailand」や「STARTS」がおすすめです。エリアや広さ、予算などの条件で検索可能。レンタル又は買取物件もあります。サムットプラカーンやレムチャバン付近が人気です。
物件例
- 2019年(新築)2階建て1.000平米 170,000THB /月(約50万円)ラヨーン
- 1997年建造 地上1階建て2.400平米 240,000THB/月(約80万円)サムットプラカーン
倉庫の契約・サービス内容や料金体系など
その他、タイの倉庫で覚えておくといいことをご紹介します!
倉庫に関するワンポイント
- 委託倉庫のサービスは、貨物保管・在庫管理・入出庫作業・梱包・コンテナ バンニング作業
- 日系運送・物流業者では担当業務スタッフが日本語で対応可能(ローカル業者は対応困難。)
- 契約形態は企業の物流倉庫のスペース貸、ローカルではレンタル倉庫(丸貸)もあります。月極め賃貸ですが、ローカル業者の倉庫では買取(売り物件)も有り。ただし、契約はタイ法人又は 国籍所有者に限られます。
倉庫の料金体系例
保管料
基本の計算方法:貨物の縦×横×高さの合計=㎥(立米)×1KGと、実際の重量(貨物サイズと貨物重量)のどちらか重い方に業者の定める単価をかけて算出します。そこにはフォークリフト等による作業スペースも付加されることがあります。
入出庫費用
フォークリフトによるコンテナ又は倉庫内での移動にかかるHandling Chargeです。在庫のシステム管理費用等も含まれることが多いです。
積み込み・積み下ろし費用(バンニング費用)
コンテナやトラックなどの車両への積み込み・積み下ろし費用です。車両のサイズにより料金が変わります。
*倉庫の保管費用には必ず見積を取りましょう。
見積に必要な項目
- 保管期間
- 倉庫の種類(上記の4種類)
- 危険品の場合は、安全データシート MSDS
- 冷凍倉庫は管理する温度範囲
- 貨物内容・重量・縦横高さ・個口数・梱包形態(カートン・クレート・缶など)
- 直積み可能か棚積み又はパレットが必要かなどの保管方法
まとめ
- 保管する貨物の分類(関税支払い済在庫か加工輸出目的の保税貨物か)を明確にする。
- 倉庫の種類を選択する。
- 空港・港に近い立地・利便性の良いエリアで保管業者を選択又は検索する。
- どこまでのサービス業務を必要とするか、受託条件やサービス内容を確認する。
- 見積必要条件を確定させ見積を取る。