通関士試験。毎年10月におこなわれる貿易業界唯一の国家資格です。実際に通関士として勤務するだけではなく、物流会社や商社、メーカーでの勤務、転職の際にも大いに役立つ知識です。昇進、昇給の一因にもなることから、学生から社会人歴20年程のベテランまで、幅広い年齢層の受験者がいます。しかし、合格率は例年10%前後。ハードルは高いです。
そんな通関士試験に、全くの未経験であった筆者が独学で一発合格するまでの過程をご紹介します。
通関士試験を独学で勉強
通関士試験とは
毎年10月第一日曜日に行われる国家資格で、全国各都市で受験ができます。試験資格は特になく、申し込みをすれば誰でも受けられます。勤務歴などにより一部の試験が免除される措置もあります。通関士試験は計3科目で構成されており、マークシート方式での回答です。
- 通関業法50分
- 関税・関税定率法・外為法・外国貿易法1時間40分
- 通関実務1時間40分
結果は11月末に官報、WEB上にて公布、合格通知書が自宅に郵送されます。
準備期間と使用教材
貿易業界とは全くの無縁の業界で仕事をしていた筆者。ある時一念発起、通関士の資格取得を決意しました。思い立ったのは7月。10月の試験まで3か月弱の準備期間でした。調べてみると7月半ばから始まる受験申込まであと1週間。申し込みまでにありとあらゆる情報を集め、教材を購入、スケジュール調整をしました。
書店に並ぶ通関士試験対策の教材。分厚い参考書が並ぶその本棚に圧倒され、何も購入せずに帰宅しました。そんな筆者が選んだのが通信講座、フォーサイトです。
ポイントは親しみやすさと金額。自宅に届いた教材一式の中には、程よい文章量とイラストのテキストが入っていました。まずはテキストを開いて目を通してみるというハードルはクリア。そして、付属のDVDと音声教材にはテキストを読み進める、通勤等の移動時間も無駄にしない、という大きな効果がありました。
その後、学習を進めるうちにフォーサイトのみでの対策に不安を覚えた為、WEB上で公開されている10年分の過去問を入手。そして書店で関税・外為法、そして何より貿易実務の対策の為教材を購入しました。
実際に使用した教材
- フォーキャストの教材一式
- 「通関士過去問題集」ヒューマンアカデミー
- 「通関士教科書 通関士試験 通関実務集中対策問題集」翔泳社
- 「通関士試験 ゼロからの申告書」日本関税協会
- 10年分の過去問
それぞれを最低5回。間違えることなく解けるようになるまで、問題演習を繰り返しました。
学習スケジュール
調べてみると、必要な学習時間は約350時間。時には600時間と書かれているものもありました。3か月弱の期間でこの時間をどう確保するかが問題でした。
勉強を始めた当時、通勤時間に約1時間かかっていました。そのうち30分は超満員の電車での通勤であったため、テキストを広げることは不可能です。また残業の為、帰宅時間は毎日午後12時頃。平日にまとまった時間をとることは難しいです。しかし営業職であった為、アポイントの合間に時間を作れたことは幸いしました。
平日はポイントを絞った暗記と、電卓を使いこなす練習をしました。具体的には、移動中は音声教材、アポの合間には暗記、そして帰宅後は主に通関実務の過去問演習です。週末には関税・外為法の項目を中心にテキストの内容を理解し、新しい知識取得が中心です。単語帳など、平日に使用する暗記教材を作成することも効率が良い学習方法です。
試験の前週は総まとめです。一週間で全てのテキストに目を通し、問題を解きます。その中で試験前日にどの項目を、どの問題を解くのか絞る作業をしました。試験当日は、その休憩時間に復習する内容を決めていたことも良かったです。約10週間の学習期間、一日の学習時間を平日は2時間、週末にそれぞれ10時間とすると、合計約300時間の学習時間で合格にたどり着いた計算です。平均値とほぼ同時間でした。
科目ごとの学習傾向を知る
通関士の試験は特に暗記力が問われる、と書かれているのを目にしたことがあります。特に未経験者であった筆者にとって、出てくる単語ひとつひとつに馴染みが全くありませんでした。また法律を勉強した経験も無かった為、独特の表現や固い言い回しは学習意欲を削ぎます。それらをただ暗記していく作業は非常に困難を要しました。
しかし、学習を進める中で感じたのは通関士の試験内容は暗記ではないということです。仕組みを理解すること、システムを把握することが何よりも大切です。法律は暗記問題ではなく、物事の事となりを自分なりに解釈していく読解問題であることです。
難関である通関実務の分野は経験値が重要です。どれだけ問題を解いたか、どれだけのバリエーションを知っているかがカギです。ただの計算問題もあれば、今までの関税法で学んだ知識を活用する問題もあります。手をできるだけ動かし、電卓を活用します。右から左に自動的にモノを動かすように、問題を見ただけで解答を導くための道を見つけられるようになるまで繰り返し練習します。
つまり、関税・外為法の科目の学習には、読解するだけの脳力が必要です。そして、通関実務では手を動かすことが必要です。平日の疲れた頭には読解するだけの意力は残っていなかった為、とにかく手を動かしました。週末の新鮮な頭で、新たな分野を理解し自分の中に落とし込んでいく作業をしました。自分の意欲と能力を把握し、最適な対策を行う。それが功を奏し、一発で合格することができた大きな要因です。
モチベーションの維持と挫折
合格までの道のりでの一番の課題は、いかに自分のモチベーションを維持し、持続していくかです。長い試験勉強期間には、様々な誘惑とハプニングがつきものです。そして、何よりも家族、友人の理解が不可欠です。周囲の協力があってこそ、日々の勉強と、仕事や家庭との両立が可能になります。
また、目標設定も大切です。「合格できたらいいな」程度の気持ちでは、目の前の甘い誘惑に負けてしまいます。ただ合格することを目標とするのではなく、その先に待っている自分の姿を想像しました。次の年、通関士資格を持っている自分と、まだ資格取得の為学習している自分。資格取得後の生活を具体化することです。私の場合は転職でした。試験に合格したその半年後には希望に叶った転職をし、その前とは比べられない生活を送ることになりました。
もちろん、挫折を感じたこともあります。模擬試験の結果です。AからE判定のうち、結果はE判定。合格は不可能に近い、次の試験合格を目指してこれからの時間を準備にあてると良いでしょう、というようなコメントが書かれていました。自分の今までの学習時間は何一つ役立っていなかったのだ、と気力を大きく削がれるものでした。
それとともに強く感じたことは孤独感です。自分の学習方法は間違っているのか。他の受験者はどのように学習しているのか。疑問点があった時にすぐに直接相談できる相手がいないことは不安を大きくあおりました。独学だからこその悩みでもあります。試験結果と相まって、諦めの気持ちが大きくなった事が思い出されます。
その際に、通信講座が大きな助けになりました。活字だけではなく、人が解説している映像がこれだけ励みになると感じたことはありませんでした。また、メール等で質問ができる安心感もありました。結局質問をすることはありませんでしたが、誰か人とつながっている、サポートがあることは何にも代えがたいものだと実感しました。
試験合格の為には?
誰でも受験可能な通関士試験。だからこそ、誰にでも合格するチャンスはあります。全くの初心者でも、独学でも、短期間でも、一発で合格することは可能です。
- 忙しい中でも時間を作る
- 作った時間を無駄にしない
- 最大限の効率化をはかる
私の場合、この3つの要素を実現化したことが合格につながりました。この体験記が少しでもお役に立てれば幸いでございます。
まとめ
- 自分の趣向にあった教材選びをする
- 限られた時間を有効活用する
- 自分の集中力を最大限に生かせる学習スケジュールをたてる
- 具体的な目標設定と執着心が合格へのカギ
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