貿易業界唯一の国家資格である通関士の資格。合格率10%程の難関です。
- この通関士の資格に見事合格し、それを最大限に活用したいと思っている人。
- 既に通関士として経験を積み、次のステップに進みたいと思っている人。
- これから資格取得に向けて準備を始めようと思っている人。
海外市場と日本とをつなぐ、貿易の世界のキーパーソンである通関士。この通関士を持ちながら、個人事業で独立できる道はあるのかを考えていきます。
通関士と個人事業
個人輸出入 通関士の資格は必要?
インターネット通販の拡大により、個人で海外との輸出入をするチャンスは大きく広がりました。誰でも海外市場を舞台に貿易ビジネスに挑戦ができます。そこで気になるのが資格や制度です。貿易などの個人事業をする上で、通関士の資格は必要なのでしょうか?
結論を申し上げると「自分の物を申告する限り不要」です。もし、輸出入の個人事業をするために通関士の資格を取ろうとしている方は、あまり意味はありません。では、通関士とは、どのような業務を行っているのでしょうか? 主な業務は、次の三つです。
- 輸出入する品物を税関へ申告する
- 他法令で規制されているものが無いか確認し、許認可を得る
- 関税・消費税を納める
いずれの業務にも、輸出入に必要な専門知識と経験が求められます。この複雑な業務を省くために、多くの貿易会社は、通関業者(通関士が所属する会社)に、通関業務の代行をお願いします。これにより、通関業務を省き、正確な輸出入申告ができるようにしています。ただし、通関業者は、一般的な商業輸入に関係するだけです。
いわゆるオンラインショッピングサイト(アリババ、アリエクスプレス、ebay、amazon)などを使った個人貿易をする方は、配送業者(郵便やフェデックス等)が自動的に通関手続きを進めるため、あまり通関業者とお付き合いすることはありません。(フェデックスなどが通関を担当しています)
通関士の資格が必要なときは?
自分の物を自分で申告するときは、通関士の資格は不要です。しかし、通関士の資格は、日本国内の流通経路を勉強する上ではある一定の効果があります。
- その輸出輸出入手続きには、○○の法律が関係する。
- ●〇が問題となりやすい。
など、カウンターパートナーとの交渉、折衝の際や専門的な見地より意見を述べるときに通関士の知識が活きます。つまり通関士の資格は、個人輸出入をするプロセス自体には不要ですが、個人貿易ビジネスを成功させるために役立つことが多いです。
通関士として独立開業
独立開業を目標としている人。苦労して取得した通関士としての資格を最大限に活用したいと思っている人。通関士としての独立開業し、成功する可能性はどれぐらいあるのでしょうか。その可能性について考えていきたいと思います。
結論を申し上げると、通関士としての独立は非常に困難です。理由は、以下の2つです。
- 関税や消費税の立て替え資金の用意
- 貨物の保管や輸送
1.関税や消費税の立て替え資金の用意
第一に、高額な関税・消費税の立替え資金の用意があります。通関士(通関業の許可を得ること)は、税関に申告をして関税・消費税を立て替え払いすることでもあります。多くの場合、通関業者は、本来、輸入者が支払うべき、関税や消費税を立て替えています。もちろ、数万円ではありません。輸入申告価格によっては、数十万、数百万にもなる資金を立て替え金を用意する必要があります。
2.貨物の保管や輸送
顧客から通関後の貨物の一時保管や輸送を依頼されることも多いです。時には危険品、保冷が必要な貨物を扱うこともあります。それらを安全かつ確実に管理する場所、業者を手配しなければなりません。企業体であれば用意ができる施設であっても、一個人としては、難しい場合が多いです。つまり、税関長が定める通関業の許可条件を満たせないため、個人が通関業(通関士としての独立)を始めるのは厳しいです。
それでも独立開業をしたい!(副業の可能性)
「通関士としての独立は難しい」です。しかし、これは、通関士を活かすビジネスまでが難しいわけではありません。通関士として培った知識を活かせば、貿易業界には、いくらでもビジネスができるチャンスがあります。いくつかのアイディアをご紹介します。
- 行政書士×通関士
- 貿易実務×通関士
- 貿易プレイヤー
1.行政書士×通関士
幅広い行政書士業務の中で、特に貿易と物流に特化した専門家として開業する道があります。倉庫業を行っている会社が新たに通関業務を請け負う部門を立ち上げることは良くあることです。その厳しく煩雑な施設設置基準を満たすよう、手続き全般を行政書士が行いますが、そこに通関士としての知識や経験を活かします。
顧客にアドバイスをするだけではなく、書類作成から手続きまでを行うことで競合と差別化を図るのです。保税や税関への許認可を得るプロセス等、通関士としての知識や経験は最大限に発揮されます。
2.貿易実務×通関士
貿易に必要であるカミ、モノ、カネ。この3つをコントロールし、貨物を目的地に確実に届ける手配をする貿易実務業務。そして税関や他法令の許認可を得る通関士。このふたつをかけあわせることで、顧客にとってより具体的なアドバイスをする貿易パートナー、いわゆる貿易コンサルティングとして開業する道です。
船舶だけではなく、航空機、トラックや鉄道を駆使した輸送ルートの提案。その時々により複雑に変わる各規制や法令への対応、煩雑な貿易書類の作成から海外のカウンターパートとの折衝・交渉までを網羅したパートナーは、これから貿易を始める顧客はもちろん、課題を抱えた顧客にとって何よりも頼もしいパートナーです。
3.個人で輸出入をする。
通関士として仕事をしていると、今の日本に必要とされているもの、逆に世界に必要とされている物がわかります。その経験を活かし、自ら輸出入をします。フリマアプリやラクマなど、インターネットを使用し自ら物の売買をすることは容易になりました。物の見方や基点を少し変えてみる、そして少し手をかけてみる。それだけで今、可能性は無限に広がっているといえます。
通関士の海外勤務
一方、独立まではしなくても、通関士として海外で働けるチャンスがあるのでしょうか?
日系グローバル企業で海外勤務
海外に拠点を設けている、日系大手企業での海外勤務です。海外拠点には日本人スタッフを含め、現地採用の従業員も多く在籍しています。それらのマネジメント職として日本人を置いている企業がほとんどです。現地の従業員のとりまとめや作業指示をする必要があるため、語学力は必須です。また文化慣習が違うスタッフのマネジメントには、コミュニケーション能力も必要になってくるでしょう。
プラント輸出事業で海外勤務
新興国向けにプラントを輸出する事業に参加する海外勤務もあります。設備投資や大型機械などの輸出を行う、多くの企業を巻き込んだ一大事業です。現地での規制や法令、減免税制度や通関に関する情報など多くの専門知識が必要です。無事に輸出が終わっても、日本に機械などを逆輸入することも多いです。きっと、通関士としての輸出入の知識と経験を大いに発揮ができます。
通関士としての海外勤務の可能性は?
残念ながら、日本の通関士の資格は日本でのみ有効であり、海外で通関士として勤務するには現地での通関士の資格が必要です。
オーストラリアの例をご紹介します。通関士は国家資格として認められていますが、その通関士試験を受験するには、オーストラリア税関によって認定された教育機関で所定の教育課程を履修した上で修了試験に合格する必要があります。国家資格を合格した後には個人面接があり、それに合格すると3年間の通関士資格が与えられます。
それぞれの国には独自の規制と法令があり、使用するシステムも違います。貿易量は上昇傾向にあるのがどの国にも共通することです。ですから通関士自体のニーズは世界中で高まっているのは事実です。
まとめ
- 個人輸出入に資格は必ずしも必要ではありません
- 通関士の独立開業はプラスアルファが成功のカギ
- 通関士の海外勤務の形態は様々
- インターネット+経験+アイディア=無限の可能性
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