この記事は、無償サンプルを輸入するときのインボイスの書き方を説明しています。
日本へ商品を輸入するときは、税関に対して、いくつかの書類を提出します。主なものとして「インボイス(仕出し書)」「パッキングリスト(梱包明細書)」「アライバルノーティス(貨物が到着したことを示す書類)」があります。本日は、この中にある「インボイス」についてご紹介をします。
インボイスは、別名「仕出し書」です。別の物に例えるなら「スーパーのレシート」がピッタリです。レシートには、「●●と〇〇を購入」、そしてそれぞれについて「価格」がのっていますね?
インボイスは「商品と価格」を一覧表示した書類です。これに加えて国際間の取引であるため「外国の誰が、日本の誰に対して発行した物か?」が記してあります。輸入者は、このインボイスを税関に提出することによって貿易の取引内容を証明します。
では、仮のお話として、海外から無償サンプル(貨物)を輸入したり、同じ会社に所属する人同士が貿易(輸入)をしたりする場合、インボイスの表記は、どのようになるのでしょうか。これらの貨物には利益などがのっていないため「インボイスの価格は0」と記載すればいいのでしょうか? 本日の記事は、この部分について詳しくご紹介していきます。
無料の貨物/同じ会社内で輸入するときのインボイスの表記方法
インボイスは「どんな貨物をいくらで輸入したのか?」が記載されている書類です。輸入者は、このインボイスに記載されている金額を基にして「納付する関税を自ら計算」します。これは、フェデックスなどの宅配便で輸入する方法とは、全く別のお話になるためご注意ください。ここで説明しているのは、コンテナなどで輸入することになる「一般商業輸入」のことです。
輸入者(その代理人)は、輸入するときに関税計算の根拠となる書類(エビデンス)として、インボイスを一緒に提出しています。輸入者は、このインボイスの価格を基にして、納付するべき関税額を計算するため、やり方によっては不正もできます。その一つに「アンダーバリュー」があります。
アンダーバリューとは「本来の価格より低い価格として申告(記載)して、負担するべき関税額を少なくすること」です。
例えば、関税率が10%の場合、一つ1000円の物を輸入すると、100円の関税がかかります。一方、これを500円とする「偽りの価格」をインボイスに記載すれば、50円の関税を納めるだけでよくなります。このように輸入時にかかる関税を少なくするために、輸出者と協力して、偽りの価格をインボイスにのせることを「アンダーバリュー」と言います。もちろん、このような行為は「脱税行為」にあたるため、厳しい罰則が設けられています。
このアンダーバリューのお話とは別として、無料の貨物を輸入する場合や、利益をのせる必要がない場合、インボイスには、どのような情報を記載すればいいのでしょうか。本当に無料であるのに、アンダーバリュー扱いされては大変ですね。この部分について詳しく説明していきます。
利益をのせない3つのパターン
は、貿易取引の内容を示す書類です。商品と価格情報がレシートのように一覧表示されているため、これを関税計算のときに利用します。では、利益をのせる必要がない取引の場合、価格情報などは、どのように記載すればいいのしょうか。まずは、貿易をする上でどのような価格にすればいいのか迷ってしまうパターンを3つほどご紹介します。
- プレゼントする場合
- 商業的なサンプル品を入れる場合
- 同じ会社間の輸入である場合
1.貨物をプレゼントするとき
この場合のプレゼントとは、貨物を「贈答」として相手に送る場合のことを言います。商用目的ではなく「個人使用目的」で送る場合が該当します。プレゼントで送るため、価格欄の部分は「無料」と表記すればいいのでしょうか?
2.商業的なサンプル品を輸入する場合の疑問
一般的な取引の流れとして、外国の商品を輸入するときは、最初に「商用サンプル」を取り寄せます。このサンプル品は、有料の物と無料の物とがあり、どちらであるのかは、輸出者の考え方によって異なります。無料のサンプルである場合は、ただ単純に「無料」と表記すればいいのでしょうか?
3.同じ会社間で輸入する場合の疑問
外国の会社(支店含む)と日本の会社が「同じ会社」や「グループ会社」になっている場合があります。この場合、外国の会社を輸出者、日本の会社を輸入者としてインボイスを作成します。ただし、同じ会社内での取引であるため、当然、利益などは上乗せされることは少ないはずです。では、こちらのインボイスの価格も「0」と表記すれば良いのでしょうか?
インボイスの表記方法
上記でインボイスに関するよくある3つの疑問をご紹介しました。いずれのケースも、無料で貨物をやり取りしていることは共通しています。そのため、インボイスの価格欄は「ゼロ」を表記すればいい気がします。しかし、実はそれは大きな間違いです。通関上のインボイスの価格とは「貨物が本来持っている価格」のことを指します。実際に輸入者と輸出者の間で支払う価格が基準になるわけではないです。
例えば、輸出者と輸入者が何らかの事情(無料サンプルを提供、同じ会社に所属など)によって、貨物を無料にしているとします。しかし、この無料になっている貨物は、本来1000円の価値があるとすると、税関は、この1000円を基準にして関税額が適正かを判断しています。輸出者と輸入者がどのような金額を支払っているのかが基準ではなく、あくまで「貨物が本来持っている価値」が基準になります。
中古の古着であるなら、経年劣化分を考えた上での価値、貨物の一部に何らかのダメージがあるのなら、そのダメージを考えた上での「貨物の価値」が基準になります。決して、輸出者と輸入者が「無料プレゼントしている」が関税計算の基準ではないため、ご注意ください。
税関は、全国の輸出入申告の情報をオンラインシステムで一括管理しています。そのため、似た貨物の相場などもすべて把握しています。「●●という貨物は、○○円ほどが相場」などの情報を一元的に管理しているため、明らかにおかしい金額であると、システム上、はじかれるような仕組みになっています。これが税関職員が「疑義」を持つ瞬間です。このとき、輸入者は、インボイス金額の根拠を説明することになります。
一般的な金額が100円で取引されているにも関わらず、それを10円で申告をしているのであれば、その差額を説明する正当な根拠が必要です。これが説明できないのであれば「不正に価格を低く」して、関税の納付額を少なくしようとしているのでないか?との疑念を持たれるのです。税関のシステムは、日々蓄積する膨大な貿易情報を基にしているため「甘く見ない」ことをお勧めします。
無料貨物を送る場合のインボイスの正しい書き方
通関で考えるインボイスの価格とは「貨物本来の価値」のことを言います。よく無料の貨物を送る場合は「n.c.v」と記載すれば良いとの情報を目にすることがあります。(ncvとは「NO COMMERCIAL VALUE=商業的な価値がない貨物」の略)しかし、これは半分だけ正解であり、通関の情報としては足りていません。なぜなら、「貨物本来の価格」を確認することができないからです。
先ほども述べた通り、通関で使うインボイスの価格には「貨物が持っている本来の価格」を示す必要があります。そのため「N.C.V」という記載方法は、この条件を満たさない物になります。正しくは、以下のように記載するのが望ましいです。こうすることによって「商業的な価値はないですよ~」但し「貨物本来の価格は●●です」と、税関が判断できる記載方法になっています。
参考情報:同じ会社の人同士て輸入する場合はどうなる?
外国の会社であって、日本に支店などがない場合、社員の方が先行して荷物を受け取るときがあります。この場合、荷物を受け取る人が日本に居住しているかどうかで扱いが異なります。日本に住民票がある場合は、その方を輸入者として荷物を発送することができます。このとき、インボイスに記載する宛名は、社員の個人名でも問題はありません。また、受取人の住所としては、住民票に記載されているところになります。
インボイスに記載する価格に利益がのっていなくても問題はありません。荷物の発送者と受け取り人が同じ会社であることを口頭で説明すればいいです。もし、日本に住民票がない場合は「税関事務管理人(ぜいかんじむかんりにん)」という制度を使って輸入することもできます。
関連記事:国際郵便(EMSなど)の金額欄には「N.C.V」と書いてはいけない理由
まとめ
インボイスに記載するべき価格は、貨物が持つ本来の価格です。そのため、仮に輸出者と輸入者が無料で取引をしていたとしても、インボイスには「0円」や「n.c.v」だけを記載することはできません。必ず貨物本来の価格を併記するようにしましょう。
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