「タイなら月5万円で生活できる」の噂を信じちゃいけないよ!
少し前、このようなテーマがメディアを賑わせました。プールやジムのついた豪華なコンドミニアムに住みつつも、物価の安いタイでならば、月5万円の生活費で十分にやっていけると喧伝してました。
しかし、私に言わせれば全くの出鱈目です。タイのことをよく知らない日本人相手に、内容をことさら煽情的に伝えており、悪質です。視聴率を稼ぎたいのかバズりたいのか分かりませんが、実現不可能な内容をさも事実であるかの様に伝えるのは詐欺と言って差し支えありません。
今でも検索すれば、ネットで拾ったいい加減な記事を適当に切り貼りした挙句、
「いかがでしたでしょうか?」
決め台詞で悦に入ったブログの類が掃いて捨てるほど見つかります。実際、溜息が出ます。
この記事では仕入時の参考等に資するため、タイでの物価を体感していただくことを狙いとしています。
食費は屋台飯を前提に計算しているけれど、本当に毎回食べられるの?
なお、本稿では、家賃については除外します。なぜなら、一つとして同じ条件はないため、正確に検証することが困難だからです。それよりも、絶対に欠かせない日常食材にフォーカスし、タイ物価のリアルを浮き彫りにしていきます。
健康を代償に食費を節約するのですか
さて、生活費削減の槍玉に上がる筆頭は食費でしょう。タイで5万円生活ができると嘯く手合い達は、異口同音にして「タイの屋台飯は安くて美味い」等と言います。50バーツ前後で手軽に食べられ、1日の食費が500円程度で済むそうです。
「へぇ、あなたはタイの屋台飯を食べ続けることができる体を持っているの?」
ぜひ質問してみたいですね。そもそもタイ料理は、油ギトギトばかり。ファイヤーな辛さと野生的な味付けの集合体。あっさりヘルシーなものはごく少数です。このような料理を日本人の我々が食べ続けるとどうなりますか。すぐに体を壊し、タイでのんびり生活もへったくれもなくなるでしょう。
屋台飯を食べないタイ人も多いです。その理由を尋ねたところ、「不潔だから」という身も蓋も無い回答でした。調理に用いる水や食器の衛生状況は、推して知るべしです。
以上から、屋台飯をメインに計算する時点で見積りは非現実的なのです。
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直射日光を存分に浴びたであろう生肉が無造作に置かれている。蝿が嬉々として飛び回る。
3 日本人向けスーパーで食品の値段を体感しよう
屋台がダメなら、次に考えるのは食材をまとめ買いして自炊することでしょう。日本人なら日本食を適切に摂る必要があります。そこで、タイの日系「Fuji Super」では、どんな物がいくらで売られているのか、これを調査しました。
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在タイ日本人のオアシス。5号店までオープンしたが、スクンビット地区に集中。
知っておこう。タイバーツ表示×4=日本円だが、価値の重さはそうではない
なお、表示されているタイバーツを日本円に換算するには、単純に4倍してください。100バーツなら400円として考えます。現在の円安傾向では、これが最も簡便な方法です。
でも、だからといって、タイで100バーツは400円分の価値ではありません。その10倍、千円と同等の価値があります。
たとえばエナジードリンクは10バーツで売られていますが、タイ人の感覚を日本人向けに翻訳すると100円になります。紙幣の最高は千バーツ札ですが、日本になぞらえると一万円札となり、理解しやすいのではないでしょうか。
タイで仕入れをする際、「タイ人の感覚だと○○円だな」と意識すると代金の高い安いを理解でき、上手くいくと思います。
水はタダではない
タイの水道は飲用不能。私は歯磨きでも水道水を口にしたくありません。ミネラルウォーターとドリンキングウォーターの2種類があります。体重70kgの人で2.5ℓ/日が必要といいますから、一か月で100ℓ分は用意したいところ。
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日本産はかなりの割高。しかし、よく冷えた日本の美味しい水が飲みたくなる……。
生きるために、水は絶対に欠かせません。2ℓ×6本で49バーツです。月に10セット購入しても2,000円ほどですね。
乳飲料。たまには飲みたいビール・日本酒
熱帯のタイにいて、水だけを飲むのは口が淋しくなるでしょう。たまにはビールや日本酒が飲みたくなります。
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明治の製品はポピュラーで、どこに行っても見つけることができる。
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単なるティーパックが千円オーバー! もはや気軽に飲むことはできない。
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やっぱり高い日本ブランド。しかし、タイ仕様に味付けされているので、違和感を覚える。
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日本でも高級酒だが、ここでも値段は高額に設定されている。買えません。
見たところ、少なくとも5万円生活を豪語する手合いなら、水だけを飲む生活となりそうです。
主食のコメ
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日本人なら断然日本米でしょう。こればかりは高くても購入したい。ところが……。
日本米原理主義の私にとって、どうしてもタイ米は口に合いません。パサパサとして瑞々しさがなく、匂いも気になって食が進まないのです。となれば、日本米を購入せざるを得ないのですが……..。
実は、大きな問題があります。炊飯器と水です。日本では、各メーカーが総力を結集して高級炊飯器を開発していますが、タイでは非常に簡素なそれしか売られていません。炊ければいいダロ、そんな意識があるようです。
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約2,200円で炊飯器が購入できる(右)。50年遅れのデザインと性能は今も現役。
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シャープが炊飯器を作っていた。上蓋ペラペラ、作りが簡素すぎてヤル気を感じない(右)。
しかも、タイでは飲めないはずの水道水で洗米し、炊き上げます。味の方は言うまでもないでしょう。ということで、日本米を購入しても上手に炊ける炊飯器がなく、また、水道水を使用したくないので別途水を用意しなければならないなど、非常にコストがかかるという問題が生じます。
でも、本当にタイ米だけで生活できますか?
生鮮食品
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日本産の刺身となれば、これくらいするんでしょうね。
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5万円生活者なら、大トロ中トロなぞ、高嶺の花。
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今夜と言わず、そりゃ毎日でも食べたいですよ、余裕があれば。
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比較的豚肉は安い…….のかなぁ。
日本産の刺身は、当然に割高だし、つられて牛肉も高いです。
日本産ならカップ麺でさえ驚きの値段
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味はまろやかでも、「もう一丁いく? オイッス!」とは言えない値段。
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割引中でも買う気が起きない。マルちゃんの方が断然美味い(個人の感想です)。
カップ麺も、タイでは気軽に食べられませんね。いずれも、およそ2倍に釣り上がっています。日本ではカップ麺で食費を削る戦術がありますが、タイではそうはいきません。
冷凍食品は驚愕の値段
長期保存できて手軽に調理できる冷凍食品も売っています。が、ちょっと見てください。
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250バーツ! 思わず二度見してしまった。
本格炒めチャーハンが、約千円ですよ! 千円出してまで冷凍チャーハン食べますか?
レトルトカレーや即席味噌汁は?
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でました庶民の味方「咖喱屋カレー」。日本では100円程度だがタイでは約280円也。
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タイで味噌汁を飲むと、待ってましたと体が喜ぶのが分かる。
レトルトカレーは安めの商品群がチョイス。味噌汁は意外と安く、飲むと日本の食卓を思い出し、ホッとする感じがします。積極的に摂りたい食材です。
タイも日本も同じ、閉店間際を狙え!
嫁さんに冷遇されている悪友は、毎日帰宅途中のヨーカドーに立ち寄り、お惣菜に値引シールが貼られるのを辛抱強く待ち構えているのだそうです。この販売方法はタイも同じであり、売れ残りそうな弁当類が割引されることがあります。
しばらく粘った甲斐あり、私も値引された食材をゲットすることができました。
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シャケ弁当。豆やゴボウもあってヘルシー。弁当類の値段は日本よりチョイ高め。
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カットすいか。もっと安くてもいいのに……。
総括 一般的な日本人が最低限の健康を保つには、5万円では到底足りない
ここまで、実際の商品をふんだんにお見せしながら、あなたと共に日系スーパーでの物価を検証してきました。物価は安いどころか、むしろ日本より高いということがご理解いただけたと思います。大和民族のDNAを持ち、何十年も日本で生活してきた日本人が、突然タイ屋台料理中心で生活することなぞ、まず無理です。
自分の体と向き合って無理のない食生活をすべきであり、それ相応の食費も発生します。5万円でプール付きのコンドミニアムに住み、サバーイ生活を送る姿は、面白おかしく作られた虚像でしかありません。
【実録】仁義なき商い 〜トラブルの実例から考える、タイ人との付き合い方〜
次回予告
「日系スーパーの物価は分かった。でも、タイのスーパーの物価も知りたい。だって、少しでも節約したいんだもん」
という声が挙がることは十分に予想しており、すでに調査隊を派遣済です。次回は、タイ有名ディスカウントストアの物価に迫ります。
乞うご期待!
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