「通関士を目指したいけれども英語に自信がない。」
「どの程度の英語があれば通関士になれるのか。」
「得意の英語を活かして通関士として活躍したい。」
グローバル化が進む今、英語は欠かせないものです。そんな英語と通関士にまつわる様々な疑問にお答えしていきます。
通関士の仕事と英語
実際の通関士の実務の中で、どのような場面で英語が必要なのでしょうか。具体的にご紹介します。大きく分けると、次の4つです。
- 船積み書類の確認
- 統計品目番号と規制の確認
- メールや電話でのやり取り
- 海外とのやり取り(ほぼなし)
1.船積み書類の確認
まずは輸出入するときに必要な船積み書類の確認です。船荷証券(B/L)、インボイス、パッキングリスト、保険証券など代表的です。これらの書類には、英文で以下の内容が記載されています。
- SHIPPER(輸出者)/CONSIGNEE(輸入者)/NOTIFY(連絡を受ける人)
- それぞれの住所、電場番号
- 船積み港と荷揚げ地
- BOOKING NO(予約番号)などの積載する本船、航空機の情報
- 商品名/数量/重量/価格
これらの内容に間違い(記載ミス、矛盾など)がないか確認します。それ以上に重要なのが、インボイスの内容から統計品目番号を選定し申告価格を計算することです。
船積みされる商品は様々です。特に化学品や医薬品などは、一般の人にはただのアルファベットの羅列しか見えない商品名であることが多いです。そういった馴染みのない英単語が並ぶ英文書類を扱いますが、英単語の確認作業に近いです。会話はもちろん、英語の文章を読むこともほとんどないのが船積み書類関係の仕事です。
2.統計品目番号の選定と規制の確認
統計品目番号の選定の際に必要になるのがSDS(安全データシート)や商品のカタログです。書類によっては、英文で書かれている内容を確認して税番の選定をします。ただし、商品の種類や素材、厚さなどを確認しながらの作業になるため、固有の英単語を必要とする一方、英文等を読み解きながら行う仕事ではありません。
書類によっては、海外での規制を英語で確認することもあります。しかし、それは、非常に限定的です。多くの場合は、アップルやバッグなど、決まった英単語を読み解くだけです。
3.メールや電話でのやり取り
通関士が所属している通関業者の規模にもよりますが、多くの場合は日本企業の依頼を受けて通関の部分だけを請け負っています。そのため、書類についての問い合わせをする相手は、日本企業、つまり日本人であるため、英語等は不要です。(税関とも日本語で確認)
税関やお客さんとのやり取りの中で、ある特定の商品名に関して話をすることもあるでしょう。英語を使うとしたらそれくらいです。つまり、船積み書類の確認と同じように、英単語、英語の商品名が出てくることもありますが、英語の文章を扱うことはほぼありません。
4.海外とのやりとり
海外代理店や荷主とのやりとりが発生する場合には当然英語が必要です。しかし、通関士の場合は、非常に専門的な分野を扱うため、営業職と同じように対外的な交渉をするのは稀です。この場合、対外的な交渉などは、専門の営業が行うと考えれば良いです。
つまり通関士は、日本語を使い、担当者経由でとやりとりをすればよいのです。やはり、通関士が直接英語で海外とやりとりをする場面は、非常に稀です。
英語に自信が無い場合
通関士の仕事に英単語必須です。しかしながら、英会話を必要する場面はほとんどありません。英文が出てきても定型文で処理できる内容です。通関士に必要なのは、コミュニケーションをとることや、英語の文章を読み書きでありません。書類に記載されている英語の内容を理解し、正しく処理することです。これは間違い探しに似ています。
とはいえ「英語アレルギーで、アルファベットには一切触れたくない」方には通関士は不向きな仕事です。他方、英語に自信が無い場合でも、問題なく業務をこなせるのが通関士の仕事でもあります。
英語が堪能な場合でも通関士はできる?
得意の英語を活かして通関士になりたいと考えている方。実際に業務を始めると英語の使用場面の無さに落胆するでしょう。通関士の仕事は事務仕事で、人とコミュニケーションをとる機会はそう多くはありません。
例えば、英文を読むことが好きで、様々な種類の英文に囲まれた仕事をしたい方には通関士は向いています。毎日新しい英文に触れることができるでしょう。しかし英語の読み書きをする機会はあったとしても、英語を聞いて話すことはゼロに近いのが現実です。英会話が得意でそれを活かした仕事を探している方にとって、通関士はその真逆にある仕事です。
英語を活かした通関士の仕事とは?
通関士として英語を活かすにはどのような道があるのでしょうか? 日本国内と海外の場合でケース分けして考えてみましょう。
日本国内の場合
通関士の仕事の中で英語をいかす場面はゼロに近いです。しかし、通関士の資格と英語を活かした仕事はたくさんあります。貿易業界では引く手あまたです。フォワーダーが通関業者を兼ねていることは多いです。通関部門で経験を積んだ後、英語を活かす他部署に異動することもあります。船会社や航空会社、フォワーダーは、営業だけではなくたくさんのポジションから仕事を選ぶことができるでしょう。
メーカーや商社でも、海外との取引がある企業であれば、通関に精通した英語力のある人材は即戦力として歓迎されます。事務系か営業系の仕事のどちらが良いのか。海外での勤務をしたいのか、日本国内、ある特定の地域での仕事がしたいのか。自身の希望に合わせて様々な選択肢から選べます。転職エージェント等で相談してみるとより具体的なイメージをつかめます。
海外の場合
海外で通関士として働くという選択肢もあります。ですが、以前ご紹介したように容易な道ではありません。しかし海外での通関士の資格を取得した、日本の通関にも精通した人材であれば、海外の通関業者でも歓迎されることは間違いありません。また、日本国内の場合と同じように、通関士としてだけではなく他の職種でも仕事を見つけることはできるでしょう。日本との取引がある現地フォワーダーやメーカーでは重宝されます。
通関士と英語と収入の関係
英語ができると収入は上がるのでしょうか。通関業者に勤めている通関士の場合、残念ながらほぼ収入に関係はありません。通関士の実務に英会話は必要ないことは先に述べた通りです。ごくまれに特に大企業の場合、TOEICのスコアを昇進の一因にしている場合やスコアによって手当を支給している企業はあります。
しかし、通関士として仕事を探している場合には優位に働きます。企業はとにかく語学力を持った人材を欲しています。将来の可能性として、通関システムの変更に備える為や、海外取引の増加による語学力を持った戦力を確保したいという理由からでしょう。TOEIC600もあれば十分です。中学生レベルの英語力でも実務上は問題ありません。
まとめ
- 通関士の仕事に英会話力は必要ありません
- 英語力を活かしたい場合には通関士以外の仕事を検討した方が無難です
- 貿易業界では通関士の資格と英語力は大きな武器です
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