苦労して取得した通関士の資格。その資格を活かせる場は様々です。実際に通関業者で通関士として働いた場合にどのような勤務をするのか。具体的な仕事の内容はどういったものなのか。その一例をご紹介します。
通関士の仕事
通関士の一日
ある通関業者で勤務している通関士の一日を追ってみます。
- 9時 始業 朝礼。連絡事項、注意事項の通知。当日通関予定の書類に一通り目を通し優先順位を決める。メールの確認。11時までに許可するべき案件から手を付ける。書類の不備、誤植、荷主へ証明書の催促等をする。
- 11時 許可案件の最終処理をする。税関に書類を提出に行く。
- 12時 昼休み(処理が順調に進んでいないと昼休みがとれないこともある)
- 13時 税関検査になった案件の検査立ち会いに出向く。
その後、15時までに許可を受ける案件を急ぎ進める。
翌日通関予定の案件も同時に進める。初めて船積みする貨物の内容を荷主に問い合わせる。
規制がある貨物、税関検査になりやすい貨物、初めての荷主の貨物など、時間がかかりそうな案件から先に処理を進めていく。 - 18時 終業(翌日通関予定の案件の処理が進んでいない場合残業になる)
通関士の仕事内容
航空貨物か海上貨物かでも、仕事内容は変わります。ここからは、通関士の一日の仕事の内容を細かく説明していきます。
- 優先順位の決定
- 書類の確認
- 品目分類の選定
- 申告業務(ナックス入力)
- 翌日以降の通関準備
1.優先順位を決める
通関士の仕事は、優先順位のつけ方が重要です。輸出場合、船積み、航空機へ搭載するには、書類と貨物提出の締切時間があります。その時間までに許可を受けていないと、貨物を積み込めません。また輸入の場合には、トラックの手配時間、港湾のヤードの閉まる時間も決まっています。
特にトラックの運転手不足の為、決まった日時に許可を受けていないと、貨物を引き取れません。次にトラックが手配できるのは2週間後、ということも多いです。初めての荷主、貨物の場合には、商品の問い合わせや税関検査の為、許可を受けるまでに時間がかかります。
原産地証明書や非該当証明書など、特殊な書類の原本の提出が必要な貨物もあります。それぞれの貨物の内容を把握した上で決められた時間内に処理を進めるには経験と正しい判断力が求められます。
2.書類の確認
船積み書類には様々な種類があります(INVOICE、PACKING LISTなど)それらの書類に整合性があるか、誤植、計算間違いがないかの確認も大切な仕事です。
英語で書かれた、専門用語が並ぶ書類ひとつひとつを確認し、不備がある場合は荷主に訂正を依頼します。船積み実績がある荷主の輸入通関には、それほど時間はかかりません。しかし、個人や初めて輸入する人の場合、書類上の不備が多いです。通関士は、このような貿易初心者にもわかりやすく説明するのも仕事の内です。
3.品目分類
税関に申告するための統計品目番号(HSコード)の選定をします。申告業務の中でも最も神経を使う業務です。以前の記事でもご紹介したように、統計品目番号は非常に細かく細分化されています。品目番号によって関税率、つまり納税額も変わります。正しい品目分類をすることは通関業者の責務です。
特に海上輸送の場合、20フィート、40フィートのコンテナいっぱいに貨物が積み込まれています。一回の船積みに何百もの商品が輸送されます。つまり何百もの品目分類をしなくてはいけない、ということです。荷主からの書類の提出が遅れることや、差し替えになることも頻繁にあります。許可の締切までギリギリであったとしても、正確な品目分類を求められます。通関業務の中でも一番経験とスキルが要求される業務です。
4.申告業務
申告書類の作成とナックスの入力業務です。ナックスとは、輸出入港湾関連情報処理センター株式会社が運営するシステムです。PC上で申告する際のデータ送信や関税の納付等が行えます。INVOICEから申告する数量と価格を算出し、申告書類を作成していきます。またNACCSへの入力が誤っていると誤った申告につながり、今までの業務が水の泡になってしまいます。迅速かつ正確に行うスキルが要求されます。
5.通関準備
申告をするための通関準備も大切です。貨物によって輸出入する際の条件は様々です。例えば、以下のようなものがあります。
・関税法や他法令で規制のあるもの
・品目分類の際、税関に事前教示を求める必要があるもの
・税関検査にひっかかりそうなもの
・荷主が書類を作成しなくてはいけないもの
・原産地証明書等、所定機関の承認が必要でありかつ原本を提出しなければいけないもの
・輸入地側の通関要件により船積みの際に書類の準備が必要なもの
目の前にある書類の貨物がどれにあたるのか、許可を得るまでにどのような要件が必要なのか把握しておくことは非常に重要です。締切ギリギリでは間に合わないことも多々あります。許可が必要なその当日に慌てないためにも、事前に準備を整えておくことは優秀な通関士の要件のひとつです。
通関士の需要
以前の貿易は、企業が行うのが主流でした。しかし、インターネットの普及により、個人での輸出入も容易になり、貿易高は拡大を続けています。そのため、通関の知識を持つ通関士の需要は増えるはずです。もちろん、これは「通関代行」の範囲にとどまりません。むしろ、通関代行の範囲を飛び越えて「貿易アドバイザー」などでの需要があるかもしれません。
通関士を取り巻く環境
貿易業界では特に業務の電子化が遅れています。インターネットやAIの技術が発展しているにも関わらず、未だにFAXが活躍しています。本船や航空機のスペース予約も電話でとるような状況です。しかし、通関士の業務を細かくみていくと、人の手よりもPCでの業務の方が適しているものが多くあります。
例えば、統計品目番号の選定に関しても、特定の要件を入力すれば番号の選定ができるようなシステムがあっても良いはずです。書類の提出も原本ではなく、データでの提出でも対応できるシステムも必要です。貨物の内容と数量、金額を入力するだけで、自動的に申告価格が算出されるソフトが開発されるのも時間の問題でしょう。
今の通関業者の行う通関士の仕事は、言ってみれば活版印刷で本を作っていた時代のようなものです。貿易業界は巻き込む業種が多いからこそ、現状新しい技術がなかなか浸透しません。しかし、確実に時代は進んでいます。通関士の仕事がPCにとって代わられるのも時間の問題でしょう。その時が来る前に何かしらの副業を見つけておくのも一つの策です。
まとめ
- 通関士の一日は時間と書類との闘いです
- 通関士の業務は一つのミスも許されない、経験と正確性が要求されます
- 通関業務が電子化される日も遠くありません。それまでに備えが必要!
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