この記事は、航空輸送のトラブル例と対策を解説しています。
航空貨物は国際輸送を伴いますので、各国の天候や気温に大きく影響されます。せっかく現地に到着しても貨物の中身が損傷しては、時間と費用が無駄になります。貨物のトラブルとその対策について、事前に知っておくことはとても大切です。
出発空港から到着空港の貨物引き取りまでには、今でもたくさんの手作業があります。航空貨物輸送中の事故はそれほど多くないですが、イレギュラー発生がゼロになることはありません。
今回はイレギュラーの事例をもとにどのようなケースがあるかとその対応策をご紹介します。
航空貨物のトラブルとイレギュラー対策を知る
- 航空貨物の事故の種類を知る。
- イレギュラー防止策を考える。
- 賠償請求の方法を知る。
水濡れ被害
貨物の引き取り時に、外装が水濡れしていたら中身にも浸み込んでいることが考えられます。
水濡れの主な原因は輸送中の雨です。航空会社にとって定時運航がとても重要視されているため、たとえスコールや大雨でも、飛行機から貨物の取り降ろし、搭載の作業をやめることはありません。雨の中飛行機から取り降ろされる時や、飛行機駐機エリアから貨物上屋までの移動で、水濡れリスクは一気に上がります。
航空会社としても水濡れ防止のために、ULDという世界規格のパレットやコンテナに貨物を積み付けるときは、ビニールシートを何重にもかけています。しかし、スコールや暴風雨ですとその効果にも限界があり、時には貨物の中身まで水が入るほどの水濡れが起こります。
水濡れ対応策
水濡れは輸送中に発生するイレギュラーのため、残念ながら荷主が対応できる範疇を超えています。最小限に抑えるための対応策は、梱包資材で防止することです。具体的には外装がカートンボックスの場合、梱包を二重構造にしてビニールなど水に強い内装梱包することです。
さらに外装を金属製の資材を使えばなおよいです。外装がしっかり密閉されていれば、中まで水濡れすることはないです。
破損被害(荷崩れなど)
航空貨物はULDとに積み付けます。積み付けは、一般的にフォークリフトを使って作業しますので、その時に貨物を落下させたり、フォークリフトで貨物の側面を突き刺すことも起こりえます。私自身何度も目の当たりにしてきました。
また、ULDに積み付けた後は飛行機に搭載するため、飛行機駐機エリアまで運ばれます。大空港であれば貨物地区から飛行機まで何十分も時間がかかります。輸送中の振動は大きなものであり、時にはその振動によってULD内で貨物が荷崩れを起こすことにもあります。
荷崩れはULDへの積み付けが不十分だったことが考えられますが、その結果貨物同士がぶつかり合ってしまいダメージが起こります。
破損対策
破損事故も荷主が講じることができる防止措置は少ないですが、しいて言うならば強固な梱包状態にすることです。例えば木箱や金属製の箱など多少衝撃を受けてもつぶれないような梱包です。
さらに防止策の一つにフォワーダーが航空会社からスペース買いしているポジションに載せてもらうことです。大手フォワダーは航空会社から主要路線のスペースを購入しています。この場合、ULDはフォワーダーが積み付け、到着地でもフォワダーの上屋で解体しますので、人が介在する機会が極端に減り、その分比例してイレギュラーも少なくなります。
なお主要路線とは香港や上海、ドイツなどが挙げられます。フォワダーが恒常的に貨物を集められる場所に限りますので、フォワーダーの担当者に確認してみてください。
トラブルが発生したら
もし、到着時に貨物が水濡れや破損していることが確認されたら、その場でフォワーダーに伝えてください。受領サイン前に伝えることがとても大事です。
そのあとはフォワーダーの手にゆだねられますが、ダメージがあった旨航空会社にNotice of claimという事前通知をおこないます。到着後14日以内におこわないと、条約に定められたルールを元に航空会社は損害賠償に応じません。
貨物に損傷があり損害賠償を申告するのであれば、フォワダーは以下の書類をすべてそろえて航空会社に提出する必要があります。
- 賠償請求の額と意思表示
- Master Air Way billのコピー
- インボイス、パッキングリスト
- 被害額と損害賠償の根拠
1.から3.はフォワダーが用意しますが、荷主としては4.の被害額と損害賠償の根拠を準備しないといけません。自社で損害の証明書を作成することも可能ですし、第三者の証明を確認する会社に依頼することも可能です。もし自社で作成する場合は、到着時の写真を必ず取ってください。
いずれにしても到着時の写真など証拠となる情報が少ないと損害賠償は不利になりますので、後回しにしないことが重要です。
航空会社への賠償請求(紛失など)
航空会社に提出した場合に、結果が出るまでの所要時間と賠償金額について解説します。
結論から言いますと航空会社は損害賠償の書類を受領してから1年以内に回答することとなっています。航空会社の損害賠償担当者は出発地や到着地の各空港の状況証拠を集めて、さらに条約や約款とも照らし合わせて判断するため、とても時間が必要です。
なお紛失に関してはこの限りではありません。紛失は航空会社に起因するものと事故当初からわかっているので、早々に回答があるでしょう。
航空会社が支払う賠償金額は、条約によって決められた25米ドル/kgという限度額があります。どれだけ高価な貨物でも重量が軽いと賠償額も少なくなります。例えば商品価格が100万円で1kgの貨物だった場合、航空会社は最大でも25米ドル分しか支払いには応じません。
保険
このように航空会社へ請求すると、時間もかかるし賠償金も一般的に少ないので、必ず海上保険に加入してください。
保険に入ることは必須ではありませんが、ほぼ100%の荷主がかけています。もし初めてで懇意にしている保険会社がないのであれば、フォワダー経由で申し込むことをお勧めします。フォワダーは毎日たくさんの保険契約を契約していますので、個人で申し込むより明らかに安いです。
また保険の掛け金はインボイス価格によります。通常ですとインボイス価格の4%から5%程度とお考え下さい。例えば100万円のインボイス価格であれば、4万円から5万円程度となります。
遅延被害
さて最後に貨物の遅延もトラブルとして挙げられるのでご紹介します。航空貨物が遅延する利用は大きく分けて2つ考えられます。
- 緊急貨物の発生
- 航空機材の変更またはキャンセル
1. 航空輸送の性質上、急ぎの貨物が世界中で輸送されています。中には運賃に糸目をつけない貨物も存在するので、このような貨物が入ると搭載の優先順位が変わってしまうことがあります。その場合他の貨物はもともと予約していたフライトから順延され、遅延が起こるわけです。
2. また航空機は悪天候や機材トラブルによって、フライトキャンセルが発生します。さらに飛行ローテーションの急な変更により、貨物が搭載できない機材に代わることもありますので、この場合も遅延となります。
遅延対策
航空貨物において1、2日の遅れは通常よく発生しますが、もし遅延が続くのであれば、フォワダーを通して航空会社へ次の便に載せるように言ってもらいます。予定便に搭載されていないことを知った航空会社は、社内の担当部署へ指示しますので、何かしら改善されることもあります。
また航空会社の立場で言いますと、残念ながら一般貨物の搭載順位は決して高くありません。さらに言いますと、航空会社は遅延に対して何ら保証しません。たとえ3週間遅れても問題がないと考えられています。
どうしても決まった日までに到着しなければいけない貨物であれば、搭載確約の輸送商品を購入することをお勧めします。どこの航空会社も搭載確約商品を販売していますので、ぜひ検討してみてください。搭載確約貨物ですと、一気に優先順位が上がります。予定フライトに搭載されないと航空運賃を全額返金するとうたっていますので、間違いなく予定便に搭載されるでしょう。
まとめ
- 航空貨物は水濡れや破損事故が発生することを念頭に置く。
- 航空会社への損害賠償は時間を要する。
- 航空貨物へは海上保険を掛けるべきだ。
- 貨物の遅延防止のためには搭載確約商品を購入する。