スマート税関アクションプラン2022のポイント
国際物流や貿易手続きに関わる制度が、今まさに大きく変わろうとしています。背景にあるのが財務省税関が発表した「スマート税関アクションプラン2022」です。この施策は、AIやRPAの活用、ペーパーレス化、EPAの電子証明などを輸出入に大幅に取り組むことを目的としています
特に、副業や個人レベルで輸入を行っている小規模事業者にとって、制度の変化は「知らないうちに違反していた」「EPAを使ったのに関税が戻ってこなかった」といったリスクに直結します。本記事では、アクションプランの中身をわかりやすく整理し、特に小規模輸入者が理解しておくべき実務ポイントと対策を解説します。
スマート税関アクションプラン2022とは何か?
「スマート税関アクションプラン2022」とは、財務省税関が策定した中期計画で、貿易のデジタル化・高度化を通じて、より円滑で効率的な通関体制を構築するためのものです。その目的は、貿易量の増加やEC化の進展、模倣品・知財侵害の増加、国際テロ対策などの複合的課題に対し、先進技術を活用した税関業務の抜本改革にあります。
このプランでは、AIやRPA、電子証明、ブロックチェーンの導入に加え、通関手続の電子化、情報連携の強化、関係者との協働によるリスク管理など、従来のやり方を根底から見直す施策が盛り込まれています。
小規模輸入者にも関係する項目とは?
一見すると大企業向けの改革のように見えますが、実際は小口輸入や個人輸入にも影響する部分が多くあります。
例えば、越境ECにおける通関体制の見直しや、納税・申告の電子化、EPAのデジタル原産地証明などは、むしろ小規模事業者にとって制度変更による負担が大きくなりやすい領域です。
越境ECが増加している中、個人輸入や副業レベルの輸入でも、一定の基準を超えると商用扱いとなり、税関手続きが本格的に求められるケースが増加しています。知らずに輸入していて、気づいたときには課税漏れや規制違反だった、という事態は今後より身近になるでしょう。
実務上のリスクとその対策
実際に小規模事業者が直面する可能性のあるリスクとして、模倣品による差止、EPAの書類不備による関税優遇の適用不可、スマホ納税や電子証明未対応による手続き遅延などが挙げられます。これらを避けるためには、次のような実務的な対策が有効です。
1.輸入目的の明確化と記録管理
第一に、輸入目的の明確化と記録管理です。年間の輸入量や取引先、品目、用途を明確に記録しておくことで、商用か私用かを説明できるようにしておきましょう。また、仕入れ先からのインボイスには用途や製品情報を正確に反映し、誤認されるリスクを減らすことが重要です。
2.電子納税・電子申告への対応力を整備
第二に、電子納税・電子申告への対応力を整備することです。納税手続きがマルチペイメント化されており、紙納付書での対応は徐々に非推奨となっています。スマートフォンでの納税や、オンライン請求書への対応を学び、実際に試しておくことが実務負担を減らすポイントです。
3.EPA利用に関する知識と準備
第三に、EPA利用に関する知識と準備です。仕入先に対して原産地証明書がデジタルで発行できるかを確認し、EPA対象品目であるかを事前に調査しておきましょう。HSコードの不一致や、様式の旧式使用による適用漏れが発生しないよう、関税協会や税関の発行するEPAパンフレット類を活用することが有効です。
4.知財リスクへの備え
第四に、知財リスクへの備えも重要です。とくに中国や東南アジアからの仕入れでは、模倣品やロゴ入り商品の扱いに注意が必要です。登録情報を確認し、該当ブランドの日本国内代理店が明確でない場合は輸入を避けた方がいいでしょう。
また、ChatGPTなどの生成AIを使って作成したインボイスや契約書は、草案レベルでとどめ、必ず人間によるレビューやリーガルチェックを行う体制を整えてください。税関提出用の書類としては、フォーマットや法的表現の誤りがあるとトラブルになりかねません。
スマート税関がもたらす未来と備えるべき姿勢
AIやRPAの活用が進み、X線画像判定やHSコードの自動分類が可能になれば、申告内容と実物が一致しているかどうかのチェックも機械的に行われます。つまり、インボイスやパッキングリストの「適当な記述」が見逃されにくくなるということです。これは正しい申告をしている事業者にはメリットですが、慣例的に曖昧な表現をしていた層には厳しい時代となります。
だからこそ、事前の書類整備、ルールに沿った申告、定期的な制度情報のキャッチアップが、今まで以上に重要になります。通関業者への委託体制や、EPA利用商品の管理台帳なども、輸入規模にかかわらず備えておくべきです。
関連ページ:スマート税関構想(税関公式サイト)
まとめ
- スマート税関アクションプランは、小規模事業者にも大きな影響を与える制度改革です。
- 越境ECの増加により、個人輸入レベルでも商用扱いとなる可能性が高まっています。
- 電子申告・電子納税、EPAのデジタル証明、知財リスク対応などが特に重要です。
- 書類作成ではAIの活用も可能ですが、必ず人間による確認・調整を前提にすべきです。
- 情報収集と実務への落とし込みが、制度変化に耐える鍵です。