航空貨物の輸送が決まったら、フォワーダーへ手配を依頼することになりますが、一般的に海上貨物と比べると航空貨物はいろいろな制約があるのは想像できると思います。
貨物のサイズ、重量、形状、内容のいずれか一つでも制限を超えてしまうと航空輸送ができません。そのため航空貨物にかかわる制限を事前に知っていくことはとても重要ですし、不要な作業を省くことができます。
そこで今回は航空貨物にかかわる様々な制限(長尺物、最大積載量、容積重量、みなし重量、高さ制限等)について解説していきます。
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航空貨物の制限を把握する!
今回は航空輸送する前に把握すべき制限を以下の3つにまとめています。
- 航空機の貨物搭載スペースの制限を知る
- 長尺貨物や大型貨物の搭載方法を知る
- いろいろな制限貨物を知る。
航空輸送に使用する貨物スペースは?
航空貨物の搭載方法を説明しています。航空貨物は航空機本体へのダメージを防止するため世界で統一されたULD(航空機専用のコンテナ)やパレットに積み付けられます。貨物がしっかり固縛されたULDごとに航空機へと搭載されます。
ULDに載らない貨物は、航空機にも搭載できません。ULDに搭載が可能かどうかが非常に肝心です。
航空機やULDにかかわる制限には、次の2つがあります。
- 重量に関する制限
- サイズに関する制限
1.重量による制限
現在の航空機の性能は飛躍的に向上しましたので、最大搭載重量が随分とよくなっています。
目安として以下の通り航空機材ごとの最大搭載重量を以下の通りご紹介します。なおこの最大搭載重量は飛行距離や旅客数によっても大きく変わります。
航空機材 | 最大搭載重量(目安) |
B737/旅客便 | 5トン(バラ積み) |
B787/旅客便 | 約10トン |
B777/旅客便 | 約20トン |
B747/貨物便 | 約100トン |
例えば、行き先がアジアとアメリカでは、使用する燃料が全く違います。アメリカ行きは、飛行時間は10時間を超えるため、非常に多くの燃料を使用します。その燃料の重量が最大搭載重量の多くを占めるため、貨物に使用できる重量に制限がかかります。アジア行きに比べて貨物に使用できる重量が減るわけです。
行き先が遠いと、その分、航空機に搭載できる貨物量が減ります
B737ではULDに積み付けずに飛行機へそのまま手作業で搭載します。航空会社によって変わります。作業するスタッフが手で運べる程度でないと載せられませんので、貨物1個の上限は30kgから50kgとなります。このようなケースもあるため予約フライトの機材は事前に確認する必要があります。
また航空貨物は超重量貨物において制限を設けています。貨物は各機材の最大重量に収まればいいわけではなく、1個の比重があまりに重すぎると飛行機の床の耐久限度を超えてしまうため、搭載ができません。つまり高密度の貨物は比重が大きすぎて航空輸送ができないのです。
重量の上限は、1個当たりが4,500kg程度から制限がかかります。さらに一点に重量が集中することは危険とされますので、超重量貨物の場合はその対応策として、重量分散用の角材を貨物とULDパレットの間に幅いっぱいに敷き積めます。
重量としては4,500kgを超えなければ、それほどの制限はないことを覚えておきましょう。
2.サイズによる制限
続いて貨物のサイズについても、縦、横、高さいずれにも制限があります。
- 縦、横の制限
- 高さ制限
1.縦、横の制限
縦、横の制限はULDに積み付けられるかどうかが重要です。ULDには大きく分けてコンテナとパレットがありますが、それぞれに適当な貨物を見ていきます。まずコンテナへ搭載する貨物はその形状から個数口の貨物が得意ですので、カートンボックスやロール状の反物などが優先的に割り当てられます。
またパレットは、形状が平面の金属板ですので主にスキッドの木箱や重量貨物に使用されます。コンテナよりもサイズ制限が少ないです。パレットに搭載できるサイズかを気にしておけば問題ないです。
そのパレットのサイズですが、通常使われる96インチパレットの内寸は305cm x205cmですので、これを超えないように梱包してください。
2.貨物の高さ制限にも注意
2. また高さの制限は、旅客便の貨物スペースの天井に、あたらないようにしなければいけません。天井までの高さは165cmですので、ULDの厚さや天井までの空間の確保などを考えると155cmまでで考えてください。それ以上の高さになると航空会社によっては受けてくれません。貨物を梱包する時は155cmを超えないよう注意が必要です。
サイズが規定値を超える場合は?
それでも貨物の形状上どうしてもサイズを超えてしまうこともあるでしょう。この場合の輸送手段はあるのでしょうか。
旅客便に搭載できない貨物は、貨物専用便が対応します。旅客便が旅客席の下部スペースを貨物で使用するのに対して、貨物便は旅客が搭乗するメインデッキにも貨物を載せますので、制約が随分と緩和されます。
貨物便の高さ制限は最も高い箇所で299cmまで可能ですし、長尺貨物では最大で8mでも搭載できます。
例えば、車やプラント用のパイプなども搭載が可能です。旅客便の制限よりも2倍近くのサイズでも搭載が可能ですので、特殊な貨物には貨物便がおすすめです。
ただし、貨物機は旅客機と比べると便数が少ないという問題があります。さらにこのような特別な貨物ですと多くの航空会社は実際の重量で計算する航空運賃とせず、スペースの買取という方法をとり割高になります。
例えば、長尺の貨物6mx1m/500kgの場合、運賃適用重量(Chageable weight)は本来500kgですが、みなし重量としてULDパレット2枚分を使用することから、5トンまで引き上げるようなケースが発生します。
旅客便と貨物専用便を区別して考えよう。貨物専用便の方が様々な制約が緩和されます。
運賃適用重量とは?
運賃適用重量とはどのように導く出すのでしょうか。ここからは少し航空貨物の運賃適用重量の算出方法を簡単に解説したいと思います。
航空運賃を計算する際に基礎となる重量です。運賃適用重量には2種類の算出方法があります。
- 実重量(Actual weight/アクチュアル・ウェイト)
- 容積重量(Volume weight/ボリューム・ウェイト
実重量
は、貨物の実際の重量をもとに決定します。容積重量は、貨物はそれほど重くなくてもサイズが大きい貨物に適用されます。限られた貨物スペースを実重量だけで計算すると航空会社は収入減になるため、その予防策として採用された仕組みです。
この航空貨物は2つのうち重量の大きいほうを運賃適用重量として採用します。しかしサイズが大きい貨物や長尺貨物を運ぶ場合は、航空会社は「パレットスペースを購入する」と考えて、通常の容積重量よりも大きな数字を設定することがあります。これがみなし重量です。
サイズが大きい貨物や長尺貨物など貨物専用便でしか搭載できない貨物は、高額になりやすいことを念頭に置いてください。
その他の制限は?
航空輸送には重量やサイズ以外にも制限がありますので、以下に記載します。
- 危険品
- 生き物
- 食品
- 梱包不良貨物
1.危険品
危険品は、国際連合が規定した化学品や薬品などです。可燃性液体や爆発物、腐食性品目など9種類に分類されます。
旅客便で搭載できるものもあれば、貨物専用機でしか搭載できないものもあったりと危険品によって制限が変わってきます。貨物が化学品であればフォワダーに確認することをお勧めします。フォワダーには危険品を取り扱う専門のスタッフが必ずいますので、正しい回答を得られます。
【危険物輸送】海上輸送と航空輸送の落とし穴 IMDG Code等
2.生き物
生き物は航空輸送自体には多くの場合問題ございませんが、犬の場合は犬種によって受けられないケースがあります。またその他の動物でもワシントン条約に抵触する動物は輸送が禁止されています。動物の航空輸送は事前に問題がないかを必ず確認してください。
3.食品
いくつかの国では日本からの食品の輸出を厳しく制限しています。特に東アジア諸国に多いのですが、東日本大震災での原発事故による放射能汚染を危惧する理由で、一部地域の食品に輸入禁止の規制があります。
4.梱包不良
梱包不良貨物とは、航空会社が輸送に適していない梱包状態と判断した貨物です。輸送途中に貨物が破損したり、他の貨物を損傷する恐れがあるとみなされた場合は、フォワダーまたは梱包業者が再梱包します。フライトの予約取り直しや、不必要な費用が発生しますので、事前にしっかり梱包することはとても重要です。
まとめ
- 航空輸送はULDに搭載できるのか?が一つのポイント
- 制限には、重量とサイズの2つがある。
- 積載予定の機材を確認しよう。
- 行先ごとに貨物の最大積載量は変化する。
- 規定値内か外かで貨物の扱いが変わる。
- 旅客便輸送の規定から外れる物は、貨物専用機を使う。
- 貨物専用機の方が様々な規制が緩い。
- 貨物専用機の方が料金が高くなる。