海外と日本の間を輸送する場合は「海上コンテナ」と呼ばれる専用の箱を使います。コンテナに入れて貨物を運ぶので、荷役作業が単純になり、輸送日数の削減につながります。海上コンテナには、6mと12mの長さによる違いの他、輸送貨物に応じた専用のタイプがあります。それぞれに外寸、内寸、自重、容積等が異なり、当然、貨物の積載量に関係してきます。
そこで、この記事では、海上コンテナの一覧とそれぞれのコンテナの仕様、特徴などをご紹介します。
海上コンテナの種類
私たちの生活を支える輸入品は、主に海上輸送で日本へ届きます。このとき、物を運ぶために使う物が「コンテナ」です。この輸送方法が確立したのは、1960年代からであり、それまでは「在来船」による輸送がメインでした。
在来船とは、船の甲板部分に大きさの異なる積荷を積載して輸送する方法です。貨物ごとに大きさが異なるため、荷役作業に無駄な時間が発生しやすい問題がありました。これを解決するために誕生したのが「コンテナ輸送」です。
コンテナ輸送とは、20フィートや40フィートと、決められた形の容器の中に荷物を詰めて運ぶことです。決められた規格の箱の中に荷物を入れて運ぶため、荷役作業の効率が上がりました。もちろん、これは、荷主にも「料金の定額化」という大きなメリットがあります。
コンテナの料金は「一つのコンテナにいくら」と決められています。コンテナにつめる最大積載量を超えない限り、コンテナの中には、どれだけの貨物を詰めても良いです。荷主側としても一商品あたりの運送費を削減できるため、近年ではコンテナによる輸送が中心が中心です。
では、まずは、コンテナを動画で確認してみましょう!
コンテナの基本知識6選
コンテナの基礎知識は、次の6つです。
- コンテナサイズは、ISO(国際標準化機構)規格
- 大きさは2つ。6mと12mが中心(20フィートと40フィート)
- 素材はアルミとスチール製の2種類
- 常温コンテナと定温コンテナ有り
- 高さがあるコンテナもあり
- コンテナ輸送と道路交通法との関係
- コンテナのシール(封印)
1.コンテナサイズは、ISO規格
コンテナのサイズ、寸法、強度などは、ISOにより標準化されています。また、すべてのコンテナには「コンテナ番号」があります。これは、B/L等で記載されているマスターB/L番号=コンテナ番号です。船会社は、このコンテナ番号を使い、コンテナの現在地の特定、本船への積み込み位置の確認をします。
2.大きさ(長さ)は6mと12mの二種類が中心
海上コンテナは、ISO規格では、次の5つがあります。
- 10フィート(ほとんど使わない)
- 20フィート(一般的)
- 30フィート(ほとんど使わない)
- 40フィート(一般的)
- 45フィート(米国などで使用)
最も多く使われているのは、6mと12mの二種類です。コンテナの長さは「フィート」であり、約30cmです。よって、20フィートや40フィートをそれぞれ「3」で割った値が6m、12mです。物流においては、これらのコンテナを「20、一本」や「40、3本」と表現します。
表記例:20GP(20フィート)
3.素材はアルミ製とスチール製、FRPの三種類
コンテナの材質は、アルミとスチール、FRPの三種類があります。「スチール」の方が耐久性やコスト面が優れているため、ドライコンテナ(一般貨物)では主流です。リーファーコンテナ(温度管理ができるコンテナ)は「ステンレス・スチール製」がほぼすべてです。
ファイバーグラス強化プラスチック合板製コンテナ(FRP)は、極度強度、断熱効果、内容積が大きい等のメリットがある一方、耐久性や製造コストが高いです。
4.常温コンテナと保温コンテナ(リーファー)
海上コンテナは、長さの他、荷物の状態や形を考えて設計されている特殊コンテナもあります。
例えば、通常のコンテは常温保存での輸送ですが、これに冷却装置を搭載しているのが「リーファーコンテナ」です。
ドライコンテナとは?
コンテナ内部の温度変化に関係しない一般貨物を運ぶときに利用します。コンテナは温度調整がされないため、温度・湿度変化に弱い貨物を輸送するには向いていません。コンテナの内部温度は、洋上において50度を超えます。これをふまえて貨物にダメージが及ばないかを考えます。船荷証券(B/L)上では「20GP」や「20’GP」と表現されています。
リーファーコンテナとは?
コンテナ内部の温度を一定に保ったまま輸送するコンテナです。主に生鮮食品など外部の気温から完全に守るべき商品を輸送するときに使用します。調整できる温度は、下はマイナス25度から、上は30度くらいまでです。商品の状態 を維持するために、最も都合が良い温度にして輸送ができます。B/L上では、20RFや20’RFと表現されています。
リーファーコンテナのサイズ(内寸)、積み付け時の注意点などを解説!
5.高さがあるコンテナ
コンテナには、天井までの高さが違うタイプがあります。いわゆる「ハイキューブコンテナ/HQ」です。背の高い貨物(大型家具など)や少しでも多くの貨物を運びたいときに活用します。
背の高さ→ 9’6″(ハイキューブコンテナ)
20フィート | 40フィート | |
ドライ | 通常タイプ | 通常タイプ ・ハイキューブ |
リーファー | 通常タイプ | 通常タイプ ・ハイキューブ |
6.コンテナと道路交通法の関係
コンテナに貨物を積み込む場合は、コンテナの最大重量を超えてはなりません。つまり、これは、道路を走行する上での最大重量とも関係しています。
例えば、メーカーバンニングで貨物をつめる場合、バンニング後は、港へ輸送します。道路を走行するときは、道路運送車両法や道路交通法が適用されます。このときに問題になるのが「車両重量」です。重量があるトラックは、道路にダメージを与えるため規制しています。(重量物を運搬する場合は、3軸等を用いる)
国際コンテナの輸送は、これら道路に関する法律について、一定の範囲で緩和がされています。しかし、それでも「車幅」「車高」「長さ」「重量」については、いくつかの細かい基準がありますので留意が必要です。道路を走行する基準は、日本だけに関係するのではなく、輸出先の国においても規制があることを理解しておきます。
画像引用元:国土交通省
7.シール
海上コンテナは、輸出国でバンニングが終了したら、貨物の中身を盗難されないように封印をします。これを「シール」といいます。シールは、輸入国の税関以外は、一切、開封できない仕組みになっています(壊すと元に戻せない)したがって、税関検査がなかったにも関わらず、コンテナ到着時に封印が壊されていたときは、貨物が盗難されている可能性があります。
開封時は、特殊なニッパで切断する。切断をしたら元には戻せない。
以上がコンテナに関する基本知識です。それでは、コンテナの種類を一つ一つ確認していきましょう!
コンテナの種類・9選
- ドライコンテナ
- リーファーコンテナ
- オープントップ
- フラットラック
- タンクコンテナ
- ハンガーコンテナ
- サイドオープンコンテナ
- フラットベッドコンテナ
- ハイドコンテナ
1.ドライコンテナ
一般の貨物を輸送するときに広く利用されているコンテナです。コンテナ内の気温調整ができないため、外気温の影響を受けると損傷する貨物の輸送には不向きです。コンテナの予約は、直接船会社に対して行うこともできますが、フォワーダーに依頼するほうがいいです。
表記例:20GP、40GP=それぞれ20フィートのドライコンテナ、40フィートのドライコンテナ
関連記事:船の手配 独立系NVOCC(フォワーダー)を選ぶべき理由
ドライコンテナのサイズ、長さ、外寸、内寸、容積の一覧
20フィート | 40フィート | 40ハイキューブ | ||
外側の大きさ | 長さ | 6m | 12.1m | 12.1m |
幅 | 2.4m | 2.4m | 2.4m | |
高さ | 2.5m | 2.5m | 2.9m | |
内寸(荷物をいれる空間) | 長さ | 5.8m | 12m | 12m |
幅 | 2.3m | 2.3m | 2.3m | |
高さ | 2.3m | 2.3m | 2.7 | |
コンテナの容積 | 33㎥ | 67㎥ | 76㎥ | |
コンテナ自体の重さ | 2.3t | 3.8t | 3.9t | |
最大重量(荷物のみ) | 2.8t | 2.6t | 2.6t | |
最大重量(荷物+コンテナ) | 3t | 3t | 3t |
2.リーファーコンテナ
果物、野菜、肉、アイスクリーム、乳製品、薬品など、輸送中に温度調整が必要になる貨物を輸送するときに使用します。断熱性を高めたコンテナに冷却ファンが付けられており、荷主の希望する温度(マイナス29度~60度までの範囲)を維持しながら海上輸送ができます。より鮮度コントロールが必要な場合は、指定の温度範囲であれば、0.1度ずつ調整もできます。
コンテナには、冷却ファンがあるため、ドライコンテナとは以下の違いがあります。
関連ワード:CAコンテナ
リーファーコンテナの3つの特徴
- コンテナの壁の厚みが違う=内寸が小さい
- コンテナの容積が小さい
- コンテナの自重が重い。
船積み書類の表記例:20RF、40RFなど
リーファーコンテナのサイズ、長さ、外寸、内寸、容積の一覧
20フィート | 40フィート | 40ハイキューブ | ||
外側の大きさ | 長さ | 6m | 12.1m | 12.1m |
幅 | 2.4m | 2.4m | 2.4m | |
高さ | 2.5m | 2.5m | 2.9m | |
内側の大きさ(荷物をいれる空間) | 長さ | 5.4m | 11m | 11m |
幅 | 2.2m | 2.2m | 2.2m | |
高さ | 2.2m | 2.1m | 2.5m | |
コンテナの容積 | 28㎥ | 58㎥ | 67㎥ | |
コンテナ自体の重さ | 3t | 3.9t | 4.7t | |
最大重量(荷物のみ) | 2.7t | 2.6t | 2.9t | |
最大重量(荷物+コンテナ) | 3t | 3t | 3.4t |
3.オープントップコンテナ
コンテナの「天井部分」を除いたコンテナです。コンテナの上部の開口部は、キャンバスなどで覆うことで水の侵入を防止します。上がぽっかりと空いているため、クレーン車などを使い、鉄鋼製品などの重量物の積載に向いています。
例えば、鉄パイプなどの「長い」商品をイメージしてください。貨物をコンテナに詰め込む場合は、コンテナの奥から順に貨物を詰めます。このとき、コンテナのドアから奥までの距離をリフトや人力などによっておこないます。
一般的な貨物であれば、フォークリフトなどで詰められますが、鉄パイクなどの長い商品を運ぶことはできません。貨物の数が少なく人力で運んでも問題がない程度であるならいいのですが、コンテナ一杯に詰み込むときは大変です。そこで便利なのが「オープントップ」コンテナです。
このコンテナは、コンテナの上部が開いているため、クレーン車などを使って、直接、コンテナ上部から貨物を積み込めます。重量物、長尺物の輸送のときに、便利なコンテナです。また、海上輸送中は防水性のシートで覆っているため、一定の防水効果があります。
4.フラットラック
ドライコンテナから「天井」と「側面」を除いたコンテナです。床部分と四隅にある柱で強度を維持しています。パイプなどの長尺物、木材、大型機械類の輸送に適しています。
- 上方:クレーン車による搬入
- 側面部分:フォークリフトによる搬入
フラットコンテナは、天井部分と側面部分の壁をすべて取り除いているため、オープントップコンテナの「上から」だけではんく、「左右から」も荷詰めを行えます。パズルのように複数個のコンテナをつなげて使うこともできるため、コンテナに載せきれない大型貨物の輸送に適しています。
関連記事:フラットラックのボイドスペース(デッドスペース)とは?
5.タンクコンテナ
鋼製のフレームの中にタンクが備え付けられており、その中に「液体貨物」をいれて輸送します。醤油メーカーなど、特定の業種以外では、あまり馴染みがないコンテナです。
輸送品目例:食品や油、化学薬品など
6.ハンガーコンテナ
ハンガーにかけたまま衣類を輸送できるハンガーコンテナと呼ばれる物もあります。主にアパレル業界の輸送で使われます。ハンガーのまま輸送ができるので、折れなどを防げます。
7.サイドオープンコンテナ
側面部分が開放するコンテナ。フォークリフトを使い、側面部分から長尺物を入れられます。
8.フラットベッドコンテナ
床面部分のみが存在するコンテナ。大型機械、プラントなどの輸送に便利
9.ハイドコンテナ
毛皮など臭いがキツイ商品を輸送するときに利用するコンテナ
参考書籍:
- 株式会社 MOL JAPAN様の書籍
- 国際コンテナ輸送の基礎知識/オーシャンコマース
特殊コンテナを使う3つの理由
積み込めない物は「特殊コンテナ」で輸送します。特に以下の特徴がある貨物を輸送するときは、特殊コンテナを使います。
貨物の特徴 | 説明 |
重量物 | コンテナ内に荷物を積み込むときは、最大重量が決められています。コンテナの「自重(コンテナ自体の重さ)」を減らせれば、その分、重量物を積め込めます。 |
大型の貨物 | 一般的なコンテナであると、20フィートや40フィートなど、コンテナサイズが決まっています。そのため、このサイズから外れ貨物であるときは、特殊コンテナを利用する必要があります。 |
長尺物 | 長さがある商品(鉄パイプ、木材、鋼材など)を運ぶ場合は、コンテナのドア部分から商品を入れるより、天井部分からクレーン車などで入れたほうが楽ですね。このような場合は、天井部分が開いている「オープントップコンテナ」を利用します。 |
コンテナに関係する略語
これまでの説明でコンテナには、さまざまな種類があります。複数本のコンテナがあるときに、どのコンテナがどのタイプであるのかを簡単に把握する方法があります。それがB/L(船荷証券)です。船荷証券(B/L)には、コンテナ番号と共に各種の略語が示されています。これにより、コンテナの長さと種類が一目でわかります。
略語の例示
- GP(DP)は、General Purpose=一般的なドライコンテナ 例:20GP
- HQ、HC」は、ハイキューブタイプのコンテナ(高さがあるコンテナ) 例:20HQ
- RFは、リーファーコンテナ 例:20RF
B/L上での表記を見るだけで、どのタイプのコンテナかを把握できます。
関連記事:
少量食品輸出向け!リーファーコンテナ(混載)サービス9選
海上コンテナの積載量(どれだけ積められのるか?)を考えるときのポイント
貨物が水濡れしている!? コンテナ輸送時に頻発するトラブル事例と対処方法
まとめ
海上輸送に使う主なコンテナは、20フィートと40フィートの2種類です。これらに加えて温度調整を必要とするのかで「ドライコンテナ」か「リーファーコンテナ」を使うかが決まります。記事中では、特注な貨物を取り扱う場合のオープントップコンテナなどもご紹介をしておりますが、基本的には20フィートや40フィートのドライコンテナ仕様のみを知っておけばいいです。
特にコンテナサイズや重量などは、コンテナに詰められるかで重要なポイントなりますので、しっかりと把握するようにしましょう!
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