滞在延長で代行業者に高いお金を払う必要なし。私があなたを優しくナビゲート
タイ仕入れで現地入りするに際し、何かしらのビザを取得する必要はありません。日本人ならば、タイ入国から30日間の滞在が認められているからです。
ところが、豊富なアイテムに目移りしたり、居心地の良さに仕事を忘れてタイを満喫したり、あるいは国民性やお国柄の違いに戸惑って買い付けがスムーズに進まない場合があるかもしれません。気がつけば滞在も30日間が近づき、
「まずい、あと少しでオーバーステイになってしまう。誰か助けて!」
このようなピンチに陥ることでしょう。しかし、なにも高い料金を支払って代行業者に泣きつき、手続きを依頼する必要はないのです。自分一人でも対処できます。
今回は、タイでの滞在期間を延長し、不法滞在を回避するための方法を解説していきます。
タイでは、最長60日間のノービザ滞在が可能
まずは、ごく簡単にタイの出入国管理制度をご説明しましょう。
私たち日本人はタイ政府から、観光目的に限りノービザで30日間の滞在が許されています。仕入れ目的で入国するとはいえ、タイで事業をする訳ではありませんからビジネスビザを取得する必要がなく、また、別途観光ビザを取得する必要もありません。
そして、「もう少し滞在したい」という外国人を対象に、プラス30日間の滞在延長制度が用意されています。
たとえば、4月1日にタイに入国した場合には、無条件で4月30日までの滞在が可能です。この間、必要な手続きを適切に行うことにより、さらに30日間の滞在延長が認められます。
4月1日から30日間 + 翌日から30日間 = 最長5月30日まで滞在可
ここで気をつけていただきたいのは、この延長申請は1回限りだということです。60日間以上の滞在はできません。さらに滞在したい場合には「一旦出国して入国し直す」、「なんらかのビザを取得する」などのテクニックを用いる必要があります。
延長申請 “ヘトヘト” 体験記
ここからは、私の実体験に即した手記とすることで、一連の手続きの生々しさを追体験していただきましょう。実際私も、苦労しているのです。
◎2022年秋のこと、イミグレーションオフィスに向かうも……
私はチェーンワタナー地区に所在するイミグレに行きました。無駄に恐ろしく広い空間を持つ、巨大な建物です。私はそのとき、「もしかしたら、手続きはここではないかもしれないぞ」と半信半疑でした。
なぜなら遡ること半年前(2022年春)、延長申請のためこのイミグレを訪れた際に、係官から突き放された、嫌なシーンが思い起こされたからです。
係官「パスポート見せなさい。フン、あんた手続きはここじゃできないわよ」
私「なぜです」
係官「コロナでいろいろと変わったのッ! さっさとココに行きなさいッ」
なんでも、伝染病のためにいくつかの措置がなされたとかで、現在の延長申請はラックシー地区にある「ITスクエア」内に設けられた臨時窓口で受け付けているのだと言います。
実は、チェーンワタナーに来る直前に「延長申請は、ムアントンタニーの臨時オフィスだ」という情報を聞きつけていました。よって、そこへ向かったのですが、係官から「残念だったな、ここじゃやってないぜ。チェーンワタナーに行きな」と言われたばかりだったのです。
- チェーンワタナーでなく、ムアントンタニーに臨時オフィスありとの情報を得て現地へ
- ムアントンタニー係官「いや違う。チェーンワタナーに行け」
- チェーンワタナー係官「いや違う。ラックシーへ行け」 ←今ここ
クソ暑い中、またもや別の場所に行けと指示されて辟易させられたのでした。
果たせるかな、この2022年秋にもチェーンワタナーを訪れてみましたが、やはりここでは手続不可とのこと。前回、一時的な措置だとされていたはずの「ITスクエア」での手続きを指示されたのでした。
延長申請手続きを行う謎の施設「ITスクエア」とは?
タイでは、行政の気まぐれに振り回されることがしばしばありますが、今回はむしろラッキーと言えるかもしれません。
なぜなら、この手続きを行うITスクエアとはローカルショッピングモールのことであり、駅直結でアクセス抜群だからです。バスやタクシーでなければ行くことのできないチェーンワタナーのオフィスとは異なり、タイ国鉄ラックシー駅のホームから建物が見えるため、迷いようがありません。
ラックシー駅すぐ。ITスクエアのマップはこちら
この路線はダークレットラインといい、先ごろ開通したばかりの新線です。下り方面の始発はバンスー駅(JJ市場に近い)であり、ドンムアン空港にもアクセスすることができます。
◎2023年春、一か八かでITスクエアへ直行してみた結果
過去2度にわたり、手続きを受け付けないチェーンワタナーのオフィスへと無駄足を踏んでしまった苦い経験から、今回は事前に電話で問い合わせすることにしました。
ところが……
日本では「2コール以内に電話に出ろ!」と厳命する会社も少なくありませんが、お国柄でしょうな。何度も、何十コールしようとも、一向に電話に出てくれません。業を煮やした私は、いきなりITスクエアへと向かうギャンブルスタートを敢行します。出かける頃、時刻は午後1時を回っていました。
地下鉄で巨大駅バンスーまで行き、ダークレッドラインへ乗り換えのため長い距離を歩いてようやくホームへと到着。この路線はローカルなので、日中の本数は3本ほどまでに減ります。タイミングが悪く、結構待ちました。そのため、ラックシー駅に到着した頃には午後3時近くになっていました。
「受付終了の4時まではまだ時間がある。よかった、間に合った」
汗をフキフキしつつ3階の窓口に到着すると、出ました、タイ公務員から冷たい洗礼を浴びせられたのです。
「今日はもう受け付けない。ムリ。明日出直しなさい」
窓口の側には証明写真とパスポートのコピーサービスをする店がいくつかあります。彼らは個人情報に対する意識が低く、カメラでなくスマホで顔写真を撮影する店さえあります。申請用の写真とコピーを用意し、雑然と置かれていた書類に必要事項を記載し終えました。さぁ、最初の関所で門番を務める女性係官に提出します。
係官「パスポート見せなさい。フン、あんたねぇ、今日はもう受付は終わったの。明日また来なさい」
私の直前ではファランの受付をしていたはずなのに、私の番になった途端に終了とはどういうことなのでしょう。以前、JRみどりの窓口でのこと。やっと私の番だと思ったら、駅員が「隣の窓口へどうぞ」のカウンターサインを素早く立ててハヤテのごとく離席していった悔しい記憶がフラッシュバックしました。今回は、その時以上の衝撃でした。
それに、受付終了の4時までにはまだ十分な時間があります。
係官「(うるさいわねぇ)とにかく今日は終わったのよッ」
あまりの態度の冷たさに東南アジアの厳しさを感じました。日本の役所では、公務員に激しく詰め寄る市民の姿が毎日のように目撃されますが、こちらでかような態度をとれば恐ろしい結果が待っているでしょう。公務員の立場は圧倒的に上なのです。
納得のいかない私は、奥の事務所で執務する職員を捉まえて事情を訊いてみることにしました。しかし、彼も「俺は知らない」と言ってとりあってくれません。
こうなれば奥の手です。タイ人の知人から上官殿にLINEのビデオコールで話をしてもらうことにしました。
警報発動! 「イミグレーション、活動限界です」
誰でも面倒は避けたいものですが、特に言葉の壁がある外国人とのトラブルなら余計に忌避したいことでしょう。そんなときには、タイ人同士で話してもらうと効果的です。
タイ人知人「なぜです、時間前に受付終了なのは」
男性係官「あまりに多くの手続きを捌くと、システムダウンするためだ」
なんと1日200人までしか申請を受付けられないとのこと。たったの200人ポッチで「活動限界です」アラートが発動される国家システムが本当にあるのか分かりませんが、私はオーバーロードを避けるために門前払いとなったのだそうです。知人のタイ人は、私に諭すように言いました。
「行ったのが少し遅かったね。みんな、早く家に帰ってゆっくりしたいのさ」
終業間際に仕事を持って来られることは、誰だって嫌です。私は「明日こそ早めに来て手続きしてやる」そう誓ったのでした。
南国の時が流れている。惑わせられないで!
さて、肝心の提出書類ですが、ゴチャゴチャ書かれているので初見では大いに戸惑うと思います。一応、記入例が掲示されているのですが、あなたはすぐに混乱のアリ地獄へと引き摺り込まれることでしょう。なぜなら……
コロナ禍で入管の特例措置が出されまくっていた頃の古い書類が、今でもお手本として掲示され続けているからです。今春の時点では、3枚目は青マルの書類提出が必要でした。
つまり、私たちに提出させる書類が変遷しているにも拘らず、誰も掲示を気にする職員がいないのです。「えっ? こんな書類ないけど?」一瞬パニックになりかけました。
前出の第一砦で守備隊を務める女性係官に書類の相違を指摘しましたが、「あ、そ」とニベもありませんでした。
手続き費用は1,900バーツ。手続き場所はITスクエアで固定
気になる滞在延長の費用ですが、1,900バーツ(約7,600円)です。事務所内に呼ばれた後、係官に現金で支払います。当然ですが、クレカや電子マネーは使えません。
これを代行業者に頼んだ場合、7〜9,000バーツほどの手数料がかかるでしょう。しかし、本記事をお読みになった諸氏ならば、ご自身で手続きし、浮いたお金を他に回すことなぞ容易なはずです。
なお、今後もITスクエアの窓口で延長申請を受け付け、また、臨時措置でもないとのことでした(それでも、いつ何時変更があるか分かりません。手続きの際には、確認必須です)。
したがって、当分の間、不便なチェーンワタナーに行く必要はなくなりました。
これも実話! タイ入国時の事情聴取
次のエピソードも私が実体験したものです。いま思い返してみても、何だったのか不明です。
女性審査官「あなた、タイへ頻繁に来ているわね。前回も長く滞在していた様だけど、どういうことなのかしら。説明して頂戴」
私「あのォ、そのォ、タイが好きなもんで。延長手続きは、タイ人の知人が手伝ってくれたもんで」
一度、知人経由のタイ人エージェントに延長手続きを頼んだことがあり、その時のスタンプがバンコクの役所ではなかったことが彼女のチェックに引っ掛かったようでした。
女性審査官「あなた、タイに恋人でもいるの? いいこと、次に長く滞在するつもりなら、私に事前連絡して頂戴」
事前連絡もなにも、どうやってこの審査官に上申せよというのでしょう。かゆくもない頭を掻きつつ「へい、分かりやした」と答えてことなきを得ましたが、経験上、女性審査官のレーンに並ぶのは得策ではありません。たとえ厳つい顔をしていたとしても、男性審査官の方がスムーズに審査してくれるように感じます(個人の感想です。特段の意味はありません)。
【報道特集】次はあなたが狙われる。タイで横行する詐欺師の実態を潜入ルポ
総括「外国の行政はサービス機関ではない。事前準備と余裕を持った手続きを」
まさに時代劇で観るような「お上と庶民」の関係が、まだ外国には残っています。役人は圧倒的に強く、偉いのです。「お上に楯突く不埒な輩め。引っ立てぃ!」のシーンが蘇ります。
立場が逆転し、カスハラが問題視されている日本とは大違いですが、外国の公務員に「寄り添い」や「おもてなし」を求めてはいけません。私たちが嫌な想いをしないためにも、事前準備と余裕を持った行動が必要です。
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