国際輸送には、” 闇 ”があります。この闇は、意外に身近な所、フォワーダーとの関係の中にあります。しかも、この闇は、あたかも”まっとうなモノ”に見える分、質が悪いです。
今回は、フォワーダーの闇、荷主に対して過大請求する”真っ黒な手口”について解説していきます。
すでにフォワーダーとの取引をしている方は、ご自身のアライバルノーティスを精査されることをお勧めします。もしかすると、フォワーダーから過大請求されている可能性があります。
■この記事のいきさつ
→2023年11月現在、ある荷主が悪徳フォワーダーから過大請求アライバルを受け取る!
詐欺的行為のフォワーダーの手口
私は、悪徳フォワーダーの商売は、”詐欺風”的な商売手口だと考えます。
詐欺風的な商売手口とは….
- 荷主の無知につけこみ、本来不要な費用を請求する
- 本来の価格よりも著しく高く設定する。
- 海外の売り手と組み、買い手からお金を巻き上げる
などを指します。
これを聞いて、ピンときた方も多いでしょう。そう、アライバルノーティスです。この一枚の書類中に潜む闇は大きいです。2023年11月現在もしっかりと存在しています。
アライバルノーティスとは、日本側に船が到着した際、フォワーダーが荷主に対して、本船が到着したこと通知する書類です。これには、日本側で支払う諸チャージが記載されており、荷主は、これらを支払うことで貨物を引き取れる仕組みです。
闇とは、まさにアライバルノーティスの過大請求のことです。悪徳フォワーダーは、このアライバルノーティスに数々の仕掛けをしています。本来、支払うべき費用よりも過大に請求したり、そもそも存在しない項目を”創造”し、もっともらしい項目として請求したりしています。
おそらく、荷主の中で、この手口に気付いている方は、少ないでしょう。よほど、貿易業界に詳しくない限り、自らがボッタられていることすら気づかない可能性が高いです。
これが悪徳フォワーダーの手口
悪徳フォワーダーは、特に中国輸入をしており、売り手負担で日本までの輸送費込みで取引をしている方に関係します。いわゆるCIFやCIP等のC系以降のインコタームズで取引をしている方ですね!
ご存じの通り、C系のインコータームズは、売り手側が…….
- 商品代金
- 日本までの国際輸送
- 上記、国際輸送に関わる保険
など負担するコミコミ価格です。
買い手は、このコミコミ価格に対して料金を支払います。この時点で買い手は、売り手との取引に関する代金を全て決済していると思いがちです。当然、すでに負担する費用はないと考えるでしょう。
しかし、実際は、違います。仮にCIFで代金を支払い終えていても、日本側の港にて貨物を受け取るための諸チャージが発生します。アライバルノーティスには、これらのチャージが記載されています。
参考情報:アライバルノーティスは、契約するフォワーダーから発行される。
アライバルノーティスは、輸送契約するフォワーダーが荷主に対して発行します。私が問題だと指摘するのは、アライバルに記載される費用です。この費用は、フォワーダーによって、かなりのばらつきがあります。相場もあるような、ないような~の状況で、請求する荷主によってもばらつきがあります。
例えば、同じ航路、商品、物量でもAさんは、100円。Bさんは、500円など、その扱いには差があります。
悪徳フォワーダー2つの特徴
アライバルは、国際輸送の闇の一丁目一番地と言ってもいいでしょう。悪徳フォワーダーは、アライバルに請求項目を創作し、単価を引き上げて、過大請求することで、自らの利益率を引き上げています。
特に以下、2つの特徴がみられるフォワーダーは、悪徳フォワーダーである可能性が高いです。
- 請求項目創作系の過大請求
- 中国側の費用を日本に負担させる系
1.費用項目創作系の過大請求
アライバルノーティスには、下記の通り、項目名と右側に単価が記載されています。輸入者は、それら費用を全て支払うことで貨物を引き取れます。これらの項目は、各社によって若干、表記内容は違うものの、航路等が同じであれば似ています。
- D/O FEE は、○○円
- DOC FEE は、××円
- CFS CHARGE は、▲▲円
- FAF/YAS/ は、●●円
- THC は、××円
悪徳フォワーダーは、これらの項目費用の中に、意味不明な項目を創作し、本来、支払う必要がないものまで含めて請求してきます。
例えば「CDS」や「システムチャージ」などです。これらは、フォワーダーの匙加減によって、いくらでも過大又は創造して請求できます。
身近になる商品(サービス)請求書であれば「この費用はなんだ?」と気づけることが多いです。
- 枝豆 ●●円
- ビール ●●円
- 豆腐 ●●円
- お通し ●●円
しかし、悪徳フォワーダーは、このような請求の中に……
- 枝豆 ●●円
- 席ご案内料 ●●円
- 豆腐 ●●円
- お通し ●●円
などのようにもっとらしい請求項目を創造し水増し請求しているのです。少し極端なことを言えば「YHC(Yoru Hataraita Charge)」という項目を創ってもいいわけです。何でもありです。
結局、荷主は、請求項目について、意味がわからないと感じつつ、早く荷物を引き取りたい心理状態から、深く考えず支払うことが多いです。まさにフォワーダーの作戦通りです。
アライバルの中に記載される請求項目について、聞きなれないものが多い場合は気を付けましょう!
2.中国側の費用を日本に負担させる請求
2つ目は、中国側の売り手が負担するべき費用を日本側で負担させているパターンです。
例えば、CIFで契約する場合は、売り手に対して、中国から日本までの輸送費を含めて支払います。当然、国際輸送費としての請求はないはずです。しかし、実は、ここにも大きな闇があります。
アライバルノーティスにシステムチャージがある人は注意
アライバルノーティスの中に、システムチャージなどがある場合は、注意が必要です。システムチャージは、本来、売り手が支払うべき国際送料に充当している可能性が高いです。仕組みは、次の通りです。
- 売り手と買い手は、CIFで契約
- 買い手は、国際輸送費を含めて売り手に支払う。
- 売り手は、中国現地のフォワーダーに輸送依頼する。
- 売り手は、輸送費を支払わず、支払っているように偽装する。(フォワーダーと手を組む)
- 日本側に貨物が到着したら、フォワーダーは、買い手(輸入者)に対して、アライバルノーティスの中にシステムチャージ等、よくわからない費用項目を作成して請求する。(これが中国から日本への国際輸送費に充当される)
日本側の輸入者は、送料をダブルで払わされているのです。この悪だくみの当事者は、2者です。
- 1者は、フォワーダーです。
- もう一者は、中国側の売り手です。
フォワーダーと売り手が手を組み、日本側の輸入者をだましているのです。詐欺的なスキームによって、国際輸送を成立させているのですね!
詐欺的なフォワーダーから逃れるための方法
もし、上記に該当する部分がある場合は、付き合っているフォワーダーを再考するべきです。又は、売り手がしつこくCIFでの契約にこだわる場合も注意が必要です。どちらも、輸入者である、あなたを騙し、商売をしている可能性が高いでしょう。
では、これを回避するには、どのようにしたらよいでしょうか?
一つは、ノミネーションフォワーダー(Appointed Forwarder)を検討することです。ノミネーションフォワーダーとは、買い手が国際輸送を手配することです。
具体的には、売り手に対しては、輸出港渡しの価格(FOB価格=フレイトコレクト)を提示してもらい、買い手は、取引するフォワーダーに、輸出港から日本までの国際輸送+通関+国内配送の見積もり依頼をします。これにより、貿易取引から悪徳フォワーダーを排除し、より透明性がある貿易にできます。
もし、簡易的に診断したい場合は、以下のアライバルツールをご利用下さい。他、DOC FEE等、請求項目(貿易用語)の説明を確認したい場合は、貿易用語集をご覧ください。
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