永平寺で有名な福井県には、県南部の敦賀市に鞠山(まりやま)南地区コンテナターミナルがあります。主に韓国の釜山と極東ロシアとを繋ぐ外航船の他、北海道と博多を結ぶ内航船などがあります。今回は、このコンテナターミナルの見学をさせて頂いたので、その様子をご紹介します。
この記事は、敦賀港の規模感、定期航路、RORO船の様子、通関業者、将来的な拡張計画等の内容等を説明しています。
敦賀港のコンテナ船の見学会
福井県の人口は、約80万人。日本全体で考えると、人口規模はかなり小さい方です。県の中央部にある山岳を境に嶺北と嶺南に分かれて、同じ県にも関わらず、言葉や文化、積雪量等が違います。敦賀港は、そんな福井県の嶺南を代表する港です。
敦賀港の概要
敦賀港は、日本の商業や工業の中心である大阪(関西圏)と名古屋(中京圏)のどちらにもアクセスがしやすい所です。最寄りインターは、北陸自動車道の敦賀インターチェンジです。コンテナターミナルからは、敦賀市街地を通らずに5分ほどで行き来ができます。その後、敦賀インターからは、二時間程度で大阪都市圏または、名古屋都市圏に納入ができます。
敦賀港の魅力
- 日本海側で北方面のROROと南方面のROROが集まる所
- 搬出入が素早い。素早く納品ができる。
- 港から最寄りインターへの接続が良い。
- 大阪北部方面、名古屋北部方面へ納入するときに特に便利
- 港と最寄インターが渋滞なし!
- 最寄インターから一時間から二時間程度で大阪・名古屋都市圏
敦賀港の規模は、約10ヘクタール。2022年現在、今年度中の完成を目指してターミナルを拡張しています。現在の岸壁は、280メートル。水深は、14メールあり、大型の船にも対応。ガントリークレーンは一基(一時間に30コンテナ程の搬出入)で稼働しています。
敦賀港の通関業者は、敦賀海陸運輸株式会社です。敦賀港発着の船のフォワーダー業務もされているため、敦賀港を利用する場合は、問い合わせてください。
敦賀港の定期航路/コンテナ・貨物船 (2021年12月1日現在)
敦賀港の取扱量は1640万トンです。内訳は外貿(23%)、内貿(77%)です。北海道と博多港など、北と南の港を結ぶRORO船が発着するため、内貿の比率が高いのが特徴です。他方、外貿は、バルク船とコンテナがあり、バルクの比率が圧倒しています。
外貿コンテナの比率が少ないため、補助金等を設けて利用の拡大を図っています。ちなみに、コンテナ船、RORO船の貨物例は、染料、塗料、合成樹脂、化学製品、木製品、ガラス製品などが多く、特に滋賀県内の工業地域や岐阜県西部の工業地域に貨物を納入する際に利用されることが多いです。
滋賀や岐阜は海なし県です。そのため、近隣でいうと、舞鶴や大阪港又は名古屋港のいずれかの港から輸出入することになります。最終的には、港に就航する船舶や港からの輸送時間や国内輸送費等をトータル的に見て判断するそうです。
敦賀からの輸出入は釜山経由が多い。
敦賀港は、メガキャリアが寄港する釜山を経由した外航航路で輸出入ができます。逆にいうと、大阪港にあるような多様な航路がないため、この辺りの使い分けが必要です。特に、敦賀の場合は、必ず釜山での積み替えになるため、ダイレクト輸送を希望する場合は、少し不向きかな?と感じました。
キャリア | 配船スケジュール | 問い合わせ先 |
長錦商船 | 釜山(日)→釜山新港(日・月)→浜田・境港(火)→敦賀(火)→舞鶴(木)→金沢(金)→釜山(土) | 株式会社シノコー成元 |
高麗海運 | 釜山(木)→境港(金)→金沢(土)→敦賀(日曜)→舞鶴(月)→釜山(火) | 高麗海運ジャパン株式会社 |
サンスターライン | 釜山新港(日)→敦賀(月)→金沢(火)→馬山(水)→釜山新港(水)→敦賀(木)→金沢(金)→馬山(土)→釜山新港(日) | 株式会社サンスターライン |
内航ROROの一覧
敦賀港は、外貿の他、内貿として、博多方面へ週六便、北海道方面へ14便が運航されています。日本海側で博多と北海道方面の両方のRORO船があるのは、敦賀だけとのことです。その意味では、日本国内の北と南の中継地的な役割を担っているようです。(舞鶴と似ている)
実際、某大規模メーカーは、広島から原料を調達し、内航ROROを使い敦賀に輸送しています。大手自動車メーカーも半完成品を内航ROROを使い輸送しているそうです。
新日本海フェリー |
|
RORO船(近海郵船) |
|
コンテナ船(井本商運) | 敦賀~大竹(広島)~神戸(週一便) |
敦賀港はスムーズ搬出入が可能!
今回、実際に敦賀港の様子をみた所、非常に静かだと感じました。メジャー港のようにドレーが行き来している様子もなく、風の音を感じられる程です。
この特徴から敦賀港は、特にリードタイムの短縮においてメリットがありそうです。太平洋側のメジャー港は、ドレーやヤード等が込みやすく、輸入許可から搬出までに多くの時間を要します。
一方、敦賀港は、比較的、余裕があり、コンテナ船、RORO船共に、通常状態でHDS(ホットデリバリー)を利用しているような荷捌きスピードが提供されています。
コンテナ | RORO船 |
輸出カット日
| 輸出カット日
|
輸入可能日
| 輸入可能日
|
国際RORO船の特徴
- 船主や船尾にランプウェイを設けて自走で積載ができる船
- 船内環境が良く、雨風や塩害、湿気等のダメージも少ない(簡易包装が可能)
- コンテナはもちろんのこと、大型バルクや小口貨物まで対応
RORO船の活躍とトラックドライバーの上限規制の関係
補助金・助成金
最後に補助金です。敦賀港も他の港と同様、利用促進として補助金を用意しています。1コンテナから利用できる補助金もあります。補助金には、当然、終了期間があるのですが、港の補助金は、毎年、変わらず更新されるそうです。
例えば、補助金がある前提で販売価格を考えている場合は、補助金がなくなると利益計算が変わります。「補助金を前提にすると、やばくない?」と考えたのですが….
この疑問について、ある方は、次のようにおっしゃいます。
港の補助金は、原則、更新されるから大丈夫!もうこの補助金は12年もありますから..笑 日本政府としてもBCPの観点から、地方港の利用を促進したいのだと思います。ですから、基本は、打ち切りはない前提で考えても良いと思います。
- 補助や助成期間は、2022年4月1日~3月31日の一年間(原則、延長される)
- 対象者:敦賀港を利用した輸送をする荷主や物流事業者様
- 補助金の問い合わせ先:敦賀港国際ターミナル株式会社 0770-47-5855
外航貨物 トライアル事業補助制度
- 敦賀港のトライアル理由で最大100万円を支援(経費の1/2)
- 海上運賃、国内荷役料、国内輸送費、梱包料等の輸出入諸経費が対象
- 1TEUから利用ができる。
輸出入コンテナ貨物助成制度
- 輸出入時に敦賀港を経由するコンテナに対して、1TEU5000円(又は6000円)を助成
- その他の助成:敦賀港CFSを利用した二社以上の混載貨物に対して最大50万円など
内航貨物の利用拡大補助金
- 敦賀港を利用した物流ルート
- 敦賀港の内航定期便の利用
- 敦賀港の利用拡大が見込まれること
- トライアル経費の1/2を補助(上限20万円)
関連記事:日本海側(下関/敦賀/金沢/富山/舞鶴/石狩)の国際ターミナルと助成金
敦賀コンテナターミナルの様子
それでは、最後に敦賀コンテナターミナルの様子を写真と共にご紹介していきます。なお、コンテナターミナルの見学は、どなた様でも自由にできます。希望される方は、敦賀国際ターミナル株式会社様に申し込みをお願いします。
コンテナターミナルは、保税地区に該当するため入退出には、管理棟で手続きが必要です。写真の左側がCFSです。こちらでコンテナから貨物を出したり、コンテナに貨物を入れたりします。右側は、台切り状態のコンテナが保管されています。
ちなみに、自社の倉庫等にドレージをお願いし、デバン等に時間がかかる場合は、延長料金を支払うか台切りをして、再び、コンテナを運ぶ車体を回収する方法があります。台切りをした場合は、ドレージ代金は二倍かかります。そのため、延長料金とドレージ×2倍の料金を比較して検討します。
右の黄色の車を使い、コンテナを移動させます。
コンテナは、このように置かれています。もう少し大きな港では、上にどんどんと積んでいきます。敦賀の場合は、風等の影響を考えて最高三段積みです。ちなみに、過去には、風の影響により、空のコンテナが宙を舞う様子を見たことがあるそうです。それほど、風の力は恐ろしいのですね!
このときは、私は、頭の中でインコタームズと危険負担の問題点が浮かびました。やはり、FOBではなく、FCAでするべきですね..汗 蔵置した後、かつ、本船積み込み前にもリスクがあるからです。
コンテナのダメージチェックをします。搬出、搬入のそれぞれでダメージチェックをし差異を確認します。関連記事:EIR
これがガントリークレーンです。船にコンテナを積めたり、船から出したりします。
このようにグイーンとわしづかみにしてコンテナを移動させます。コンテナの上部には、爪を差し込む所があり、うまくはまっていないと持ち上がらない設計です。
例えば、三つの爪だけであげてコンテナを落とすことはないそうです。
どこの港も同じですが、サイコロのようにキレイに並べられています。地面には、数字が記載されており、コンテナ番号とロケーションが紐づけられています。
ガントリークレーンの向こう側で本船がとまっていますね!
身入りのコンテナが運ばれてきました。ドレーが待機していますね!
この待機しているドレーの上にコンテナを置きます。
この瞬間、緊張しそうですね。私でしたら、絶対、ズレて載せてしまいます。
今度は、輸出するための身入りのコンテナが到着しました。先ほどは、20フィート。今回は、40フィートなので、爪の部分がグイーンと左右に開きます。
クワガタみたいですね笑
傍で見ると、すごい迫力です。落ちないかと余計な心配をしてしまいます..汗
このコンテナは、本船に積み込む前に、指定の場所に一時保管されます。
画面の中ほどにある白い建物の周辺にリーファーコンテナの電源が12個あります。
対岸に見えるのは、川崎・松栄地区。国際ROROが発着します。
以上がコンテナターミナルレポートです。実際にターミナルを見学すると、港の仕組み等を理解しやすいです。文字情報だけではなく、実際に目で見て音を聞くことも大切です。貿易関連の仕事をしている方は、一度は、訪れてみて下さい!
さて、敦賀で有名な所と言えば、ここなのですが…汗 私は、一切行かないです。(個人的な感想)理由は、、、ここではやめておきます。グーグルマップ等の口コミも参考にしてみて下さいね! それでは!
この記事をお気に入りに登録