輸入申告は、どんなに急いでいる貨物であっても、搬入後(搬入:貨物を港に保管すること)に行うのが原則です。そのため、貨物を引き取るのには相応の時間がかかってしまいます。しかし、輸入実務の現場では、ときとして納期をいそぐ場合があります。
では、なるべく早く貨物を引き取りたい場合は、どのようにすればいいのでしょうか? 理想的な輸送形態、ホットサービス、地方の港を使用、予備申告の四つの観点から説明していきます。
*ホットサービスとは、優先的に船会社がコンテナを降ろして港に保管すること
納期が短い貨物をスムーズに輸入する方法
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1.理想的な輸送形態・輸出国で考えること
海外の商品をなるべく早く受け取るには「輸出国の時点から急ぎの手配」が必要です。ここで言う急ぎの手配とは「どのような輸送形態で商品を運ぶのか?」ということです。
海外から商品を輸送する手段として、コンテナ輸送が一般的です。コンテナには、長さが20フィート(約6m)と40フィート(約12m)があります。これらコンテナ一本分を一つの荷主で使う方法をFCLといいます。
一方、荷物の量が少ないなどの理由から、コンテナを使って荷物を運ぶ必要がないときがあります。この場合、一本のコンテナを複数の荷主で分け合うLCLという方法で輸送します。


もし、急いで貨物を受け取りたいときは、FCLで輸送することをお勧めします。たとえ、それが通常であれば、LCLで運ぶような物量であっても「あえてFCL」で運ぶようにします。この理由は、FCLとLCLの搬入のタイミングとデバンの仕組みにあります。以下で順番に説明していきます。
デバンとは? LCL(こんてなみまんのにもつ)は、ふくすうのにぬし(にもつ)をひとつのこんてなにまとめたものです。さんくしたがって、日本の港へコンテナが到着したら、すべての荷物をコンテナから取り出す必要があ ります。取り出した後、荷主ごとに仕分けを行います。この作業のことを「デバン」といいます。
まず大前提として、基本的に輸入申告は、貨物が「搬入されたあと」に行うことになっています。つまり、どれだけ早く搬入が上がるかが輸入貨物を素早く引き取るポイントになります。
FCLで輸入する場合の搬入までの流れ
1.日本に入港する日:船からコンテナが降ろされる。
2.入港日の翌日:船からコンテナを降ろしたことをナックス(税関等とオンラインで結ぶシステム)に入力する。これで「搬入が上がった」ことになります。この時点で、輸入申告ができます。
LCLで輸入する場合の搬入までの流れ
1.日本に入港する日:船からコンテナが降ろされる。
2.入港日の翌日:コンテナが倉庫に輸送される。
早ければこの日にデバン
3.入港日の翌々日:デバンを行います。
4.デバン終了後、各荷主の貨物に問題がなければ、すぐに搬入があがります。もし、同じコンテナにある「その他の荷主の貨物に何かしらの問題」があると、搬入がなかなか上がりません。つまり輸入申告・許可が遅くなります。
このようにFCLかLCLで運ぶかによって、搬入があがるタイミングが大きく変わってきます。また、これとは別に「ホットデリバリー」を使う方法もあります。
参考記事:FCLとLCLのメリットとデメリット、FCLとLCLにおける許可までの流れ
2.船会社のホットデリバリーサービスを使う
搬入を早くする追加サービスとして「ホットデリバリー」があります。このサービスは、「搬入の報告」を他の貨物より優先的に行い、少しでも早く税関への申告ができるようにするサービスです。残念ながらすべての船に提供されておりませんので、実際に使うさいは、船会社に問い合わせが必要です。
ホットサービスを使うとどのような流れで搬入が上がるのでしょうか。
通常、FCLは船の入港日の翌日が搬入日です。ホットサービスを使えば入港の当日に搬入があがります。これによって、船の入港日に輸入許可となり、そのままコンテナを引き取れるようになります。また、このサービスは、LCLにも存在します。LCLであっても、やはり他の貨物より優先的に搬入が上がるようになっています。
ホットデリバリーサービスを使う際の注意点
1.ホットデリバリーサービスを提供している船会社を選ぶ。
すべての航路にホットデリバリーサービスを提供している船会社があるわけではありません。一部の船会社のみのサービスであるため、事前に輸出者と「どの船会社を使うか」の相談が必要です。
2.ホットデリバリーサービスは、船の出港前に申し込みを済ませます。
船積みのタイミング以外での利用はできせん。これは、コンテナを船積みする前に、急ぎのコンテナを船の手前の方に乗せるためです。手前に乗せるからこそ、すばやくコンテナを降ろせます。
3.地方の港で輸入する
東京・大阪・名古屋などの主要港では、年末年始のなど特定の期間、港が混雑します。これによって搬入があがるタイミングが遅くなったり、輸入許可が下りても貨物をなかなか引き取ることができなかったりします。これは、コンテナヤードがいっぱいであることと、ドレージ会社(コンテナを運ぶ専門の運送会社)の車が全て出払っていることがあるためです。
そのため、このようなことを回避するために、あえて「地方の港で貨物をピックアップした後に陸送によって商品を届ける方法」があります。
例えば、上海と山口県の下関を結ぶフェリーがあります。このフェリーを使って、コンテナ未満の貨物を輸入するとします。これに「ホットサービス」をつけて、船が入港した日にデバン、搬入報告、通関、陸送で全国各地に配送という段取りをする企業があります。
入港日からすべての業務を当日中に行いますので、かなりの連携プレーが要求されます。ただ、輸入実務の現場では、このような厳しい納期をクリアしなければなりません。
主な国際フェリー
日本港 | 上海 | 韓国 | ロシア | ||
プサン | Donghae | Vladivostok | Korsakov | ||
稚内 | HS LINE | ||||
大阪 | Shanghai Ferry Co. Ltd | パンスタークルーズ | |||
神戸 | Japan China Int. Ferry | ||||
境港 | DBS Cruise Ferry | DBS Cruise Ferry | |||
下関 | 蘇州下関フェリー | 関釜フェリー | |||
福岡 | JR KYUSHU JET FERRY カメリアライン KOBEE FERRY |
4.税関へ予備申告を行い、審査時間を短縮する
ここまでの説明は、輸送形態による時間短縮、オプションサービスによる時間短縮、地方の港を使うことによる時間短縮の側面から、貨物の引き取り時間を早める方法でした。しかし、実はもっとも大切なことが「税関への申告」です。どれだけ素早く貨物が届いたとしても、輸入許可が下りるまでは貨物を引き取ることはできません。したがって、なるべく早く荷物を引き取りたいのであれば、早いタイミングで輸入許可を受けておくことが重要です。
すでに述べた通り税関への申告は、荷物の搬入後に行うのが原則です。しかし、搬入後に輸入申告をすれば、当然、許可までの時間が長くなってしまいます。そこで、この問題を解決するために、輸入実務の現場では「予備申告制度(よびしんこくせいど)」を活用するのが一般的です。
予備申告制度は、貨物の搬入前において、税関審査を開始できる仕組みです。具体的には、船が入港することをお知らせする「アライバルノーティス」が発行された段階で、予備申告を行います。予備申告における税関の審査が終われば、貨物が搬入されたと同時に「輸入が許可」されます。もちろん、予備申告をした瞬間に税関検査が決定される場合もあります。その場合は、貨物が搬入された以降の日において、税関検査を受けることになります。
まとめ
貨物をすばやく受け取るためには、輸送方法、ホットサービス、地方の港、予備申告制度を活用することがポイントになります。多くの場合、予備申告制度とホットサービスで対応している企業が多いです。必要なときに必要なサービスを使うようにしましょう!
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