
金型輸出入と評価申告の実務ガイド|HSコード・税番・関税・輸送まで徹底解説
金型をめぐる国際取引の基本構造
日本の高精度な金型を中国など海外工場に無償で提供し、そこで生産した製品を日本に輸入する取引は、アパレルや自動車関連で古くから一般的です。しかし、税関手続きや評価申告、輸送の実務では注意すべき点が多くあります。
この記事では、輸出入双方の流れを整理し、実務者が押さえるべき論点をまとめます。
輸出時の日本側の手続き
金型を無償で海外工場に提供する場合でも、輸出許可申請(インボイス・パッキングリスト添付)は必須です。また、一部の金型は外国為替及び外国貿易法(キャッチオール規制)の対象となる可能性があるため、事前に該非判定を行う必要があります。特に自動車や航空機関連の精密金型は規制対象になり得ます。
HSコードと税番の整理
- 8480番台:プラスチック成形など鋳造用金型
- 8207番台:プレス金型 いずれも関税は無税で、輸入時は輸入消費税(10%)のみ課税されます。
評価申告の考え方
無償提供金型を使用して製品を輸入する場合、金型費用を輸入価格に加算する必要があります。これを「評価」と呼びます。
具体的な算出例
- 金型価格:500万円
- 日本から海外工場への輸送費:50万円
- 製品輸入予定回数:10回 → 評価額は (500万+50万)÷10=55万円/回 を加算。
バリエーション
- 複数工場に同一金型を供与:利用比率に応じて配分。
- 貸与後に返却されるケース:返却時点までの利用割合で按分。
- 単発輸入の場合:全額を1回で加算。
中古金型の評価
中古金型の場合、課税価格の算定はさらに慎重さが必要です。
- 減価償却の目安:耐用年数や残存価値を基準に減価。
- 評価基準:契約書記載の価格や会計上の簿価がベース。
- 専門業者鑑定:高額案件では鑑定人による評価を添付することが望ましいです。
移転価格税制との関係
関連会社間で金型を無償提供する場合、移転価格税制の対象になることがあります。輸入側の税関評価と、国税庁による移転価格調査で不整合が生じないように、グループ内価格設定と説明資料の整合性が重要です。
輸送実務(重量物対応)
金型は重量が1tを超える場合も多く、輸送方法の選択が重要です。
- 海上輸送:フラットラックコンテナ、オープントップコンテナを利用。
- 航空輸送:エンジン部品用など特殊貨物ではULD設計を確認。
- 輸送保険:破損リスクが高いため、補償範囲と免責条項を必ず確認すること。
FTA/EPAの活用
金型そのものは多くの場合、無税品目ですが、輸出先や輸入製品の関税にFTA/EPA(RCEPや日中韓FTA)が関係するケースがあります。例えば、金型を使って製造した製品を輸入する場合には原産地規則の確認が不可欠です。
まとめ
- 金型の輸出には必ず輸出許可申請と該非判定が必要
- HSコードは8480・8207が中心、関税は無税で消費税のみ課税
- 評価申告は具体例に基づき、按分が基本
- 中古金型は減価償却や簿価をベースに評価
- 関連会社間取引では移転価格税制との整合に注意
- 重量物輸送は特殊コンテナ・保険を確保
- 製品輸入ではFTA/EPAの原産地規則を確認
FAQ
Q1. 金型を輸出する際、インボイスの金額は「無償」と書いて良いですか?
A. 無償と記載して問題ありませんが、参考価格を併記し、輸送費や評価方法を別途明記するのが望ましいです。
Q2. 中古金型を輸入するときの評価額はどう決めますか?
A. 契約書の価格や会計簿価をベースにし、必要に応じて鑑定人の評価を用います。耐用年数と残存価値を考慮して算出します。
Q3. 同じ金型を複数の工場で使用した場合は?
A. 使用割合に応じて配分評価します。契約や生産数量に基づき算出するのが一般的です。
Q4. 金型輸送で最も多いトラブルは?
A. 輸送中の破損と港湾での荷役制限です。保険契約と搬入ルート調査が必須です。
Q5. FTA/EPAは金型輸入にも使えますか?
A. 金型自体は関税無税ですが、金型を用いた製品輸入時にRCEPなどを活用できます。


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