企業努力により良いものを安く製造して、輸出することは健全な貿易活動です。しかし、この「安く」を実現するために、輸出国政府から何らかの補助金を受けているときは問題です。
実は、WTOでは、農業分野を除き、政府が補助金などの名目でお金を入れることを禁止しています。つまり、補助金の受け取りにより実現できる価格は、不当な価格だとして排除しています。これがいわゆる「相殺関税」と呼ばれる関税措置に関係してきます。そこで、この記事では、相殺関税の意味と概要をお伝えしていきます。
相殺関税とは?
相殺関税の「相殺」とは、打ち消すの意味があります。この場合の打ち消すとは、輸出国政府の補助金を受けながら作られた商品(輸出国)が、輸入国側に流入しないように、輸入国政府が相応の関税をかすことです。
例えば、A国からB国へテレビを輸出するとしましょう。A国メーカーは、企業努力により製品自体の製造価格を下げた上で輸出すれば、健全な貿易です。しかし、A国のメーカーに対して、A国政府が何らかの補助金を与えているとしたらいかがでしょうか?
仮に本来、一個のテレビを製造するには、10000円になる所、政府から5000円の補助を受け取れば、原価は5000円です。この場合、本来、Aは、少なくても10000円以上で輸出しなければ、赤字になる所、政府の補助により5000円以上で輸出すれば、貿易として成り立ちます。つまり、政府の補助により不当に安い価格で輸出ができてしまいます。
では、これを輸入国側(B国)の立場で考えてみましょう。本来、A国からは少なくても10000円以上するテレビが5000円でどんどんと入ってきます。これにより、輸入国側の同種の商品を製造している企業は、甚大な被害を受けます。そこで、B国側の政府は、補助金により不当に安くなっている商品について、課税して相殺します。これが「相殺関税」です。
相殺関税とは…..
輸出国側で補助金の受け取りなどにより不当に安くなっている商品の流入を阻止するために、輸入国側で課税することです。
相殺関税の事例
実際、日本では、この相殺関税が発動された事例があります。韓国のハイニックス社製のDRAMに対して行われました。2004年に利害関係者から課税申請があり、2006年に相殺関税が発動されています。つまり……
- 韓国政府がハイニックス社(韓国企業)に対して補助金を出していること
- それにより不当に安くなっている商品が日本に入っている事実が確認
できたため、日本政府は、ハイニックス社製のDRAに対して、相殺関税を発動しました。
では、実際、相殺関税が発動されるまでには、どのようなプロセスがあるのでしょうか?
相殺関税が発動されるまでの流れ
相殺関税が発動されるまでの流れは、次の1~8です。まずは、国内関係者からの課税申請があることが条件です。要は「○○国の製品が異常に安い気がする。輸出国政府が補助金を出している可能性が高い。日本側で課税してほしい」と訴えることです。この訴えを受けた日本政府は、現地政府や市場などを調べて、それが「事実であるのか?」または、発動要件に合致するのかを検討します。
検討の結果、やはり輸出国側の補助金を確認できた場合は、該当する商品に対して相殺関税を発動します。これが一連の流れです。
- 国内利害関係者からの課税申請
- 調査
- 利害関係者への質問
- 仮決定
- 算定措置
- 利害関係者への事実認定
- 最終決定
- 相殺関税発動
よくある疑問
商品には、輸出国政府の補助金が入っていてはだめなの?
実は、輸出国側が補助金を与えて生産する物であっても、相殺関税の対象にはならない物があります。農作物です。この分野の商品については、政府による補助金が含まれていてもよいこととされています。
相殺関税とアンチダンピングとの違いは?
相殺関税は、輸出国側政府による補助金支出による不当に安い商品が流入することを防止する仕組みです。一方、アンチダンピングは、大企業が資本力に物を言わせて、利益度外視で不当に安い価格で輸出することです。これらの違いは「政府の補助金が入っているのか?」にあります。
- 相殺関税は、輸出国政府の補助金が入っています。
- アンチダンピングは、輸出国政府の補助金は入っていません。
まとめ
- 輸出国政府の補助金により不当に安くなっている商品の流入を防止するのが相殺関税です。
- 輸入国側政府は、本来の価格と不当に安くなっている部分(輸出国政府補助)の差額を上限として課税します。
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