どこから輸入する?(仕入れ先の選び方)
このレッスンで学べること
どの国から仕入れるか、どう決める? 輸入先の国を選ぶときに考えるべきポイントや、判断のコツがわかります。
国によってこんなに違う!価格や品質、文化の差 商品が安い国、高品質な国、為替が有利な国、やりとりの文化が違う国など、それぞれの特徴を比較して学びます。
よく使われている輸入先の実情を知ろう 中国、アメリカ、ベトナム、韓国、台湾など、実際に多くの企業が使っている国の特徴や注意点を紹介します。
国ごとに起きやすいトラブルとその防ぎ方 「納期が遅れる」「品質が違う」「やりとりがうまくいかない」など、よくある問題とその対策を学べます。
輸入先を選ぶときに使えるチェックリスト 「この国で本当に大丈夫?」と判断するときに役立つ、実務的な確認ポイントを紹介します。
輸入ビジネス成功の鍵は「どの国から仕入れるか」
仕入先の国は、ただ「安い」だけで決めてはいけません。以下のポイントを総合的に見て判断しましょう。
価格だけでなく、他にも大事な点
- 品質は安定しているか?
- 納期は守られるか?
- 検品やサポート体制はあるか?
- 通関しやすいか?
- 送料や輸送コストは高くないか?
- 商習慣や文化は自社と合うか?
- 為替の変動リスクは?
たとえば、同じ商品でも「中国は安く大量生産に強い」「アメリカは品質やブランド性が高い」など、それぞれの特徴があります。
初心者が注目すべきポイント
- 為替が安定している国か?
- 船便・航空便など物流が整っているか?
- その国は、どんな商品に強いのか?
- 英語が通じるか?文化の違いは大きすぎないか?
- 輸入の際に許可や規制が厳しくないか?
→ どの国から仕入れるかで、利益やトラブルの多さも大きく変わります。最初は信頼できる国や実績の多い国から始めるのがおすすめです。
輸入ビジネスの戦略をシンプルに考えると…
- 資金が多く、大量販売で稼ぎたい人 → 中国製品(薄利多売向き)
- 資金が少なく、1件あたりの利益を重視したい人 → 欧米製品(高単価・少量販売向き)

初心者は、欧米製品からスタートするのが安全です。
欧米からの仕入れの特徴
メリット
- 美容・健康・ITなど、高品質なブランド品が多い
- FDA認証など、日本の基準に合った商品が多い
- 契約がしっかりしていて安心して取引できる
注意点
- 為替(ドル高)の影響を受けやすい
- 空輸が多く、送料が高くなりがち
- 関税が高い商品もあるので、HSコードを事前に確認しておくことが大切
中国:価格優位性と供給力を活用
メリット
- 世界最大の工場として膨大な商品ラインアップ
- 単価が安く、OEM・ODM対応も容易
- アリババ、1688などの小ロット仕入サイトが豊富

安い商品を大量に仕入れて大量に販売することが前提。波に乗ると一気に大きな売り上げを作れる。但し、非常に多くのプレイヤーが参入しているため、価格競争が厳しいです。
注意点
- サンプルと量産品の品質差が大きい場合あり
- 契約内容が曖昧だと補償対応困難
- 商習慣の違いによるトラブル発生(数量単位、梱包形式など)
- ハイテク分野などは日米欧からの部材依存もあり、万能ではない
ベトナム:EPA活用と低コスト調達
メリット
- 繊維、バッグ、木製品などで競争力
- 日越EPA対象品目は関税免除(原産地証明要)
- 中国よりも人件費安く、同等品でも割安なことも
注意点
- 旧正月等による納期遅延リスク
- 英語対応が不十分な場合あり
- 物流ルート限定品目あり(港湾・空港が限られる)
- EPA適用には原産地証明取得が必須、書類不備に注意
韓国:品質と距離のバランス
メリット
- 化粧品、雑貨、家庭用品など高品質トレンド商材
- 日本から近距離、短納期対応が可能
- 日本語対応可能な担当者が比較的多い
注意点
- 契約面の細部に厳しい
- 独自法令(化粧品成分表示、K認証など)への適合必須
台湾:信頼性と日本市場への親和性
メリット
- 精密機器、電子部品、工具など高品質
- 日本市場向け慣熟、納期や品質管理が安定
- 日本語対応企業も多く、交渉が容易
注意点
- 単価はやや高め
- 特定商品の通関で時間がかかるケースあり(電子機器など)
国別トラブル事例と実務対応策
国名 | よくあるトラブル | 対策方法 |
中国 | 品質が悪い、仕様が違う、数量不足 | 第三者による検品、細かい契約内容、検品条件を明確にする |
アメリカ | 為替が高くてコスト増、関税が高い | 為替予約、EPAの適用確認、事前に関税を計算しておく |
ベトナム | 納期が遅れる、梱包が雑、EPA書類のミス | 余裕のある納期設定、梱包仕様を共有、原産地証明を確認 |
韓国 | ラベルの表示ミス、必要な許可書がない | ラベルを事前に共有、輸出側と事前に確認する |
台湾 | 仕様変更の連絡がない、梱包方法が違う | 定期的に進捗確認、図面や仕様書で細かく交渉する |
たとえば、中国では価格は魅力的でも、品質や仕様が事前と違う・数量が足りないといったトラブルが多発します。これを防ぐには、現地での第三者検品(QC)や、細かい仕様を明記した契約書の作成が重要です。
アメリカとの取引では、為替の変動によって仕入れ価格が大きく変わるリスクがあります。また、関税も高くなる傾向があるため、EPA(経済連携協定)の適用可否を事前に確認し、関税額を事前に試算しておくことが必要です。
ベトナムでは、納期遅れや不十分な梱包、EPA関連書類の不備が多く見られます。これを防ぐためには、余裕を持った納期設定(緩衝日程)や、梱包内容をあらかじめ仕様書で伝えることが大切です。
韓国では、ラベル表示の内容に対するズレが発生するケースがあります。日本語との訳の違いもあるため、ラベル見本を事前に共有し、輸出側と許認可書類をすり合わせておきましょう。
台湾からの輸入では、商品の仕様が事前に知らされずに変更されていたり、梱包仕様が打ち合わせと異なるといった事例が報告されています。これに対しては、進捗を定期的に確認する体制を持ち、図面や仕様書を基にして話を進めることが効果的です。
このように、各国に応じたトラブル傾向と実務対策を知っておくことで、事前にリスクを減らし、より安定した輸入ビジネスを展開することができます。特に初心者の方は、価格だけでなく「対応力がある国・業者かどうか」を意識して取引先を選ぶようにしましょう。
輸入国の選定 チェックリスト
- 商品は当該国の主力製造品か?
- 品質は日本市場基準を満たすか?
- EPA、FTA対象か?原産地証明は取得容易か?
- 為替変動リスクは管理可能か?
- 物流手段・コスト・リードタイムは適正か?
- 言語対応は十分か?(英語・日本語)
- ラベル、認証、PSE、PSCなど法令適合性は?
- 輸入実績、通関の安定性は?
- トラブル時の現地対応体制は?
- 現地視察・展示会で直接交渉可能か?
また、為替変動・輸送コスト・納期の管理も重要です。言語対応や日本の法律(PSE・PSCなど)への適合も確認しましょう。
過去に日本への輸入実績がある業者かどうか、問題が起きたときに現地で対応してもらえるかもポイントです。展示会や現地訪問など、直接のやり取りができればより安心です。
補足情報
2025年の最新制度変更・関税政策に関する補足
2025年10月12日から、日本への輸入貨物に対して新しい輸入申告項目が加わります。特に越境ECやフルフィルメントサービスを利用した商品については、適正な課税と水際での対策強化のため、申告内容をより厳しくチェックする方針が示されています。
商品ジャンルごとの国別強み(例)
- 中国:日用品、雑貨、アパレル、電子玩具など大量生産品
- アメリカ:健康食品、美容用品、ITガジェット、高付加価値ブランド品
- ベトナム:繊維製品、バッグ、木工品、靴
- 韓国:化粧品、ファッション雑貨、家庭用品
- 台湾:電子部品、精密機器、工具
輸入先国選定に関するQ&A
Q1. 初心者でも中国仕入れは安全にできますか?
A. はい、ただし品質管理と契約内容の明確化が必須です。可能なら第三者検品会社を使い、事前に数量・梱包・仕様を細かく契約書で確認しましょう。
Q2. ベトナムから輸入するとき、EPAを使えば必ず関税ゼロになりますか?
A. いいえ。EPA適用には正しい原産地証明が必要です。不備があると適用できません。輸出者に「日越EPA対応」の書類作成が可能か事前確認しましょう。
Q3. 台湾や韓国はトラブルが少ないと聞きますが本当ですか?
A. 比較的少ないですが、油断は禁物です。特にラベルや仕様変更は日本より厳格な対応が必要なケースもあり、交渉時は必ずサンプル確認や書面化を徹底しましょう。
Q4. アメリカから輸入する際、関税以外に気を付けることは?
A. 為替リスクと物流費の高騰です。特に航空便主体になるため、貨物の容積・重量を事前に把握し、為替予約も活用しましょう。
まとめ
仕入先国の選定は「価格」だけでなく、物流、文化、商習慣、法令、品質管理まで総合的に判断することが成功への近道です。初心者には、中国(価格と供給力)、台湾(信頼性と品質)、ベトナム(EPA活用とコスト)の三国が入りやすい選択肢です。
各国特有のリスクを正しく理解し、書類、契約、検品、現地対応体制を事前に整えることがトラブル防止の鍵となります。
次の記事>>「第3回:仕入れ先の見つけ方と信頼性の見極め」
基幹記事
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