輸入通関の仕組み
このレッスンで学べること
輸入するときの通関手続きの流れがわかる 海外から商品を日本に入れるとき、税関でのチェック(通関)が必要です。その全体の流れと基本的な手続きを紹介します。
通関業者とフォワーダーってどう違うの? 通関を手伝ってくれる「通関業者」と、輸送全体をまとめる「フォワーダー」。この2つの役割と違いがはっきりわかります。
通関で必要な書類と注意ポイント インボイス、パッキングリスト、B/Lなど、通関時に必要な書類と、その書き方や提出時の注意点を学びます。
安心できる物流パートナーの選び方 スムーズな輸入のためには、信頼できる業者選びが重要です。フォワーダーや通関業者の選び方を実務的に解説します。
通関トラブルの例と防ぎ方 書類のミスや内容の誤解で起こるトラブルを例に、どうすれば防げるかをわかりやすく説明します。
輸入通関とは何か?
輸入通関とは、海外から届いた荷物を日本で正式に受け取るために、税関に申告し、許可をもらう手続きです。関税や消費税を納めたうえで、問題がなければ「輸入許可」が出て、荷物を引き取れます。
通関は専門的な作業のため、通関業者やフォワーダー(国際輸送の専門業者)に依頼するのが一般的です。ミスを防ぎ、スムーズに手続きできます。
※すべての申告は「NACCS(ナックス)」という電子システムで行われています。
輸入通関の流れ(標準的な手順)
- 貨物の到着(港・空港)
- 必要書類の提出(インボイス、P/L、B/Lなど)
- 税関への輸入申告(NACCS経由)
- 書類審査・貨物検査(抜取・X線など)
- 関税・消費税などの納付
- 「輸入許可」の取得
- 貨物の引取・配送手配
まず、貨物が日本の港や空港に到着したら、税関に対して必要書類(インボイス=請求書、P/L=梱包明細書、B/L=船荷証券など)を提出します。
その後、通関業者などが税関のシステム(NACCS)を通じて「輸入申告」を行います。税関はその内容を確認し、必要に応じて書類審査や貨物検査(抜き取りやX線検査など)を行います。
問題がなければ、関税・消費税などの支払いを済ませたうえで、税関から「輸入許可」が下ります。これによって、その貨物は日本国内で正式に流通・販売できるようになります。
最後に、貨物を倉庫や自社へ引き取るための配送手配を行えば、輸入手続きは完了です。
通関の流れはシンプルですが、書類の不備や申告内容のミスにより、貨物が保留・検査・差し止めになることもあるため、慎重な準備が求められます。
通関業者とフォワーダーの違い
項目 | 通関業者 | フォワーダー(輸送手配業者) |
主な仕事 | 税関への申告を代行 | 輸送・通関・保管・配送まで一括で管理 |
必要な資格 | 通関士資格・許可が必要 | 運送業の登録(通関は一部代行) |
サービス内容 | 関税計算、HSコード確認、検査対応など | 国際・国内の輸送、保管、DHL手配など |
依頼のタイミング | 書類がそろってから通関前に依頼 | 最初からまとめて依頼できる |
基本的には、初心者や小規模輸入者はフォワーダーを窓口にすることで、通関と物流を一括して管理できるためスムーズです。
信頼できるフォワーダーを選ぶチェックリスト
- 自社の商品と同じような品の取り扱い実績があるか
- 通関をどこまでサポートしてくれるか(書類チェック・HSコード確認など)
- 問い合わせや見積もりの返事が早いか
- 見積の内容がわかりやすく、費用の内訳が明記されているか
- トラブル時(破損・遅延など)の対応がしっかりしているか
- EPAやFTA(関税の優遇制度)に対応しているか
見積もりをもらうときは、運賃だけでなく「通関や書類の対応」「EPAのサポート」などもセットで確認しましょう。
通関で起こりやすいトラブルとその対策
トラブル内容 | 原因例 | 対策 |
HSコードの誤認 | 商品理解不足、類似品との混同 | 事前に通関業者と相談し、類似品との違いを明確に説明 |
書類の不備 | インボイスの記載漏れ、原産地証明の誤記 | 提出前にチェックリストで確認 |
検査対応で遅延 | 抜取検査・X線検査などが発生 | 検査発生を見越して納期に余裕を持たせる |
課税価格のトラブル | 送料や保険料の計上ミス | FOBとCIFの違いを理解し、通関価格を正確に算定 |
※参考:X線検査率は約5〜10%、抜取検査率は約1〜2%(実務平均)。貨物や品目により変動。
たとえば、商品の分類を決める「HSコード」を間違えると、不適切な関税が課される、輸入できない品として処理されるなどの問題が発生します。見た目が似た商品でも分類が異なることがあるため、必ず通関業者と相談し、商品の特徴を正確に伝えましょう。
また、インボイスや原産地証明などの書類の不備は通関の遅延や再提出につながるため、事前にチェックリストを活用して、漏れや間違いを防ぐ工夫が大切です。
通関時に抜取検査やX線検査が行われることもありますが、これは避けられない場合もあります。あらかじめ検査が入る可能性を想定して、納期には余裕を持たせるようにしましょう。
さらに、関税や消費税の計算に必要な「課税価格」は、FOB(本船渡し)かCIF(運賃・保険込み)かによって異なるため、意味を理解して正確に申告することが求められます。
このように、通関のトラブルは事前の理解と確認でほとんど回避できるものばかりです。慣れないうちは、信頼できる通関業者に相談しながら進めることをおすすめします。
補足情報
NACCSとは?
NACCS(ナックス:Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)は、日本の税関手続きを電子的に一元管理するシステムです。輸出入の申告や関連書類の提出、税関での審査の進み具合の管理などがオンラインでできるようになっています。
通関書類の主な種類と役割
輸入通関で必要となる主な書類には、インボイス(商業送り状)、パッキングリスト(梱包明細)、B/L(船荷証券)、原産地証明書、保険証券などがあります。これらは荷物の内容・数量・価格・原産地などを証明するためのものです。
輸入禁止品や規制品の注意点
日本では、麻薬・銃器・特定の動植物・知的財産権を侵害する商品など、法律で輸入が禁止されたり制限されたりしている品目があります。これらを間違って輸入申告すると、荷物が没収されたり、罰則を受けたりするおそれがあるので、事前に必ず確認しておきましょう。
通関業者・フォワーダー選定時の注意点
業者を選ぶときは、過去の実績や対応の速さ、見積もりの分かりやすさだけでなく、以前に重大なトラブル(例えば税関での申告ミスや遅れなど)がなかったかも確認しましょう。また、契約する前に、どこまでサポートしてくれるのか、緊急時にはどう対応してくれるのかについても、はっきりさせておくことが大切です
スタートアップが抱く輸入通関に関するよくあるQ&A
Q1. フォワーダーに頼めば、通関業者は別途探さなくて良いのですか?
A. はい。多くのフォワーダーは自社内で通関業務も対応できるか、提携通関業者を使って一括手配が可能です。初心者はフォワーダーにまとめて依頼する方が手間も少なく、通関〜輸送までスムーズに管理できます。
Q2. 通関書類の提出はいつ行えばいいですか?貨物到着後ですか?
A. いいえ。貨物到着前に通関書類を事前に準備・提出することが一般的です。これにより到着後すぐに通関審査が始まり、遅延を防ぐことができます。特に航空貨物は時間勝負なので事前提出が基本です。
Q3. HSコードの判断はフォワーダーがしてくれるのですか?
A. 多くのフォワーダーは、輸入者から商品情報をもらった上で、通関業者がHSコードを提案します。ただし、最終責任は輸入者側にあるため、事前に商品特徴や類似品との違いを詳しく共有し、誤認リスクを減らしましょう。
Q4. 輸入通関の費用はどの段階で発生しますか?
A. 貨物が到着し、通関申告を行った時点で発生します。関税・消費税は、通関時に納付しなければ貨物を引き取ることはできません。通関手数料などはフォワーダーや通関業者に支払います。
Q5. 輸入通関でX線検査や抜取検査が発生する確率は高いですか?
A. 通常はX線検査が5〜10%、抜取検査が1〜2%程度の確率ですが、貨物の種類や過去のトラブル履歴によって変動します。完全に避けることはできないため、納期にはバッファを持たせるのが鉄則です。
まとめ
- 輸入通関は、税関に対して書類を提出し、許可を得るための重要ステップ
- 通関業者は申告の専門家、フォワーダーは物流全体のコーディネーター
- 初心者は通関と物流をセットで任せられるフォワーダー選びが現実的
- トラブルを防ぐには、事前の書類チェック、税番照会、信頼できる業者選定がカギ
- 通関電子申告(NACCS)や検査リスクを理解し、スケジュールとコストに余裕を持つ
次の記事>>「第8回:商品検査・ラベル表示・PSEやPSCの対応」
基幹記事
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