食品は「ジャンル」でルールが変わる
「食品輸入」といっても対象品目によって適用される法令や審査基準は大きく異なります。
例えば、一般食品、加工食品、容器包装、添加物、健康食品といった分類ごとに、提出すべき書類や必要な検査項目が異なるため、各品目の扱いに注意が必要です。
特に小規模な輸入事業者にとって、輸入前にそれぞれの品目特有の規制を把握しておくことは、実務トラブルを未然に防ぐ上で不可欠です。また、法令違反があった場合には回収命令や罰則が課されることもあり、ビジネス上のリスク管理という観点からも品目別規制の理解は重要です。
この記事では、食品衛生法上のジャンル分類をもとに、特に注意が必要な「食品容器・器具」「冷凍食品」「健康食品・サプリメント」「添加物」「遺伝子組み換え食品」などに関する規制や注意点を解説します。
食品衛生法による分類と規制の考え方
食品衛生法では、食品の性質や用途に応じて複数の分類があります。主に次のようなジャンルに区分され、審査や検査、表示義務が異なります。
- 一般食品(調味料・菓子・飲料など)
- 加工食品(冷凍食品、缶詰など)
- 健康食品・サプリメント類
- 食品添加物
- 器具・容器包装
- 動植物由来品(肉・魚・乳製品など)
この分類に応じて、届出書に添付する資料や、検査の有無、表示ラベルの内容までが変わってきます。たとえば、動物性食品は動物検疫所の審査も対象となるほか、冷凍食品やサプリメントは保存条件や成分表示の規定がより厳格になります。
特に特殊な品目を扱う場合は、都度保健所や検疫所に事前相談を行うのが望ましい対応です。検疫所では品目別に輸入相談を受け付けており、輸入可否の事前判断や必要な検査項目の確認が可能です。
サンプル輸入と製品輸入の違い
輸入前に商品の品質やパッケージを確認する目的で「サンプル輸入」を行うケースもあります。この場合、販売を伴わない少量の評価用輸入であれば、食品届が不要となる場合もあります。
ただし、税関インボイスには「For Evaluation Only(評価目的)」などの文言を明記し、販売・転売を一切行わないことが前提です。サンプルであっても、食品衛生法に適合していないと持ち込み自体が拒否されるケースもあるため、事前に検疫所へ相談するのが安全です。
食品容器・器具の輸入規制
食品に直接触れる「容器」「器具」も、食品衛生法の対象です。
例えば、プラスチック製タッパーやガラス瓶、食品保存用のアルミ袋などは「食品に接触する器具・容器包装」として分類され、材質の安全性が求められます。
輸入時には、「食品・添加物等の届出書(器具・容器包装用)」を別途提出し、製品仕様書や構成素材の情報などを明示する必要があります。場合によっては、材質試験成績書(BPAの溶出試験など)も必要になることがあります。
また、器具・容器の使用温度や材質ごとの溶出基準にも注意が必要です。
例えば、ポリプロピレン製品であれば、90度以上の液体に接触した際の安全性試験結果が求められる場合もあります。
冷凍食品やサプリメントなどの特殊品目
冷凍食品は「冷凍設備の保持」「冷凍状態の維持」が求められ、輸送過程を含めた温度管理が審査対象になります。冷凍コンテナの使用や、通関時の温度記録計の提出を求められるケースもあるため、物流体制の整備が必要です。
また、サプリメントは形状や表示によって「医薬品」とみなされる可能性があるため、薬機法のチェックも必須です。特に「カプセル形状」「機能性表示」「健康効果の主張」がある場合、保健所に事前相談して医薬品該当性の判断を仰ぐことがお勧めです。
さらに、錠剤や顆粒状の商品を輸入する場合、消費者が「医薬品」と誤認する可能性があるため、販売時の表示表現についても慎重な設計が必要です。
食薬区分の判断と相談先
サプリメントや健康食品など、機能性成分を含む製品は「食薬区分」の判断が重要です。
例えば、ウコンやプロポリス、コエンザイムQ10といった成分は、配合量や形状(錠剤・カプセル)によっては「医薬品」とみなされ、輸入できないこともあります。判断が難しいケースでは、各都道府県の薬務課やPMDA(医薬品医療機器総合機構)に相談すると、具体的な見解を得ることができます。
添加物・医薬成分の確認と注意点
日本で使用可能な食品添加物は「ポジティブリスト制度」に基づき限定されています。海外で一般的に使われる添加物でも、日本では認可されていないものが多くあります。輸入品に添加物が含まれる場合は、成分表をもとに使用成分が日本国内で認可済みかを事前に確認します。
例えば「保存料」「着色料」「甘味料」などが含まれる加工食品では、成分ごとに個別審査が必要になる場合があります。表示義務にも直結するため、検疫所への事前相談が推奨されます。
また、健康食品などに含まれるハーブや成分が、医薬品成分(例:エフェドリン、カフェイン高含有など)とみなされると、販売停止や差止命令の対象となります。これら成分は「食薬区分」によって定義されており、判断基準は厚労省の通達や資料で確認可能です。
禁止・制限品と違反事例の調査方法
以下のような情報源を活用すると、過去の違反事例や禁止品の調査が可能です。
- 厚生労働省「輸入食品監視指導計画」
- 検疫所の違反事例データベース(食品衛生検査情報)
- 税関の輸入禁止品リスト
- 食薬区分表(医薬品と食品の境界判断資料)
- 貿易業界紙・業界団体の警告リスト
特に過去に輸入差止めになった品目は、再輸入時にも命令検査対象になることが多いため、同じ失敗を繰り返さないためにも事前の情報収集が重要です。違反の詳細は「理由」も記載されており、輸入の可否判断にも活用できます。
記事の要点まとめ
- 食品輸入は品目別に規制や書類要件が大きく異なる
- 容器や器具も食品衛生法の対象であり、別途の届出が必要
- 冷凍食品・健康食品・サプリメントには温度管理や薬機法のチェックが必要
- 添加物は日本のポジティブリスト制度に適合しているかを要確認
- 厚労省・検疫所・税関の公開情報を使って違反事例や禁止品目を確認できる
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