FCLとLCLの選び方
この記事で説明すること
FCLとLCLのちがいがわかる
コンテナを「まるごと使う(FCL)」か「他社と一緒に使う(LCL)」か、それぞれの特徴を紹介します。
それぞれのメリット・デメリットが学べる
FCLは安全で自由度が高い、LCLは少量でも送れるが注意点がある、という使い分けを理解できます。
費用の目安がつかめる
FCLやLCLの料金相場(例:上海→東京)や、どんな費用が追加でかかるのかを確認できます。
自分に合った輸送方法の選び方がわかる
荷物の量・価値・納期などから、FCLかLCLかを選ぶポイントをチェックできます。
選ぶ前に確認すべきことを整理できる
輸送のリスク、梱包の自由度、見積もりで見るべき点など、判断ミスを防ぐためのチェックリストがあります。
よくある質問に答えてくれる
「どちらが安い?」「どんな費用がかかる?」「納期は違う?」など、初心者が迷いやすい疑問をQ&A形式で解説しています。
海上輸送の選択肢
海上輸送には主に2つの選択肢があります。
- 「FCL(Full Container Load)」
- 「LCL(Less than Container Load)」
これらは、貨物の体積や重量、納期、コスト、商品の性質などによって使い分けます。この記事では、FCLとLCLの違いやそれぞれの利点・欠点、実務上の選定ポイントに加え、目安となる料金の事例とその読み解き方を学びます。
FCL(コンテナ単位の輸送)とは?
FCLは、1本のコンテナを荷主1社が専有する輸送形態です。貨物量が多い場合や、他社貨物との混載を避けたいケースで適しています。梱包形状の自由度が高く、製品サイズに応じた対応が可能です。
主な特徴
- コンテナの種類:20フィート(約33CBM)/40フィート(約67CBM)/ハイキューブ(約76CBM)
- 他社の荷物と混載しないので、破損や誤配送のリスクが少ない
- 荷物の積み込み・荷降ろしを自社で管理できるため、効率よく積むことができる
- コンテナ内の温度・湿度やセキュリティも一定レベルで管理できる
料金の特徴
- コンテナ単位での固定料金制(使った容量に関係なく、1本分の料金がかかる)
- 荷物の量が12~15CBM以上ある場合、LCLよりもFCLの方が安くなることが多い
- コンテナをいっぱいに近い状態で使うほど、1CBMあたりの費用が安くなります。
LCL(混載輸送)とは?
特徴
- 送料は荷物の体積(CBM)で決まる
- 荷物が少なくても送れるので、コストを抑えやすい
- 人気ルートでは定期的な出荷便がある
- 他の荷主の荷物と一緒になるため、破損や紛失に注意が必要
注意点
- 荷物はCFS(仕分け倉庫)で積み替えられるため、FCLよりも遅延やトラブルが起きやすい
- 基本料金のほかに、CFS費・港の手数料・書類代などがかかる
- 最終的な見積もりをしっかり確認することが大切です
料金目安(あくまで参考値)
※以下は上海 → 東京の例であり、実際の費用は貨物内容・航路・季節・為替・燃油サーチャージ等により変動します。
FCL(上海 → 東京)
- 20ftコンテナ:12万〜18万円程度
- 40ftコンテナ:20万〜30万円程度
- THC(港湾費用)、ドレージ(陸送)、通関費用は別途
- 通関書類、保険料、B/L発行手数料もケースによって発生
LCL(上海 → 東京)
- 基本運賃:約5,000〜7,000円/CBM
- CFS費用:約4,000〜6,000円/案件あたり
- 書類作成費、THC、保険料など含めると1〜1.5万円/CBMが目安
※重量超過、特殊貨物、パレット使用などがある場合は、追加費用が発生する可能性があります。
FCLとLCL、どちらを選ぶべきか?
選択基準としては、単に貨物の容積や料金だけでなく、リードタイム、取引頻度、商品価値、セキュリティ、損害発生時のリスク許容度なども加味する必要があります。
項目 | FCL | LCL |
---|---|---|
輸送量 | 多い(15CBM以上) | 少量(15CBM未満) |
セキュリティ | 高い(他社と混載なし) | 他社貨物と混載のため注意が必要 |
輸送コスト | 単価は安いがコンテナ全体費用が必要 | 少量に応じた従量課金 |
スケジュール柔軟性 | 高い(船の選定自由度あり) | コンソリ業者のスケジュールに依存 |
荷姿の自由度 | 高い(梱包形状の自由がある) | 制限される(CFSでの共通基準に合わせる必要あり) |
トラブル耐性 | 強い(自社管理がしやすい) | 弱い(破損・誤配送リスクが高い) |
チェックリスト:選定前に確認すべきポイント
FCL(コンテナ貸切)とLCL(混載便)の選定は、単に運賃だけの比較で決めてはいけません。初心者にとっては「安く送れるかどうか」に目が行きがちですが、実際はコスト以外にも重要な判断材料が多くあります。
たとえば….
FCLを選ぶと、貨物は自社専用のコンテナで運ばれるため、他社貨物との接触リスクがなく、破損や汚損の心配が減るほか、出荷や納品のスケジュールも比較的柔軟に調整しやすいというメリットがあります。
一方で、LCLは少量でも送れることが魅力ですが、他社の荷物と一緒に運ばれるため、荷崩れや仕分けミス、到着遅延といったリスクがある点に注意が必要です。また、CFS費用や書類手数料など、基本運賃以外の追加費用が発生しやすいのも特徴です。
したがって、以下の点をトータルで判断することが大切です。
- 貨物の量・価値・壊れやすさ
- 輸送スピードや納期の優先度
- 梱包の自由度や荷姿の特殊性
- 将来的な輸送頻度や拡張性
- 費用対効果(総コストとリスクのバランス)
迷ったときは、フォワーダーにFCLとLCLの両方で見積もりを取り、納期や費用を比べるのがおすすめです。選ぶポイントは「料金」だけでなく「輸送の安定性」も見ましょう。
FCLの適正度チェック
- 荷物が12CBM以上ある
- 高額・壊れやすい荷物で安全に運びたい
- 納期や積み方の自由度を重視したい
LCLの適正度チェック
- 貨物量が少量(12CBM未満)
- 試験輸入や不定期出荷
- コスト重視で少量輸送を希望
- 納期にある程度の余裕がある
FCLかLCLかの選定は、物流コストだけでなく、信頼性・納期・損害リスク・運用体制を含めたトータル視点で判断しましょう。
補足情報
LCL輸送における貨物制限
LCL(混載輸送)は、他の荷主とコンテナを共有します。そのため、以下のような荷物は断られることがあります。
- 危険物(例:スプレー缶、バッテリー)
- 冷蔵・冷凍が必要なもの
- 強いにおいがするもの
このような場合は、事前にフォワーダーへ相談しましょう。
LCL輸送の料金計算方法
料金は、容積(CBM)と重量(トン)のうち大きい方で計算されます。たとえ荷物が少なくても、最低1CBMまたは1トン分の料金がかかるのが一般的です。
FCLコンテナサイズ選択の経済性
20フィートコンテナの料金は、40フィートのちょうど半額ではなく、約80~90%の料金がかかることが多いです。そのため、荷物の量とコストを見て、どちらが得かを考えて選びましょう。
港湾での取扱いプロセスの違い
- FCL(貸切輸送):港のコンテナヤード(CY)で受け渡しします。
- LCL(混載輸送):港のCFS(仕分け所)で荷物を出し入れします。
この違いにより、手続きやかかる時間(リードタイム)も異なります。
最短引取りの目安
- FCL=本船到着日の翌日
- LCL=本船到着日の翌々日
但し、HDS(ホットデリバリーサービス)を利用している場合、予備申告をしている場合は、上記のタイムスケジュールよりも短くできます。(超最短=本船当日のピックアップデリバリー)
初心者が感じやすい!FCL・LCL Q&A
Q1. FCLとLCLはどちらの方が必ず安い?
A. 貨物量によります。目安として12〜15CBM以上ならFCLの方が1CBMあたり割安になることが多いですが、少量ならLCLの方が無駄が少なくコスト効率が良いです。
Q2. LCLなら細かい管理や手配は不要?
A. いいえ。LCLは他社貨物と混載のため、破損や誤配送リスクが高まります。梱包やラベル管理、書類不備によるリスクにも注意し、フォワーダーやCFSへの指示も慎重に行いましょう。
Q3. LCLの見積は運賃だけで判断していい?
A. いいえ。LCLは運賃以外にCFS費用、THC、書類作成費、保険料などの別途費用が発生します。必ず総額ベースで確認しましょう。
Q4. FCLなら破損や紛失リスクはゼロ?
A. いいえ。FCLでも積み替え時やデバンニング時に破損リスクはあります。貨物保険や適切な梱包は必須です。
Q5. FCLとLCLで納期の違いは大きい?
A. はい。LCLはCFSでの仕分け作業があるため、FCLより納期が1〜3日程度長くなる傾向があります。納期優先ならFCLを検討しましょう。
Q6. FCLでもLCLでも追加費用が発生することがある?
A. はい。THC、ドレージ費、保険料、書類費用など、基本運賃以外の費用はFCLでもLCLでも発生します。見積書の内訳確認は必須です。
次の記事>>「第8回:コンテナの種類と輸送における選択肢」
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