海上輸送のメリット・デメリット
海上輸送は、最もよく使われる国際輸送の方法です。特に、大きな荷物や大量の荷物を遠くへ送るときは、飛行機よりもコストが安くすみます。日本のような海に囲まれた国では、とても大事な輸送手段です。
ただし、海上輸送にも弱点があります。
たとえば、時間がかかる、天候に左右されるなどです。荷物の種類や納期によっては、他の方法のほうが合っていることもあります。
この記事では、海上輸送のよい点・悪い点や、実際に使うときの注意点をわかりやすくまとめます。あなたのビジネスに合った輸送方法を選ぶ参考にしてください。
この記事で説明すること
海上輸送ってなに?
船を使って海外とモノをやりとりする方法の特徴をやさしく解説します。
海上輸送のメリット
コストが安い、大量輸送ができる、いろんな貨物に対応しやすい、環境にやさしいなどの良い点を紹介します。
海上輸送のデメリット
時間がかかる、天候に左右される、書類が多い、追加費用が発生しやすいなどの注意点もわかります。
どんなときに海上輸送が向いているか
コンテナ1本以上あるとき、納期に余裕があるとき、大きくて重い荷物のときなど、使いどきがイメージできます。
海上輸送を選ぶ前のチェックポイント
納期・貨物量・保険・書類・信頼できる業者がいるかどうかなど、事前に確認すべきことを整理しています。
海上輸送の流れ
荷物の準備から通関、船への積み込み、輸送、到着後の納品までの流れをわかりやすく説明します。
最近の国際情勢と海上輸送への影響
スエズ運河の問題や環境規制が、輸送にどんな影響を与えているかを紹介します。
よくある質問(Q&A形式)
「海上輸送は全部の貨物に向いてるの?」「追跡できる?」「保険は必要?」など、初心者の疑問に答えます。
海上輸送の主な特徴
海上輸送は、船を使って貨物を運ぶ方法です。主に「FCL(コンテナ丸ごと)」か「LCL(他社と混載)」で行います。
特長
- 大きくて重い荷物や大量の荷物に向いています。
- 一度にたくさん運べるので、費用を抑えやすいです。
- 輸送期間は1〜4週間ほど(ルートや経由地によります)。
- コンテナの種類も豊富(通常・冷蔵・屋根なしなど)。
- 船の便には定期便とチャーター便があります。
注意点
海上輸送はコストに優れた方法ですが、事前の準備と管理が大切です。
メリット:海上輸送を選ぶ理由
1. コストが安い
同じ距離なら、航空便よりずっと安く送れます。特に大量に送るときは、1立方メートルあたりの費用が非常に安くなります。
2. たくさんの荷物が送れる
1本のコンテナに大量の商品をまとめて入れられるので、大口の出荷にぴったりです。
3. いろいろな種類の荷物に対応できる
食品・危険物・家具・機械など、幅広い商品が輸送可能です。冷凍・液体・大型品なども、専用の設備で対応できます。
4. 世界中にルートがある
ほとんどの国の主要な港が海上輸送でつながっていて、インフラが整っているため、アジア・ヨーロッパ・アメリカ間など、定期航路も豊富です。
5. 環境にもやさしい
船は一度にたくさん運べるため、CO2の排出も少なくて済むことが多く、今の時代に合った、エコな輸送方法としても注目されています。
→ コストを抑えて、しっかり送るなら海上輸送が有力な選択肢です!
デメリット:注意すべき点
1. 時間がかかる
近くでも1週間、遠い国だと1か月以上かかることも。急ぎの発送には向きません。
2. 天候や混雑で遅れることがある
台風・ストライキ・港の混雑などで、予定がずれるリスクがあります。最近はコンテナ不足や船の予約が取りにくいことも。
3. 必要な書類が多い
通関、インボイス、B/L、原産地証明など、たくさんの書類を管理する必要があります。慣れないうちは手間に感じるかもしれません。
4. 港での費用が別にかかる
THC(港での作業代)、ドレージ(港→倉庫の運賃)、保管料など、港関連のコストも見込んでおく必要があります。LCLの場合は混載費用も追加されます。
5. 荷物の状態が見えにくい
出荷後すぐには場所や状態を確認しにくく、破損やラベル外れなどのトラブルが起きることも。→ 貨物保険の加入と、輸送条件の確認が重要です。
あらかじめリスクを理解しておけば、対策を立てて安心して海上輸送を利用できます!
海上輸送が向いているケース
- コンテナ1本以上の荷物がある
- 商品の価格が安く、送料をなるべく安くしたい
- 納期に余裕がある(急がない)
- 商品が大きい・重い・形が特殊で航空便では運びにくい
- 定期的に輸出入をしている
- 環境にやさしい輸送を考えている
これらに当てはまる場合、海上輸送を選ぶことでコストを下げながら安定した輸送が可能です。さらに、フォワーダーや追跡システムを活用すれば、納期の遅れを防ぎ、在庫の管理もしやすくなります。
チェックリスト:海上輸送選定前に確認すべき7項目
海上輸送は安く運べるのがメリットですが、時間がかかる、天気に左右されやすいといった注意点もあります。とくに初心者は「安いから」とだけで選ぶと、納期の遅れや追加費用など、あとで困ることがあります。
事前にしっかり準備し、次のチェックリストを確認してから利用しましょう。
7つのチェック項目
- コンテナ1本分ないのに、FCLで無理に出していませんか?
- 納期が近いのに、時間のかかる海上便を選んでいませんか?
- 本当に航空便より安くなっていますか?
- 天候や港の混雑で遅れても大丈夫なスケジュールですか?
- 輸送に必要な書類や契約の内容を理解していますか?
- 破損や水濡れに備えて、保険や梱包対策をしていますか?
- 信頼できるフォワーダーと事前に相談できていますか?
どれか一つでも不安が残る場合は、フォワーダーに相談して条件を整理した上で輸送手段を決めることをおすすめします。
海上輸送の流れ
1.貨物準備・集荷(荷主)
輸出する商品を梱包し、インボイスやパッキングリストなどの書類を準備。寸法や重量の測定ミスに注意。
2.バンニング・通関(フォワーダー、通関業者)
コンテナへの積込み(バンニング)や輸出申告を行います。貨物の申告内容と実物の不一致は通関トラブルの原因に。
3.積込み・出港(船会社)
コンテナが本船に積まれて出港します。スケジュールのズレ(天候・港湾混雑)に注意。
4.海上輸送(約1〜4週間)
実際に海上での移動。長期輸送になるため、水濡れ・揺れ対策など適切な梱包が重要。
5.到着港・輸入通関(通関業者)
日本の港で通関手続き。書類不備やHSコード誤りがあると、通関保留になる可能性。
6.デバンニング・納品(フォワーダー、トラック会社)
コンテナから荷物を出し(デバンニング)、最終納品先へ配送します。事前に納品先の受け入れ体制も確認しておくとスムーズ。
補足情報
最近の国際情勢と海上輸送への影響
2024年以降、紅海やスエズ運河でのトラブルのため、多くの船が遠回り(アフリカの南・喜望峰経由)をするようになりました。その結果、ヨーロッパ向けの輸送が2〜3週間遅れることもあります。
この影響で…
- 船の遅れや積み残しが発生
- 混雑した港には寄港しないこともある
- コンテナの空きが減り、運賃が高騰
といった問題が起きています。
また、ストライキや戦争などのリスクもあるため、最新の情報を集めて柔軟に対応することが大切です。
環境対策とこれからの輸送
今、国際ルールにより船の環境対策が強化されています。
たとえば…
- 「低硫黄燃料」への切り替え
- 燃費の良い新しい船の導入
などが進められています。これからは「環境にやさしい輸送」を選ぶことが、企業の信頼や競争力を守るカギにもなります。
初心者が感じやすい!海上輸送Q&A
Q1. 海上輸送はどんな貨物にも適していますか?
A. いいえ。大量・大型貨物には向いていますが、納期が短い商品や壊れやすい商品、緊急性が高い商材には不向きです。場合によっては航空便の方が適しています。
Q2. 海上輸送でも貨物のリアルタイム追跡はできる?
A. 限定的です。船会社やフォワーダーのトラッキングシステムを使えば、港到着予定などは確認できますが、航空便ほどリアルタイムではありません。
Q3. LCLだと港湾費用は割高になるの?
A. はい。LCLはCFS費用(混載管理費)、分割管理費、THCなどが加算されるため、FCLより1CBMあたり高くなるケースがあります。
Q4. 台風や港湾ストライキで遅延した場合、補償はある?
A. 基本的には不可抗力扱いとなり、船会社やフォワーダーからの補償は期待できません。保険加入やスケジュールの余裕を持たせるなどの対策が必要です。
Q5. 海上輸送で必ず加入すべき保険は?
A. 義務ではありませんが、海上輸送はリスクが高いため「貨物海上保険」加入が推奨されます。特に破損、紛失、湿気・潮害リスクをカバーする条件を確認しましょう。
Q6. 海上輸送の納期遅延はどう管理すればいい?
A. フォワーダーや船会社のトラッキングを活用し、リードタイムに余裕を持つことが基本です。特に販売計画・生産スケジュールに直結する場合は、事前に代替手段(航空便など)を検討することも有効です。
まとめ
海上輸送は、大量輸送コスト削減と安定的な物流構築に最適な手段です。一方で、リードタイムやリスクを踏まえた事前計画、適切な業者選定、貨物保険加入が不可欠です。事業特性と照らし、海上輸送の活用方針を戦略的に定めましょう。
次の記事>>「第7回:FCLとLCLの選び方と料金目安」
基幹記事
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