日本への輸入時には、原則として関税と消費税が課されます。ですが、一定の条件を満たす場合には 免税や減税の制度 を利用できます。この記事では、関税定率法と関税暫定措置法に基づく代表的な仕組みを、わかりやすく表やFAQ形式で整理します。

関税の減免又は免税措置の一覧
輸入時の諸税を免税にする仕組みは、関税定率法と関税暫定措置法の2つを根拠にしています。
暫定法は、その名の通り、期間限定で適用される法律です。期間が迫ってくると延長しています。特に有名なのが「暫定8条」、通称「暫八」です。
関税定率法に基づく免税・減税制度
条文 | 制度名 | 内容・事例 |
---|---|---|
第10条 | 変質・損傷時の減税 | 輸入後に保税地域で破損が判明 → 税金を戻せる(例:輸送中に海水で変色) |
第11条 | 加工・修繕目的の輸出入 | 修繕後に再輸入する場合、修繕部分のみ課税(例:海外工場で修理したレンズ) |
第12条 | 生活関連物資の減税 | 食料品などの生活必需品が高騰した場合に適用 |
第13条 | 製造用原料品の減税 | 家畜飼料用のトウモロコシなど |
第14条 | 無条件免税 | 皇室用品、外交品、総額1万円以下の輸入品など |
第14条-2 | 再輸入減税 | 輸出した商品が返品され再輸入された場合 |
第14条-3 | 水産物の減税 | 日本船舶が外国で捕獲・加工した水産物 |
第15条 | 特定用途免税 | 学校や研究用の教材など |
第16条 | 外交官用免税 | 大使館・外交官の自用品 |
第17条 | 再輸出免税 | 展覧会用に一時輸入し、1年以内に再輸出する場合 |
第18条 | 再輸出減税 | 一定期間だけ使用した後に再輸出(大型機械など) |
第19条 | 輸出用原料の免税 | 輸出製品に使う原料を輸入するとき |
第20条 | 違約品の再輸出・破棄 | 契約と異なる商品や不良品を再輸出・破棄する場合 |
変質、損傷等の場合の減税又はもどし税(10条)
輸入許可後「保税地域にある間」に輸入商品に変質や損傷などが見つかり、商品的な価値がなくなった物に対して、変質や損傷による部分の税金を戻す仕組みです。
- コンテナ輸送の最中に海水が侵入し変色した。商品的な価値がなくなった。
- 海外通販で商品を輸入した。箱を開封したら、商品が壊れていた。
加工又は修繕のため輸出された貨物の減税(11条)
商品を加工や修繕のために、外国へ輸出した物を再度、日本に輸入するときの減税制度です。
例えば、イタリア製の超薄型のレンズがあるとします。修繕技術はイタリアの工場しかないため、輸出しなければならない。無事に修繕が終わり、再度、日本に輸入するときは、修繕による付加価値分のみに課税されます。
生活関連物質の減税又は免税(12条)
食料品や生活関連物質の値上がりにより、日本国内の生活物質関連の値上がりが続いている場合に、関税を免税や減税にする仕組みです。
製造用原料品の減税又は免税(13条)
家畜のエサなどを製造するときに使う原料を輸入するときの減税や免税の仕組み
例:アメリカからトウモロコシを輸入して、牛用の飼料にするなど。
無条件免税(14条)
皇室用品、外国の元首などの品、国の専用品、課税価格の合計額が1万円以下のときに適用される免税制度です。
例:外国から海外小売価格(16000円相当)を個人使用目的で輸入する場合=16000×0.6=10000円以下。よって、14条の無条件免税を適用できる。
再輸入減税(14条-2)
日本から輸出した貨物を再び輸入する場合」であり、「加工や修理を経ていない」ものに適用します。但し、関税は無税でも消費税は課税されます。
例:海外販売向けに輸出した。しかし、売り上げが悪くて商品が返却されてきたなど。
外国で採捕された水産物等の減税又は免税(14条-3)
日本の船舶によって、外国の捕獲、又は加工された水産物を輸入するときの関税の減税措置です。
特定用途免税(15条)
学校や研究目的など、日本の学術振興につながる産品への免税措置です。
外交官用貨物等の免税(16条)
日本と国交がある大使館の公用品や外交官の自用品に対する関税を免除する仕組みです。
再輸出免税(17条)
加工貿易や文化レベルを向上させる目的で一時的に輸入をした物。それを輸入の許可日から一年以内に輸出するときに関税を免税します。
再輸出減税(18条)
使用契約などを結び、日本国内で一時的に使用することを前提にする物を再輸出するときに、日本使用分以外の部分にかけられている関税の払い戻しを受けられる仕組みです。
例:超大型の機械を輸入。それを日本で一定期間使用。契約が終わったので、再び日本国外へ輸出するなど。この場合、日本で一定期間使用していた部分に対する価値を算出し、それ以外にかかる関税を払い戻します。
輸出貨物の製造用原料品の減税、免税または戻し税(19条)
特定の輸出貨物に使われる原料品への減税、または免税の仕組みです。
課税原材料品等による製品を輸出した場合の免税又は戻し税(19条-2)
保税工場で原料(外国貨物)を使い製品を製造。しかし、やむを得ない理由で日本国内の原料品を使った場合に、日本国内の原料部分に相当する関税を払い戻す仕組みです。
輸入と同一状態で再輸出される場合の戻し税(19条-3)
輸入時に関税を納付した。貨物は輸入時と同じ状態。これを輸入の許可の日から一年以内に輸出するものに適用する戻し税の仕組みです。
違約品等の再輸出又は破棄の場合の戻し税(20条)
契約とは違う商品が送られてきた~ 又は、品質上の問題から、輸入した商品を日本国内で全て破棄した~などのケースで、日本国内に輸入したときの関税を払い戻す仕組みです。
関税暫定措置法に基づく免税・減税制度
条文 | 制度名 | 内容・事例 |
第4条 | 航空機部品の免税 | 航空宇宙産業向けの輸入品 |
第8条 | 加工貿易減税 | 輸出した原料を海外で加工し、完成品を再輸入するときは加工部分のみ課税 |
第8条-7 | EPAに基づく加工免税 | 経済連携協定締約国での加工部分も含めて全額免税 |
航空機及びその部分品等の免税(4条)
航空宇宙産業の発展につながる商品の関税を免税にする仕組みです。
加工又は組み立てのため輸出された貨物を原材料とした製品の減税(8条)
日本国内の商品を輸出する。海外では、日本からの商品を「原料」として完成品を仕上げる。その後、完成品を一年以内に輸入する。この場合は、日本から輸出された商品部分の関税を減税します。
例:完成品輸入時の価格が1万円。その内、日本国内から発送した商品(原料部分)が8000円相当。現地での加工部分が2000円であれば、日本輸入時の関税は、2000円部分に対して課税される。
関連記事:暫定8条とは?アパレル輸入ビジネスに必須の関税制度
経済連携協定に基づく加工又は修繕のため輸出された貨物の免税(8条-7)
仕組みは上記と同じです。一点、決定的に違う点は、輸出先(締約国)の加工部分も含めて全て免税になることです。
例:10000円の完成品価格の内、8000円が日本からの資材分。2000円が締約国での付加分であっても、10000円の全額が無税になります。
情報元:税関のホームページ
よくある質問(FAQ)
Q1. 個人輸入でも免税制度を使えますか?
A. 一部可能です。特に「1万円以下免税」や「無条件免税」は個人輸入でも適用されます。
Q2. 1万円以下免税の計算に送料は含みますか?
A. はい。CIF価格(商品代金+送料+保険料)で計算されます。
Q3. 禁制品でも免税制度は適用されますか?
A. いいえ。禁制品や輸入規制品(医薬品、電池、化粧品など)は対象外です。国ごとのリストを必ず確認しましょう。
Q4. 保険金請求額と免税制度の関係は?
A. 免税の計算に使う価格は、事故や破損が起きた際の保険金額算定にも影響します。実態より著しく低い価格を記載すると保険が減額されることもあります。
Q5. 関税暫定措置法の「暫八」とは?
A. アパレル業界でよく使われる第8条のことを「暫八」と呼びます。海外加工の完成品を再輸入するときに有効です。
実務での注意点とチェックリスト
- 免税条件は「貨物の用途」「価格」「輸出入の履歴」で大きく変わる
- 送料込みで1万円を超えるかどうかを必ず確認する
- 禁制品や規制品は免税の有無に関わらず持ち込み不可
- EPA(経済連携協定)を活用すると、暫定法より有利な場合もある
まとめ
- 日本に輸入する際は原則として関税・消費税がかかりますが、関税定率法と関税暫定措置法で多くの免税制度があります。
- 個人輸入では「1万円以下免税」がもっとも利用頻度が高い制度です。
- 法人輸入では「暫八」や「加工貿易関連の免税」が実務上よく使われます。


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