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韓進海運(ハンジン)と小山海運の倒産から学ぶべき対策

 



 

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「コンテナ船は危機的な状況にある」と言われても、信じられない方が多いのではないでしょか? 実は、コンテナ業界は、この「危機」の言葉にピッタリなほど、経営環境が悪いです。ご存じの通り、2016年におきた「韓進海運」の経営破綻は、この危機がほんの少しだけ表に出た出来事です。

日本国内に目を向けると、川崎汽船、商船三井、日本郵船の三つのコンテナ事業が合体して「ONE/Ocean Network Express」が誕生するほど、業業界内での再編が進んでいます。一体、コンテナ船には、何が起きているのでしょうか? そして、このコンテナ業界の状況を踏まえて、私たち荷主は、何をするべきなのでしょうか?

世界的なコンテナ業界の再編

世界中の巨大な船会社を含めて考えても、現在のコンテナ業界は「クライシス(危機)」の言葉がピッタリです。巨大な船を動かし、自由自在に世界中と航路を築く船会社が、なぜ、危機にあるのでしょうか? まずは2016年に起きた韓進海運の破綻についてご紹介していきます。

韓進海運の破綻とは?

韓進海運(はんじん)は、韓国の大手船会社。2016年の8月をもって、負債総額5000円億円で経営破綻した会社です。破綻する前は、90隻以上の大型コンテナ船を所有する世界ランク7位のメガキャリアでした。一見すると、会社自体は、非常に巨大であり安定していると感じます。しかし、実際、ふたを開けてみると、散々な状態だったのです。

韓進海運の財務情報を分析してみると、自己資本に対する他人の資本の割合を示す「負債比率」は、1000%を超える状況です。この負債比率は「100%以下」が望ましいとされているため、当時における韓進海運の1000%がいかに異常な数字であったのかがわかります。

なぜ、韓進海運は、ここまでの負債を抱えてたのでしょうか?この状況は、韓進海運だけのことなのでしょうか? 実は、そうでもないのです。韓進海運とまではいかなくても、財務状態が悪い船会社は、非常に多いです。2019年現在においても、第二、第三の韓進海運が誕生してもおかしくないと言われているのが、現在のコンテナ業界です。まさに「クライシス」です。

コンテナ船が不調な理由

なぜ、これほどまでにコンテナ船が不調なのでしょうか? 大きなポイントは、次の4つです。

  1. 独占禁止法の適用除外の縮小や廃止
  2. サービスコントラクトの義務付け
  3. コンテナ船の供給過多と大型化
  4. 経済的要因

1.独占禁止法の適用除外の縮小や廃止

独占禁止法とは、世の中にある商品やサービスをある一定の会社が独占するのが防ぐ法律です。仮のお話として、日本全国に豆腐屋さんが2つしかないとすると、豆腐の値段が「独占」的に決められてしまいますね? これでは、豆腐好きの人が困ってしまいます。そこで、一つの市場を独占や寡占(少数の企業)から守るために、この独禁法があります。

実は、この独占禁止法は、国際輸送については、対象外とされてきました。国際輸送は、独禁法の対象外であったため……..

例えば、ある地点とある地点は、○○円にする~などの「価格協定」も行われていました。いわゆる「海運同盟」を組み、過当な競争を防いでいたのです。ところが1998年の外航海運改革法により、独占禁止法の適用除外の縮小や廃止などが行われて、逆にこんにちのような過当競争の時代になってしまったのです。これが一つ目です。

2.サービスコントラクトの義務付け

2つめは、船会社に義務付けたサービスコントラクトです。サービスコントラクトとは、荷主やフォワーダーと「一定期間、一定量の積み荷を確保」を約束する代わりに、運送料金を値引く仕組みです。法改正により、船会社に対して、このサービスコントラクトが義務付けられて、ますます各荷主に対する海上運賃の自由度が高まってしまったのです。

3.コンテナ船の供給過多と大型化

造船技術の韓国や中国への移転も理由の一つです。もともと、造船といえば日本でした。しかし、コスト削減などを追い求めて韓国や中国などで生産するようになり、安いコンテナ船が出回りようになりました。安いだけではなく、コンテナ船の大型化も一気に進みました。

2019年現在、世界最大のコンテナ船は、一度に20000TEUものコンテナを運べます。安いコンテナ船が流通、さらに、それらが急速に大型化したため、コンテナスペース供給過多となり、これがコンテナ料金の下落につながったと言われています。

コンテナ料金

図:最適物流の科学 著者:菅 哲賢氏

4.経済的要因

2008年ころに発生したリーマンショック、中国経済の失速、米中貿易戦争など、貿易取引は、世界の経済情勢や金融情勢に大きく影響されます。これらの経済的な要因も、コンテナ料金を引き下げたにつながっています。

以上、4つの影響により、コンテナ輸送の「行き過ぎた競争」が行われて、大手船会社が破綻するほどの危機的な状況にあります。今後とも、この流れは続くと予想されているため、各荷主の方は「船会社が倒産したときの影響を少しでも小さくする努力」が必要です。

参考書籍:船会社の経営破綻と実務対応 著者:佐藤達朗氏、雨宮正啓氏

倒産のタイミング3選

船会社の倒産を細かく見てみましょう!倒産といってもいくつかのパターンがあります。主な物は、次の3つです。この内、最も問題になるのが「3番の航海途上での倒産」です。

  1. 本船は輸出港に停泊中。すでに船積みを終えている。
  2. 本船は出港、輸入地に到着。さらに荷揚げ済み
  3. 航海の途上で倒産

 
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1.輸出地で倒産

輸出地に停泊している状況での倒産には、輸出者は、船会社から貨物を取り返し、他の船に詰め替えることで対処します。船会社の破産時、インコタームズ上の「危険負担」の範囲にいるときは、あなたがフォワーダーや船会社と連絡を取り合い対処します。

2.本船は出港、輸入地に到着。さらに荷揚げ済み

コンテナ船は、輸入地に到着済み。さらに、輸入港のコンテナターミナルに荷揚げされているときは、運賃の支払い状況により異なります。もし、海上運賃を「コレクト(輸入地払い)」にしているときは、海上運賃とその他の関連費用を支払うことで貨物を引き取れます。

一方、運賃が「プリペイド」の場合は、船会社に輸送費を支払っているため、すぐに貨物を引き取れるかと思いがちです。しかし、すでに船会社が破産しているため、支払いの確認ができず、結果として再度、運賃を支払わされる可能性が高いです。この場合は、税関とも相談をして、輸入申告価格の評価アップの対象にされないようにします。

3.航海の途上で倒産

三つめは、本船が航海上で破産することです。これが韓進海運の破産です。このとき、世界中にある韓進船は、航海上に留め置かれました。いわゆる入港拒否です。日本でも東京や名古屋港などで同様の措置がとられました。

この場合、B/Lの約款に基づき運送契約は、強制的に解除されます。つまり、留め置かれている本船に積み込まれている貨物は、すべて各荷主の責任と費用負担により、陸揚げする必要がでてきます。しかも、陸揚げに伴う費用は、貨物海上保険の免責事項に指定されている点にも注意が必要です。

  • 航海上で船会社が倒産すると、運送契約が解除される。
  • 運送契約解除による回復費用はすべて荷主の負担
  • 倒産による経費負担は、海上保険の適用対象外

船会社の倒産とインコタームズの関係

船会社の倒産とインコタームズの関係は次の通りです。

  1. ”こと”が発生したときに、誰に連絡をする?
  2. 海上保険の支払いは受けられるのか?
  3. 誰に運送責任があるのか?

1.”こと”が発生したときに、誰に連絡をする?

船会社が倒産したときに、誰に、何を伝えればいいのか?を把握しておきましょう。関係するのは、売り手、買い手、船会社、フォワーダーと、買い手の先にある業者です。特に買い手の先にいる業者は、納期遅れにより多大な迷惑をかけるため、逐一、細かい状況報告した方が良いです。

2.海上保険の支払いは受けられる?

万が一、船会社が倒産したときに、その損失は、海上保険で賄えるのか? 賄えるときは、どの範囲まで可能なのか? を調べておきます。 2009年改訂協会約款のICC(A)を付保している場合は、船会社の倒産による損害の補償として海上保険を適用できると解釈されています。ただし、海運会社の「倒産情報を知っていた場合」は、補償の対象外です。

3.揚げ地までの運送責任は、誰が負うの?

船会社が倒産したときの責任者は誰ですか? 船会社でしょうか? それとも売り手でしょうか? これは適用するインコタームズと輸送契約の相手によって変わります。(フォワーダーなど)

船会社が倒産したときの運送責任は、船会社自体にあります。しかし、B/Lの約款には、経営破綻とともに「運送契約を解除する」旨の記載があるため、船会社に責任を追及する権利はありません。そのため、船会社が倒産したときの運送責任は、売り手、買い手または、フォワーダーにあります。三者の内、いずれが負担者になるのか?は、インコタームズで決まります。

3-1.フォワーダーを通して運送契約をしているとき

この場合は、FCR(運送契約)によって、フォワーダーが揚げ地までの輸送責任を負っています。そのため、売り手や買い手が何かをする必要はありません。

3-2.直接契約をしているとき

船会社と直接契約をしているときは、売り手と買い手のインコタームズによります。それぞれのインコタームズと危険負担の関係は、次の通りです。この中のCIFは、売り手が輸出国から輸入国までの海上運賃と保険料を支払う条件です。しかし、危険負担の分岐点は、輸出国側の本船甲板にあるため、航海上のアクシデントは買い手が負います。

上記の事実をふまえて、採用するインコタームズを決めましょう!

インコタームズ売り手/買い手
EXW買い手
FCA買い手
CPT買い手
CIP買い手
DAP売り手
DDP売り手
FAS買い手
FOB買い手
CFR買い手
CIF買い手

船会社の倒産に巻き込まれないためには?

以上のことをふまえて、各荷主は、どのような点を気を付けるべきなのでしょうか?

  1. 船会社の財務情報をチェック
  2. 財務状態が健全なフォワーダーを間に入れる。

1.船会社の財務情報をチェック

大手船会社は、いわゆる「IR情報」を公開しています。ここで公開されているバランスシートなどから、経営状態の確認も重要です。特に自己資本比率やコンテナ部門における採算状況なが重要です。もし、自社に財務分析ができる人がいなければ、クラウドワークスなどを使い、外部の専門家に依頼するのも有効です。

参考書籍:Zスコア 最適物流の科学/著者:菅哲賢氏

2.財務状態が健全なフォワーダーを間に入れる。

どちらかというと、1と2は、消極的な対策です。3番のフォワーダーの活用こそが最も有効な方法です。フォワーダーは、船会社からスペースを買い取り、荷主へ再販売します。これにより、各荷主は、フォワーダーを通して、船会社のスペースを確保します。

一見すると、フォワーダーを挟むだけ料金が高くなるかと思いますが、これは必ずしも合っているとは言えません。個人で旅行を手配するより、ツアーを申し込んだ方が安いように、船の予約も、フォワーダーを通した方がメリットを受けられることが多いです。

しかし、この話を聞いたとしても……

  • 「船の料金は、フォワーダーを通してもそこまでかわらないことは分かった」
  • 「では、なぜ、フォワーダーを通す必要があるんだ?」

と、考える方も多いかと思います。それに対する明確な答えは、フォワーダーとの「運送契約」にあります。荷主は、フォワーダーと運送契約をすると、フォワーダーの責任と費用において「揚げ地まで輸送」してもらう権利が生まれます。フォワーダーが揚げ地までの輸送義務を負うのです。

つまり、この運送義務があることにより、万が一、航海上で船会社が倒産したとしても、フォワーダーが自らの責任と費用をもって、揚げ地港までの輸送をしてくれるのです。今回の韓国船の破綻時も、このフォワーダーとの契約が明暗を分けました。

直接、船会社と契約していた荷主は….

  • 自分で船を探さなければならない。
  • でも、全く船のスペースがない。
  • しかもすべての費用を自ら負担し、補償を受けられない。

との最悪な状況に置かれていた一方、フォワーダーと契約をしていた荷主は…..

納品先への納期遅れの連絡

のみをするだけで、その他のすべての手続きをフォワーダーが行ってくれました。つまり、当初の予定よりも大幅に納期が遅れた物、当初の運送費以上の費用(リカバリー費用等)は一切、支払う必要なく、予定通り、貨物を引き取れたのです。

これがフォワーダーと運送契約をするときの最大のメリットです。もちろん、フォワーダー自体の財務体質が強固であることや、確かな実績を持ち合わせていることが大前提です。

まとめ

  • 独占禁止法の廃止や縮小による自由競争で船会社は疲弊している。
  • 業界の大手海運会社が事業統合している本当の意味をとらえましょう!
  • 各荷主は、船会社が倒産することを前提とてリスク管理をするべき
  • 船会社は、航海途上で倒産すると、運送契約を強制的に解除する。もちろん、何の補償もなし
  • 運送契約解除後の対処は、インコタームズに基づき決まる。
  • フォワーダーを通して契約しているときは、フォワーダーが揚げ地まで輸送をしてくれる。
  • あらゆるリスクを想定した対処方法を考えておくことが重要です。

 

海上輸送/フォワーダーを選ぶときの5つのポイント(注意点)

船の手配 独立系NVOCC(フォワーダー)を選ぶべき理由

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