船会社の倒産に備える! インコタームズとフォワーダー

国際輸送
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「世界4位の船会社だから安心だ!」こんな常識は、はるか昔のお話です。「韓進海運」の経営破綻の事実からもわかる通り、コンテナ船業界は、非常に厳しい経営状況です。まさに、いつ、どこの国のコンテナ船が破綻してもおかしくない。と言っても過言ではありません。

では、私たち荷主は何をすべきなのでしょうか? まずは、今すぐ「大きな船会社だから安心である」との常識を捨てることです。さらに、今回の記事でお伝えする「もし、船会社が倒産したらどうなるのか?」を具体的にイメージして、今すぐ、できる対応策を実行することです。

船会社が倒産したときの貨物の取り扱い

貨物を輸送している途中に船会社が倒産した場合は、誰が費用と危険を負担するのでしょうか?

船会社のクライシス」でもお伝えした通り、世界ランク七位のメガキャリアでも、収益性の悪化により、経営破綻に追い込まれる時代です。決して非現実的なお話ではありません。

例えば、2016年の韓進海運倒産事件が有名です。

2016年の韓進海運倒産事件とは?

当時、倒産した韓進船は、港への荷役料が払える見込みがないとの理由から、世界中の港から「入港拒否」を受けて洋上で待機させられました。もちろん、日本の港も入港拒否をしたため、韓進海運に貨物を乗せている荷主は、多大な影響を受けました。

結局、韓進と直接契約をしている荷主は、自社の費用と責任で、代替え輸送を確保。フォワーダーをに依頼をしていた方は、フォワーダーの責任と費用により、予定地まで貨物が輸送されたのでした。この一件から学べることは、次の2つです。

  1. 大きな船会社も安全ではないことを理解すること
  2. 輸送途上に倒産した場合は、どのような責任と費用負担があるのかを理解すること

輸送途中の経営破綻の件を考えると、船会社やフォワーダーとの付き合い方、インコタームズの理解の重要さを感じられる方も多いかと思います。

では、今一度、深く理解するために、インコタームズと輸送責任を確認していきましょう!

インコタームズと責任

インコタームズとは、輸送上における危険負担と費用負担の分岐点を明確にした物です。危険負担とは、輸送上のトラブルにより、貨物にダメージが発生したときの責任範囲、費用負担とは、輸送にかかる費用の支払い範囲を指します。

「輸出はFOB」、「輸入はCIFである」と覚えている方が多いです。しかし、本来は、危険負担と費用負担の分岐点を理解した上で、取引に応じた最適な条件を選ぶべきです。この危険負担の分岐点を理解せず、昔ながらの「慣習」でインコタームズを決めていると、船会社が破綻したときなどに、大きな痛手を負います。

倒産のタイミング3選

では「船会社の倒産」を細かく見てみましょう!倒産といってもいくつかのパターンがあります。主な物は、次の3つです。この内、最も問題になるのが「3番の航海途上での倒産」です。

  1. 本船は輸出港に停泊中。すでに船積みを終えている。
  2. 本船は出港、輸入地に到着。さらに荷揚げ済み
  3. 航海の途上で倒産

1.輸出地で倒産

輸出地に停泊している状況での倒産には、輸出者は、船会社から貨物を取り返し、他の船に詰め替えることで対処します。船会社の破産時、インコタームズ上の「危険負担」の範囲にいるときは、あなたがフォワーダーや船会社と連絡を取り合い対処します。

2.本船は出港、輸入地に到着。さらに荷揚げ済み

コンテナ船は、輸入地に到着済み。さらに、輸入港のコンテナターミナルに荷揚げされているときは、運賃の支払い状況により異なります。もし、海上運賃を「コレクト(輸入地払い)」にしているときは、海上運賃とその他の関連費用を支払うことで貨物を引き取れます。

一方、運賃が「プリペイド」の場合は、船会社に輸送費を支払っているため、すぐに貨物を引き取れるかと思いがちです。しかし、すでに船会社が破産しているため、支払いの確認ができず、結果として再度、運賃を支払わされる可能性が高いです。この場合は、税関とも相談をして、輸入申告価格の評価アップの対象にされないようにします。

3.航海の途上で倒産

三つめは、本船が航海上で破産することです。これが韓進海運の破産です。このとき、世界中にある韓進船は、航海上に留め置かれました。いわゆる入港拒否です。日本でも東京や名古屋港などで同様の措置がとられました。

この場合、B/Lの約款に基づき運送契約は、強制的に解除されます。つまり、留め置かれている本船に積み込まれている貨物は、すべて各荷主の責任と費用負担により、陸揚げする必要がでてきます。しかも、陸揚げに伴う費用は、貨物海上保険の免責事項に指定されている点にも注意が必要です。

  • 航海上で船会社が倒産すると、運送契約が解除される。
  • 運送契約解除による回復費用はすべて荷主の負担
  • 倒産による経費負担は、海上保険の適用対象外

船会社の倒産とインコタームズの関係

次に船会社の倒産とインコタームズの関係を確認していきましょう!主な観点は、次の3つです。

  1. ”こと”が発生したときに、誰に連絡をする?
  2. 海上保険の支払いは受けられるのか?
  3. 誰に運送責任があるのか?生じる損失は、どちらが負担するのか?

1.”こと”が発生したときに、誰に連絡をする?

船会社が倒産したときに、誰に、何を伝えればいいのか?を把握しておきましょう。関係するのは、売り手、買い手、船会社、フォワーダーと、買い手の先にある業者です。特に買い手の先にいる業者は、納期遅れにより多大な迷惑をかけるため、逐一、細かい状況報告した方が良いです。

2.海上保険の支払いは受けられる?

万が一、船会社が倒産したときに、その損失は、海上保険で賄えるのか? 賄えるときは、どの範囲まで可能なのか? を調べておきます。 2009年改訂協会約款のICC(A)を付保している場合は、船会社の倒産による損害の補償として海上保険を適用できると解釈されています。ただし、海運会社の「倒産情報を知っていた場合」は、補償の対象外です。

3.揚げ地までの運送責任は、誰が負うの?

船会社が倒産したときの責任者は誰ですか? 船会社でしょうか? それとも売り手でしょうか? これは適用するインコタームズと輸送契約の相手によって変わります。(フォワーダーなど)

船会社が倒産したときの運送責任は、船会社自体にあります。しかし、B/Lの約款には、経営破綻とともに「運送契約を解除する」旨の記載があるため、船会社に責任を追及する権利はありません。そのため、船会社が倒産したときの運送責任は、売り手、買い手または、フォワーダーにあります。三者の内、いずれが負担者になるのか?は、インコタームズで決まります。

3-1.フォワーダーを通して運送契約をしているとき

この場合は、FCR(運送契約)によって、フォワーダーが揚げ地までの輸送責任を負っています。そのため、売り手や買い手が何かをする必要はありません。

3-2.直接契約をしているとき

船会社と直接契約をしているときは、売り手と買い手のインコタームズによります。それぞれのインコタームズと危険負担の関係は、次の通りです。この中のCIFは、売り手が輸出国から輸入国までの海上運賃と保険料を支払う条件です。しかし、危険負担の分岐点は、輸出国側の本船甲板にあるため、航海上のアクシデントは買い手が負います。

上記の事実をふまえて、採用するインコタームズを決めましょう!

インコタームズ売り手/買い手
EXW買い手
FCA買い手
CPT買い手
CIP買い手
DAP売り手
DDP売り手
FAS買い手
FOB買い手
CFR買い手
CIF買い手

船会社の倒産に巻き込まれないためには?

以上のことをふまえて、各荷主は、どのような点を気を付けるべきなのでしょうか?

  1. 大手船会社は安全であるとの思い込みを捨てる。
  2. 船会社の財務情報をチェック
  3. 財務状態が健全なフォワーダーを間に入れる。

1.大手船会社は安全であるとの思い込みを捨てる。

過去、大手の船会社が安定していたのは、世界的な価格協定や独占体制によるものです。会社自体が優れていたのではなく、他社が入り込めない環境があったため、安定的な経営ができていたのです。

しかし、2019年現在は、この壁もほとんどなくなってしまい、ほぼ自由競争です。コンテナ船は、どんどんと大型化していき、荷主の獲得競争は激しさを増すばかりです。さらに、リーマンショックや中国経済の落ち込みによる影響などもあり、船会社の経営環境は悪化の一途です。この事実を踏まえると「大手船会社は安全である」との思い込みはリスクだとわかります。

2.船会社の財務情報をチェック

大手船会社は、いわゆる「IR情報」を公開しています。ここで公開されているバランスシートなどから、経営状態の確認も重要です。特に自己資本比率やコンテナ部門における採算状況なが重要です。もし、自社に財務分析ができる人がいなければ、クラウドワークスなどを使い、外部の専門家に依頼するのも有効です。

参考書籍:Zスコア 最適物流の科学/著者:菅哲賢氏

3.財務状態が健全なフォワーダーを間に入れる。

どちらかというと、1と2は、消極的な対策です。3番のフォワーダーの活用こそが最も有効な方法です。フォワーダーは、船会社からスペースを買い取り、荷主へ再販売します。これにより、各荷主は、フォワーダーを通して、船会社のスペースを確保します。

一見すると、フォワーダーを挟むだけ料金が高くなるかと思いますが、これは必ずしも合っているとは言えません。個人で旅行を手配するより、ツアーを申し込んだ方が安いように、船の予約も、フォワーダーを通した方がメリットを受けられることが多いです。

しかし、この話を聞いたとしても……

「船の料金は、フォワーダーを通してもそこまでかわらないことは分かった」

「では、なぜ、フォワーダーを通す必要があるんだ?」

と、考える方も多いかと思います。それに対する明確な答えは、フォワーダーとの「運送契約」にあります。荷主は、フォワーダーと運送契約をすると、フォワーダーの責任と費用において「揚げ地まで輸送」してもらう権利が生まれます。フォワーダーが揚げ地までの輸送義務を負うです。

つまり、この運送義務があることにより、万が一、航海上で船会社が倒産したとしても、フォワーダーが自らの責任と費用をもって、揚げ地港までの輸送をしてくれるのです。今回の韓国船の破綻時も、このフォワーダーとの契約が明暗を分けました。

直接、船会社と契約していた荷主は….

  • 自分で船を探さなければならない。
  • でも、全く船のスペースがない。
  • しかもすべての費用を自ら負担し、補償を受けられない。

との最悪な状況に置かれていた一方、フォワーダーと契約をしていた荷主は…..

  • 納品先への納期遅れの連絡

のみをするだけで、その他のすべての手続きをフォワーダーが行ってくれました。つまり、当初の予定よりも大幅に納期が遅れた物、当初の運送費以上の費用(リカバリー費用等)は一切、支払う必要なく、予定通り、貨物を引き取れたのです。

これがフォワーダーと運送契約をするときの最大のメリットです。もちろん、フォワーダー自体の財務体質が強固であることや、確かな実績を持ち合わせていることが大前提です。

まとめ

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