海外の物を輸入するときは、税関の知識、船の手配、交渉方法など、様々な知識が必要です。多くの知識が必要な為、貿易を始めたくても何から始めたらいいのかわからない方も多いと思います。そこで、この記事では、知識ゼロの人でもわかるように、輸入業務を「貨物と書類」の2つの観点から説明していきます。
貿易経験ゼロからの輸入業務
輸入業務とは、コンテナ(FCL)やLCL(混載)等、一定規模の輸入を指します。アリエクスプレス、海外アマゾンなど、小口輸入に関することは「小規模輸入ビジネス」の記事を参考にしてください。
輸入業務・2つの大きな観点
輸入業務は、輸出国側と輸入国側の書類と貨物の流れの2つが基本です。また、貨物の流れには、輸送形態(FCLやLCLなど)による流れの違いがあります。
書類の流れ | 書類の流れを把握すること(インボイス、パッキング、B/L、アライバルなど) |
貨物の流れ | 貨物の流を把握すること(FCLとLCL) |
また、一連の輸入業務には、以下の機関とやり取りをする可能性があります。
- 通関業者 →日本の税関に対して輸出入の申告を代行する会社
- フォワーダー →国際間の輸送を手配する会社・最近は通関業兼フォワーダーが多い。
- 税関 →日本に輸入される産品の監視をする。
- 他法令関係機関 →食品、植物など、特定の産品を輸入するときに関係する所
輸入業務の流れ
輸入業務の流れを貨物と書類の2つから確認していきます。
- 書類の流れ1(輸出国側)
- 書類の流れ2(輸入国側)
- 貨物の流れ1(輸出国側)
- 貨物の流れ2(輸入国側)
書類の流れ1(輸出国側)
もし、輸入者の立場なら、輸出国側の書類の動きは参考程度に覚えておきましょう。一般的には、輸出国側で次の準備が書類が用意されます。
- 輸入者とインコタームズを決める。
- 貨物の配送手配(梱包手配)をする。
- 輸出国側で通関をする。
- 輸出国側で船荷証券を入手する(サレンダーB/L)
- 手配完了後、貿易書類を輸入者に送付する。(シッピングアドバイス)
上記が輸出国側での手続きや書類の一覧です。なお、インボイスとパッキングリストは、輸出者自身が作成。B/Lは(船荷証券)船会社またはフォワーダーが発行。特定原産地証明書は、輸出国の指定発給機関が作成します。これらの書類をそろえて、輸入者に送付します。(輸入側の通関準備のため、先行してFAX、Eメールなどで送付するのが一般的)
書類の流れ2(輸入国側)
輸出者は「インボイスなどの輸入書類一式」を電子的に送付します。原本は、国際スピード郵便などで発送(この中に、B/Lの原本や特定原産地証明書の原本を送付)
輸入書類の一式を通関業者へ渡す。
送付されてきた書類の一式(電子データ)は、取引している通関業者に送付して、輸入申告のための書類準備に入ってもらいます。通関業者に書類を送付するときは、輸出者から送られてきた書類に加えて、輸入書類の説明図、カタログなどを一緒に添えて送ることが多いです。要は、輸入申告する貨物の内容を理解できる補助書類を合わせて送ります。
*例:服を輸入するときは、その服の内容(材質や混合比など)を確認できる資料
添付する書類例:
本船が入港!ETA
船が入港する日をETAと言います。ETAは、入港間際になると、船会社又はフォワーダーから通知されます。この通知書類をアライバルノーティスと言います。アライバルを受け取ったら、通関業者に渡し、輸入申告価格に加えてもらいます。(課税価格の決定原則)これで、輸入申告のための書類は、すべて準備完了です。あとは、予備申告に入ってもらい、搬入が上がり次第、輸入許可がもらえます。
この申告書類の作成と同時にディスパッチ(D/O)をピックアップする必要があります。通関業者に依頼しているときは、このディスパッチ(D/O)の用意も含まれています。
輸入通関(輸入申告)
通関業者は、全ての書類が整い次第、専用システムのナックスを使い、税関に対して輸入申告をします。
「輸入者●●は、●●国から○○を○○円分輸入します!HSコードは○○。関税率は○○、よって関税と消費税は、●●です!関税と消費税を納めたので、この貨物を引き取るための輸入許可をください」等の内容をシステムを使い行います。
輸入申告の結果、ナックス(システム)は、自動判定で申告区分(あなたの申告内容に対する税関の取り扱いレベル)を示します。
- 区分1は簡易審査扱い=申告した瞬間に税関審査が終了
- 区分2は、通常審査扱い=税関職員による書類審査
- 区分3は、検査扱い=輸入検査をして実物を確認
区分は、輸入者符号に紐づけられている輸入実績によります。要は、長い期間輸入している。現物と申告内容が正しい輸入者などの実績を積むほど審査区分が優遇されていきます。
初めて輸入する人、初めて輸入する品目などは、区分2や3によって十分に書類のチェックがされます。もし、輸入検査になった場合は、自らの費用で税関検査を受けます。
検査の結果、特に申告内容と相違がなければ、税関検査は終了。搬入が上がり次第、輸入許可がでます。もし、税関検査のときに、申告していない貨物など発見されたり、申告金額よりも高い価格であったりすることが判明すると、内容によっては、税関よりペナルティが課せられます。
ペナルティ例:過少申告加算税、無申告加算税など
また、ナックスは、輸入申告価格にレンジ幅を定めて「異常値」を検出します。日々、日本全国で申告されれている価格情報を収集しているため、相場と比べて著しく乖離している価格は、異常値として検知できます。つまり、これは、本来の価格よりも著しく低い価格で申告する「アンダーバリュー問題」に関係します。
例えば「通常は、○○国から輸入される○○は、一つ10000円ほどする。しかし、この輸入者からの申告によると、一つ1000円と申告されている。これは、アンダーバリューの可能性がある」とシステムが判断するわけです。正しい価格での申告が重要です。
以上が輸入業務における「書類の流れ」です。なお、輸入の中で複雑な手続きは「L/C決済」です。関連記事:【図解】初心者向けL/C(信用状)の流れ
- 輸入者は、自分で輸入申告をする必要はなし。すべて通関業者に丸投げできます。
- 輸出者から受け取った輸入書類(FAXでOK)を通関業者へ再ファックス
- 特定原産地証明書を使うとき、B/L原本が必要なときは、通関業者へ郵送
- 通関業者は、アライバルノーティスに記載のチャージ金の立て替え、BL/原本の差し入れをしてD/Oをピックアップ
- 輸入許可後、輸入許可書と、D/Oを港に差し入れて、商品を受け取る
貨物の流れ1(輸出国側)
ここから先は、貨物の流れです。輸出国側における本船船積みまでの流れは次の通りです。
- 輸出者が自社の工場などへ空コンテナを付ける。(FCLの場合)
- 空コンテナの中に貨物を積める
- 荷物が入っている貨物を港へ輸送
- 輸出国側の税関に輸出申告
- 輸出許可を得て、本船に載せる
- B/Lを受け取り、シッピングアドバイスを通知
- 輸入書類を輸入者に電子的に送付
貨物の流れ2(輸入国側)
日本側の貨物の流れは、FCLとLCLでことなります。
FCLとは、コンテナ単位で輸送すること。LCLは、一つのコンテナの中に複数の荷主の貨物を詰め込むことです。(混載) 以降は、このFCLとLCLをケース分けして説明します。
- FCL(コンテナ)輸送の流れ
- LCL(コンテナ未満)輸送の流れ
FCLの流れ
コンテナが到着すると、専用のクレーンによって、コンテナターミナルに降ろされます。これを「搬入があがる」と言います。
FCLの場合は、搬入が「入港日の翌日」です。つまり、事前に予備申告などで税関審査を終わらせておけば、最短、入港日の翌日に港から引き取れます。もし、個別搬入サービスを利用しているときは、入港日に搬入が上がり次第、引き取る「当日ピック」もできます。
ただし、コンテナ輸送をするときは、昨今のドレー不足についても十分に考えておく必要があります。ドライバーの不足により、慢性的なドレー不足が続いています。昨今は、このドレー不足を見越して、最初に日本側のドレーを予約した後、輸出国側で生産する企業もあるくらい厳しい状況です。もし、輸入ビジネスを考えるときは、日本側の国内配送の事情も考えておきましょう!
- 本船が入港される。
- ガントリークレーンなどで搬入作業が行われる。
- 通常、入港日の翌日に搬入が上がる。
- あらかじめドレーを手配しておく。
- 税関の許可と搬入が上がり次第、貨物をピックアップする。
LCL貨物の流れ
次にコンテナ未満(LCL)で輸入する場合の流れです。基本的にコンテナを港に降ろすまでは、FCLと同じです。コンテナ未満の場合は、そのあとに「デバン作業」があります。
デバンとは?
LCL(コンテナ未満の荷物)は、複数の荷主(荷物)を一つのコンテナにまとめたものです。これにより貨物の輸送料を削減できます。一つのコンテナにまとめていることからもわかる通り、日本についたらコンテナから荷主ごとに貨物を取り出します。この作業を「デバン」と言います。LCL貨物の搬入が上がるタイミングは、このデバン後です。したがって、FCL貨物よりも搬入するまでに時間がかかります。LCL貨物の搬入日は、入港日から考えて三日目だと考えて下さい。
LCL貨物の保管先は、港近くにある倉庫
LCLは、港近くにある倉庫(CFS)に保管されています。輸入者は、輸入許可書とD/Oを取得後、トラックをチャーターしたり「混載便」を利用したりして貨物を引き取ります。このとき、通関業者を利用しているときは、この配送の手配を含めて代行してくれます。
ただし、混載便料金は、通関業者に上乗せされる可能性が高いことにも留意します。輸入の経験が上がり、取引実績がある程度まで出来上がった段階で、通関業者に値下げを要求しましょう。
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まとめ
今回、お伝えした内容は、通関業者に依頼すれば、丸投げできる内容です。業者に依頼をすれば、手数料が必要です。しかし、輸入を行うときの面倒な作業や書類作成の業務を一瞬にして解決できます。輸入ビジネスで大切なことは「輸入した商品を求めている所に送ること」です。もっと言うと「輸入した商品によってお客さんの悩みを解決すること」です。
通関業者に頼めば、通関手数料、取扱手数料、配送料など必要です。しかし、そのような費用を最初から「輸入原価」「商品原価」として考えられればいいことです。もちろん、値段的に厳しいこともあるでしょう。その場合は、この記事を参考にしたり、税関など相談をしたりしながら、輸入手続きを行ってみてください。
今回、ご紹介した輸入手続きのさらに詳しい内容は「輸入書類は、どんな物が必要なの?」でご紹介しています。ぜひ、そちらも合わせてご覧ください。
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