経済協定(EPA)による関税の免税や減税を受けるには特定原産地証明書(特定原産地証明書)が必要です。この書類は、輸出国の原産品に該当するかを証明するものです。この証明書があることにより、輸送先の国、つまり輸入国側において免税などの優遇措置を受けることができます。特定原産地証明書は、関税に関する優遇措置を受けるにあたり、とても重要な書類ということになります。
日本の場合、特定原産地証明書の発行は、日本商工会議所が一元的に行っています。そのため、EPAによる有利な貿易を行いたい場合は、日本商工会議で特定原産地証明書を受けるための手続き方法にそって行う必要があります。この記事では、日本商工会議所を使った特定原産地証明書の取得までの流れについて順番に説明をしていきます。
EPAを利用する上で必要不可欠!特定原産地証明書を受け取るまでの流れ
目次
日本商工会議所における特定原産地証明書の流れは以下の三つとなります。しかし、この前段階として「確認しなければならないポイント」がいくつか存在します。
1.サイナー(企業)登録、2.原産品判定依頼 3.発給手続き
日本商工会議所に手続きをする前に確認するべき三つのポイント
1.日本とEPAを結んでいる国であるのか。
2016年現在、日本とEPA(経済協定)を結んでいる国は15カ国となります。これ以外の国が輸出先である場合は、そもそもとしてEPAを適用した有利な貿易を行うことができません。もし、以下の国々の中に含まれていない場合は、一般特恵関税(いっぱんとっけいかんぜい)、特別特恵関税(とくべつとっけいかんぜい)などを適用できないかを確認するようにしましょう。
関連記事:初めての特恵関税(関税を安くする仕組み)
*EPAを結んでいる国々です。
シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、アセアン、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル
2.EPAによる減税や免税の対象になっている商品なのか。
1番の問題が解決したとしても安心はできません。実はEPAには関税の免税対象品目とそうでない物が細かく規定されています。
貴社が扱っている商品が免税や減税の対象品目ではない可能性があります。どの商品が適用されるのかどうかは、すべて各協定の中で説明されている「譲許表(じょうきょひょう)」で確認ができます。譲許表には相手国側’(輸出時に確認)と日本側(輸入時に確認)の二つが存在するためご注意ください。
3.原産品の規定を満たしているのか
EPAの重要なポイントに「商品がどこで製造されたのか」「何をもって原産品とするのか」があります。これを明確にしたのが「原産品ルール」です。EPAによる有利な貿易を行うためには、この原産品ルールをしっかりと守ることが大切です。
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例えば、アメリカからオレンジを輸入した後に、日本の工場でジュースにしたものは「日本の原産品になるのか?」ということです。
日本で製造されているため、無条件に日本産になる気がします。しかし、元々のオレンジはアメリカ産であるため、ここで「日本産なのか、アメリカ産なのか」の判断が難しくなります。これは、どのような基準をもって日本産にするのかを明確にしていないと起きる問題です。これを定めたのが「原産品ルール」です。ちなみに、この場合のオレンジジュースは、日本の原産品扱いになります。(CTCルールを適用)
このような事実をふまえると、外国の原材料を使って日本で製造された商品であっても「外国産品」の扱いを受けることもあります。仮に外国品になってしまうと、EPAを適用した有利な貿易を行うことはできません。「商品が原産品の規定を満たしているのかが」とても重要になるのです。
以上の三つが事前準備編となります。この準備が終わり次第、日本商工会議所へ申し込みをします。
関連記事:【HUNADEマニュアル】初心者向けEPA貿易スタートガイド
日本商工会議所での手続きの流れ
日本商工会議所では、大きく分けて以下の三つのステップによって特定原産地証明書を取得できます。
1.企業登録編
まずは日本商工会議所へ企業の登録をします。貴社がどのような会社などであるのかを書面などを使って証明します。個人事業主、個人、法人などを問わず誰でも登録ができます。
詳細記事:【企業・サイナー登録編】日本商工会議所における特定原産地証明書
2. 原産品判定依頼編
輸出しようとしている商品が日本の原産品であることを証明するステップです。手続き等はすべて企業登録完了後に使うことができる「発給システム」から行います。日本の原産品であることを証明する三つのルールのいずれかを適用して申請を行います。どのルールを適用するにしてもその事実を証明する書類や計算シートを用意しなければなりません。
入力作業は、すべて自己責任です。行おうと思えば、虚偽の申請をすることも可能です。しかし、すべての内容は法律により縛りを受けるため、軽はずみな行動は避けるべきです。虚偽の申告は重い罰金刑を課せられるだけではなく、輸出先の国、輸出先の相手からの信用を落とすことになります。
詳細記事:【原産品判定編】特定原産地証明書の発給にチャレンジ!企業登録後からの手順
3. 発給手続き編
無事に原産品判定の承認を得ることができたら、いよいよ特定原産地証明書の発行をお願いするステップです。少し混乱しがちですが、2番で行った原産品判定を受けた商品情報を使って、3番で特定原産地証明書を発行するということです。
詳細記事:特定原産地証明書の発給 原産品判定承認からの手続き
まとめ
特定原産地証明書を発行するまでの詳しいステップはEPA利用ガイド輸出編 手順1 輸出先の国とEPAを締結しているのかを確認します。などの記事でも確認ができます。ぜひ、ご覧下さい。

