輸送手段は「品目」に合わせて選ぶ時代
輸送費や納期だけで輸送方法を選んでいませんか?
商品の形・重量・単価・壊れやすさ・緊急性などによって、最適な輸送手段は大きく変わります。とくに中国から日本への輸送では、LCL(混載便)、FCL(コンテナ単位)、航空便、フェリーなど、それぞれに向き不向きがあります。品目に合わない輸送方法を選ぶと、破損・遅延・過剰コストの原因になります。
商品に合った方法を選べば、コストを抑えられるだけでなく、トラブルを減らし、納期も安定します。ここでは代表的な3つの品目について、実務に即した輸送手段の選び方をご紹介します。
アパレル製品|軽くてかさばる。納期とコストのバランスがカギ
洋服などのアパレル製品は、軽量な一方で体積が大きく、単価も比較的低めです。
最適手段:LCL(混載)、フェリー、FCL(大量時)
- LCLは柔軟性があり、少量から対応可能。ただし混載による圧縮リスクがあるため、梱包設計が重要
- フェリー便は納期に余裕があればコスト面で有利
- 航空便は早いが、単価が低いため利益が出にくいケースが多い
注意点:納期がシビアな場合は、混載便のスケジュールに要注意(便が揃わず遅れる)

中国から日本にアパレルを送る場合、LCL(混載)やフェリー輸送を使えば、1㎥あたり約2,500元から輸送できることがあります。大量に送るときはFCL(コンテナ単位)の方がコストを抑えられますが、少量だと割高になることも。航空便は最速1~3日で届きますが、費用は船便の2〜5倍ほどかかるため、急ぎの荷物や高価格帯の商品に限って使われる傾向です。
家電製品|高額・壊れやすい・重量物。FCLが基本
家電は高価で壊れやすく、特に湿気や衝撃に弱い性質があります。
最適手段:FCL(専用コンテナ)、航空便(小型・高価格品)
- 他社貨物と混在しないFCLが最も安全
- 小型家電ならLCLも可能。防振・防湿対策が必須
- 航空便ではバッテリー等の危険品扱いに注意(SDS等の書類準備)
注意点:防湿剤・防錆加工・ダブル梱包など、輸送前の準備が品質維持に直結する

日本向けの家電輸送では、輸送中の湿気対策も重要です。デシカント(乾燥剤)封入や防湿袋、保冷機能付きコンテナの活用により、輸送品質を高める事例も増えています。
自動車部品|サイズ・重量で輸送方法が分かれる
自動車部品は、精密小物から長尺・重量物まで幅広いため、品目別に設計する必要があります。
最適手段:FCL(標準/特殊コンテナ)、航空便(小型部品)
- 高価・小型の部品は航空便
- 長尺部品や重量物はオープントップ・フラットラック等を検討
- 1台分まとめて輸送する場合はFCLが効率的
注意点:誤納・通関ミスを防ぐため、製品ラベルや品番表示を厳格に行うこと
特殊貨物(大型機械・建材等)|事前準備が命
通常のコンテナに収まらないサイズや重量の貨物は、特殊な輸送方法が必要です。
最適手段:オープントップ、フラットラック、バルク船、チャーター便
- 積載条件、現地積込設備(クレーン・フォークリフト)の有無を事前確認
- 国内納品先の受け入れ環境(搬入口や設置スペース)もチェックが必要
注意点:保険・通関書類・ラベリング・養生対策を事前に整えておくこと

特殊貨物を扱う場合、フォワーダーへの見積依頼時には、貨物の正確な寸法・重量・重心・積載方法(パレットor裸積み)・クレーン有無などを詳細に伝える必要があります。情報が不十分だと、見積の精度が著しく落ち、後のトラブルの原因にもなります。
輸送手段の比較表
輸送手段 | 向いている品目 | リードタイム | コスト感(目安) | 主なメリット | 注意点 |
LCL(混載) | アパレル、小型家電 | 7〜14日 | 1㎥あたり2,500元〜 | 少量・柔軟・安価 | 他社貨物との混載によるリスク |
FCL(専用) | 家電、大型部品 | 7〜14日 | 15〜20万円/本 | 品質管理・安定輸送 | 少量輸送には不向き |
航空便 | 緊急品・高価格・軽量品 | 1〜3日 | 船便の2〜5倍 | スピード最優先 | コスト高・重量制限 |
フェリー | 雑貨、アパレル | 2〜5日 | 航路による | コスト安・港間移動に強い | 航路限定・定期便が少ない |
特殊手配 | 長尺物、重量物 | 案件により調整 | 見積次第 | カスタマイズ可能 | 機材・保険・通関手続きが複雑 |
実務者が押さえるべきポイント
- 輸送手段の選定=「輸送手段×現地条件×自社都合」の最適設計
- どこで検品するか/どこで梱包するか/どこで保険をかけるか
- 特殊貨物なら、工場の積込設備や最終納品場所の受入体制を必ず確認
まとめ|品目と目的を正しく理解すれば最適解が見えてくる
輸送方法を決めるには、まず自社の荷物を正確に理解することが第一歩です。
「壊れやすい」「かさばる」「高価」「急ぎたい」──それぞれの特徴に応じて、最適な手段は異なります。だからこそ、“何を”“どう届けたいか”を起点に判断してください。
最適な輸送とは、安さや速さではなく「設計力」によって決まるのです。
次の記事「第5回|最適なフォワーダー選びの“正解”」
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