輸送の成否は「誰に頼むか」で決まる
中国からの輸送を成功させるカギは、コストや納期以上に「誰に依頼するか」にかかっています。フォワーダーの実力次第で、同じ条件でも輸送品質は大きく変わります。
にもかかわらず、「価格が安い」「以前使ったから」といった安易な基準だけで選ばれてしまうケースは少なくありません。しかし、フォワーダーの真の実力は価格表では見えてきません。
この記事では、中国輸送に特化した実務レベルの観点から、信頼できるフォワーダーを見極める3つの視点と、見積もり依頼時の要点について解説します。
1.現場主導の実務力
実務力とは、単なる通関・船の手配能力ではありません。中国側での輸出通関、CIQ検査、バン詰め、港湾とのブッキング調整、書類作成といった輸送の全工程を包括的に管理できる能力です。
例えば、「上海港が混雑しているから南通港へ迂回しよう」「納品先の敷地幅を考慮し、2トン車ではなく4トン車を手配する」といった、現場情報をもとに即応できる業者は極めて信頼性が高いといえます。
また、現地工場からの貨物引取りにおいては、
- 工場が出荷に不慣れ(特にEXW条件)
- 住所が不明確、電話応答がない
- 運転手が読み書きできず、場所特定に困難 といった中国特有のリスクがあるため、フォワーダーにローカル配車ネットワークと中国語対応スタッフが常駐しているかが鍵です。
高度なレベルのフォワーダー
高度なフォワーダーになると、特定の業界に精通しているところがあります。
たとえばアパレル業界においては、工場の繁忙期や縫製工程の遅延リスクを把握し、「この工場は生産遅延が出やすいので、別ルートを先に確保しておこう」など、生産背景に踏み込んだコントロールができる人もいます。
また、日本での販売開始を見据えて「店舗納品時の検品やタグ付けが必要なので、事前に上海で処理しておけば納品スピードが上がる」など、物流を“販売戦略の一部”として捉えて動ける業者は非常に貴重です。
フォワーダーで最も優れているのは、この高度レベルのフォワーダーです。製造現場の状況から、日本国内への販売経路までの全ての物流が滞りなく進むように手配できる人。一つの事象から、あらゆるパターンを考えて、第二、第三のバックアッププラン迄を考えられる人がいます。
製造する業界の深い知識×フォワーダー業の深い実務経験
例えば、中国からビール醸造機を輸入したいとしましょう。高度フォワーダーは「ビール醸造きを輸入したい」と伝えるだけで、中国側の手続き、国際輸送上の手続き、国内輸送や設置など、関連する全ての手続き、リスク情報を一瞬で判断できます。

この掛け算ができるフォワーダーこそ、最も貴重です。
2.複数手段の提案力
貨物の内容や納期、輸送予算によって、最適な手段は異なります。FCLかLCLか、航空便か海上便か、あるいは日中フェリーや混合輸送か──これらの選択肢を条件に応じて柔軟に提示できるかが重要です。
「安いからこれがベスト」という単一視点ではなく、「比較できる選択肢」を提示してくれる業者を選びましょう。
また、中国→日本間では港や空港によるリードタイムや混雑状況が大きく異なり、例えば「上海港は混載が混むため、寧波港経由の方が早い」などの知見を提供できるかが提案力の真価です。
3.リカバリー対応力
フォワーダーを選ぶ際に特に注意したいのが、「会社としての実績」だけでなく「担当者個人の実力」によって結果が大きく左右されるという点です。フォワーダーの中には、極めて優秀な担当者もいれば、知識や経験が浅く、定型処理しかできない担当者も存在します。
たとえば、同じ会社に依頼していても、担当者によってはトラブル発生時に即応できず納期遅延につながることもあります。一方で、業界構造や各国の税関事情に通じ、必要に応じて社内や海外ネットワークを巻き込んで動ける担当者であれば、安心して任せられます。
特に中国発の輸送では、スケジュール遅延、書類不備、通関トラブルなど、突発事態が少なくありません。こうしたリスクに対して「現地に確認します」で終わるのではなく、自ら動いて交渉・調整できる業者が理想です。
見積・スケジュール提示のスピード、質問への即時回答、通関・配送のリードタイム提示などから、日常的な対応力の高さも見極めましょう。
中国系フォワーダーと日系フォワーダーの違い
中国系フォワーダーは、地場ネットワークやコスト競争力に優れ、スピード重視の輸送では有利な面があります。一方で、日本語対応が不十分、書類や会計処理が煩雑、トラブル時の連絡が取りにくいという弱点もあります。
対して日系フォワーダーは、日本語対応の安心感、報告体制の明確さ、トラブル時の追跡対応に強みがありますが、コストや柔軟性ではやや劣る傾向もあります。
理想は、中国側では中国系フォワーダー、日本側では日系フォワーダーが連携する「日中混合型モデル」で、両者の強みを活かす体制です。
見積もり依頼時に伝えるべき情報
フォワーダーに見積もりを依頼する際は、以下の情報を正確に提示することが重要です。
- 貨物内容(品目、HSコード、数量、重量、寸法)
- 出発地・到着地(工場名・都市名レベル)
- 希望納期(納品希望日 or 船積希望日)
- インコタームズ(EXW、FOBなど)
- 通関責任者(輸出・輸入それぞれ)
- 最終配送範囲(港止め/倉庫配送/チャーター配送)
- 希望する付帯サービス(梱包、検品、保険など)
これらの情報があいまいだと、業者ごとに異なる前提で見積もりが作られ、比較が難しくなります。
海上輸送の見積もり完全ガイド|必要な9情報と費用内訳・見積書の見方
価格だけで選ぶ危険性
「安い=良い業者」とは限りません。基本運賃が安くても、
- 現地費用が高額
- トラブル時の対応が遅い
- サーチャージや書類作成費が別請求 といったケースが後から発覚することもあります。
信頼できる業者かどうかを判断するには、見積書の明細(現地費用、書類費、追加料金の有無)や、提案者のヒアリング姿勢(要望への理解度、逆質問の有無)にも注目しましょう。
補足情報
通関業者とフォワーダーの違い
通関業者は税関手続きを専門に扱い、インボイスやパッキングリストのチェック、関税納付、検査立ち会い等を担います。一方、フォワーダーは、輸送手段の手配から通関調整、納品までを統合的に管理します。
通関業者はフォワーダーに含まれることもありますが、明確に役割を分けて理解し、連携体制の有無を確認することが重要です。
特殊貨物・危険物輸送の注意点
バッテリー(UN番号あり)、リチウムイオン製品、薬品類、産業機械など、特殊貨物や危険物の輸送には専門知識と経験が不可欠です。
IATA危険物規則、IMDGコード、各国の法規制に適合しない貨物は輸送拒否や没収、罰金の対象となります。そのため、次のような確認が必要です。
- 危険物対応の実績はあるか
- 梱包やラベリングを正しく行える体制があるか
- 書類作成(MSDS・SDS・DGN等)を代行できるか
結論:価格ではなく「伴走力」で選ぶ
フォワーダーは単なる手配業者ではなく、輸送全体の設計と実行を担うパートナーです。経験と知識をもとに、問題発生時も責任を持って動いてくれる業者こそ、真に頼れる存在といえます。
中国輸送の最適化は「安く運ぶ」ではなく、「安心して任せられる仕組み」を構築することです。その第一歩が、正しいフォワーダー選定です。
基幹記事
輸出入と国際輸送の手引き
1.取引先を探す。
3.船積み準備
4.法規制
5.国際輸送
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