いまだにCIFのままで大丈夫ですか?
あなたは現在、中国から商品を輸入する際、「CIF契約(Cost, Insurance and Freight)」で輸送していませんか?
「売り手が全部やってくれるなら楽そう」と感じるかもしれません。でも、それが“落とし穴”です。
しかし、CIFのままでは、輸送スケジュールの不透明性、見えないコスト、トラブル発生時の責任の所在不明確さなど、荷主側にとってさまざまなリスクがあります。特に、中国輸送においては現地の輸送事情や通関のクセなども影響しやすく、売り手主導で進むことで本来知るべき情報が見えにくくなります。
CIF?インコタームズとは?
国際取引においては、売り手と買い手の「費用負担」「リスク移転」の範囲を明確にするために「インコタームズ(国際商業会議所が定める貿易取引条件)」が使われます。代表的なものにCIF、FOB、EXWなどがあります。
CIF契約の代表的なトラブル例
アパレル業者:納期遅延で在庫の山
CIF契約でLCL(混載)輸送を利用していたアパレル事業者。現地での集荷が遅れ、本船に間に合わず、出荷が3週間遅延。シーズン品が売れ残り、大きな損失に。
→ 原因は、売り手が安さ重視で選んだフォワーダー。納期や品質への配慮がなかった。
機械部品業者:破損品の補償で泣き寝入り
CIF契約で輸入した機械部品が破損。保険は売り手側契約で内容不明。補償請求も煩雑で、損害の一部を自己負担。
→ 保険内容を確認できないCIF契約の典型的なリスク。
ビール醸造機:DAP契約の誤解
飲食店がDAP(Delivered at Place)で契約。しかし到着後、「港までは運んだが、国内配送は知らない」と売り手から通告。
→ 中国の売り手がインコタームズを正しく理解せず、現地事情を考慮せずに提示していた。
中国側の売り手を過信しない。
売り手にとっては「日本国内の物流」は未知の領域であり、現地事情を理解せずに安易にD系条件を提示しているケースがあります。インコタームズの内容を売り手が十分に理解しておらず、実行責任を果たせない例も少なくありません。
このように「送料込み」や「設置まで込み」といった一見親切な契約でも、実態は曖昧なまま進められていることがあります。輸送契約を結ぶ際には、「本当に相手がその範囲まで対応できるのか」を冷静に見極めるようにしましょう。

トラブルは「売り手がインコタームズを理解していない」ケースで頻発します。特に中国では、D系条件(DDPやDAP)を“とりあえず条件を良く見せるために提示する商習慣があり、実態と乖離した契約が結ばれることが多いです。
CIF契約の“便利さ”が生む落とし穴
CIF契約には一見「便利さ」があります。
- 価格が一括表示
- 保険・輸送の手配不要
しかし、実際は……
- 輸送ルート・保険内容が不透明
- 納期遅延や破損時の責任が曖昧
- トラブル対応が後手になりやすい
つまり、CIF契約は「楽だけど、見えないコストが多い契約」なのです。

「楽だけど、後から困ることがある」──それがCIF契約の特徴です。
主導権を買い手が持つとは?
FOBに切り替えると、買い手が輸送の手配を主導できます。
- FOB:船に積み込むまでを売り手、そこから先は買い手が手配
- EXW:売り手の工場引き取りからすべて買い手が手配
買い手が主導権を持てば、次のような利点があります。
- 船会社・通関・保険を自社で選べる
- 輸送日程・内容の把握が容易
- トラブル発生時の対応スピードが上がる
貨物の特性と契約形態の関係性
各貨物の特性によって、輸送手段・契約形態の選び方は大きく変わります。
例えば、家電製品でCIF契約を選ぶと、保険内容が不明確なまま壊れて届くリスクがあります。逆にアパレルなど大量に流す商材は、FOBやEXWで現地混載網を活用したほうが無難です。こうした品目ごとの特徴を踏まえて、輸送設計と契約形態を一体で検討する必要があります。
- アパレル製品:軽量・かさばる=LCLやフェリー向き。短納期なら航空便。
- 家電製品:高価・精密=FCL推奨。湿度や衝撃に配慮した梱包が必要。
- 自動車部品:重量・長尺対応=FCLや特殊コンテナ。木箱梱包や防湿処理も必要。
FOBやEXWに切り替えるときの注意点とアドバイス
FOBやEXWに切り替えれば、輸送の管理を買い手側でできるようになります。ただし、その分、現地での集荷や通関の知識が必要です。だからこそ、中国側の事情をよく知っているフォワーダーとの連携が大切です。
FOB取引に応じる売り手と取引をしよう
仕入れ先に「FOBで見積を出して」と頼むと、中国側の業者は「面倒」「やったことがない」と渋ることがあります。そんなときは「コスト削減のためではなく、輸送管理をきちんとしたいから」と伝えることで、理解されやすくなります。売り手側の信頼関係がある業者なら、応じてくれる可能性が高まります。
CIFからFOB/EXWに切り替えるステップ
まずは、仕入れ先に「FOBやEXWでの見積もりを出してほしい」と頼むことから始めましょう。これまでCIFだったとしても、話し合い次第で切り替えられることはよくあります。
その後、自社で使うフォワーダーを選ぶ必要があります。ここで大事なのは、単に料金が安いかどうかではなく「通関や現地対応に強いか」「自社の貨物に合った提案ができるか」などを見極めることです。
さらに、納期を逆算したスケジュール管理や、保険の確認、現地での検品対応など、輸送全体を自社で把握して動かせるような体制を作ることが、成功へのカギになります。
最適化の本質は「見える化」と「選べる自由」
CIFは「安さ」や「手間のなさ」で魅力的に見えますが、実務の現場では「見えないコスト」「止められた貨物」「間に合わない納期」など、さまざまな問題の原因です。いま求められているのは“見える輸送”と“選べる自由”。そしてそれを実現するのが、FOB・EXWへの転換です。
コストだけでなく、情報の精度やタイミングが事業の成果を大きく左右します。CIF契約は一見便利に見えますが、その裏には荷主にとっての“見えない負担”が多く存在します。だからこそ今、自社主導の輸送体制への見直しが求められているのです。
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