中国向け緊急輸送と展示会輸送の実務ガイド:短納期案件の成功戦略
中国向け緊急輸送が通常フローで対応できない理由
通常の海上輸送やLCLを利用する場合、ブッキングから荷受け、船積み、通関、輸送という一連のプロセスに2~4週間が必要です。短納期が求められる案件では、このスケジュールは現実的ではなく、航空便やチャーター便への切り替えが必要です。
特に展示会向けの貨物や緊急調達品は、納期を守れなければ重要な商機を逸することになるため、通常のコスト比較ではなく「納期を確実に守れるかどうか」が最優先の判断基準です。
展示会輸送における通関リスクとATAカルネの効果的活用
展示会用のサンプル品や展示物は「商用販売用」ではないため、ATAカルネ(国際通関手帳)を利用するのが一般的です。この制度により一時輸入として課税を免除され、展示終了後に再輸出すれば課税リスクを回避できます。
ただし、ATAカルネに未対応の港や品目(食品、消耗品、化粧品など)では保証金の預託が必要です。また、中国では展示会貨物に対する検査が強化されており、特に広州交易会や上海の展示シーズンでは、デジタルトレーサビリティによる事前申告が必須化されつつあります。
書類に不備があれば数日間の遅延に直結するため、インボイスやパッキングリストの正確性を確保し「展示会貨物」であることを明示することが重要です。
航空チャーターを利用した短納期対応の実務プロセス
貨物が数トン規模で、定期便ではスペースが確保できない場合、航空チャーターが有効です。費用は数百万円から数千万円規模と高額ですが、工場ラインの停止防止や展示会出展を守るためには現実的な手段です。
実務の流れとしては、まず航空会社またはフォワーダーにチャーター枠の空き状況を確認します。次に特殊梱包(ULD、航空パレット)を確保し、緊急通関枠や休日対応を事前に調整します。到着空港から会場までのトラック配送も同時に手配します。
リスク管理の具体策としては、天候不良や航空管制による遅延に備えた代替空港(上海→杭州、広州→深圳)の確保が重要です。チャーター延期時の費用負担ルール(キャンセル料、遅延料)を契約で明示することも必須。複数のフォワーダーを並行して手配しておくことで、突発事態への対応力も高まります。
短納期海上輸送手法の詳細解説
航空輸送が不可能な大型貨物やコスト制約のある案件では、「DIGISHIP」などが選択肢です。(上海発日本全国各地まで3日間到着)日中間では高速RORO船やフェリーが利用でき、通常のコンテナ船(7~10日)と比較して3~5日での輸送が可能です。
費用は航空輸送の約5分の1で済みますが、ルートや港湾間に制限があり、貨物のサイズや重量にも制約があります。さらに、急速優先料や割増港湾費用などの追加コストが発生するため、通常の海上運賃との比較と検証が必要です。
国内側物流の調整における重要課題
短納期輸送のボトルネックは、実際には到着後の国内配送にあることが多いです。
例えば、日本の主要空港や港湾では以下の制約があります。
- 空港や港湾内でのトラック入構規制
- 高速道路や都市部における渋滞リスク
- 展示会会場での搬入時間指定
- エレベーター使用の制約など
東京ビッグサイトや幕張メッセでは、搬入時間帯が厳格に管理されており、予約制のリフトや特定の搬入口しか使用できない場合があります。国際輸送をいかに迅速に完了させても、現場搬入の調整ができなければ意味をなしません。輸送計画には「ラストマイルの調整」まで考えることが重要です。
費用と日数の目安から逆算する輸送計画の策定方法
航空便(定期便)
日本発から上海・北京まで約2~3日で、1kgあたり800~1,200円(体積重量換算)が目安です。航空チャーター便は出発から到着まで24~48時間で、1便あたり数百万円以上かかります。海上特急サービス(例:DIGISHIP等)は日中航路で約3~5日、費用は航空輸送の約5分の1程度です。
費用管理
チャーター便の請求書内訳(燃油費、空港使用料、地上ハンドリング費)を精査し、過剰請求を防ぐことが重要です。展示会輸送に伴う保証金については返却条件を契約書で明記し、通関後の返金遅延やトラブルを防止します。
緊急手配
超過重量や特殊設備使用料が突発的に発生しやすいため、必ず見積段階で追加コストの発生条件を確認しておく必要があります。
短納期輸送を成功させるための実務ポイント
航空、チャーター、海上特急便のいずれも「納期遵守」が重要です。展示会貨物についてはATAカルネの利用可否と中国特有の通関ルールを確認します。チャーター便では代替空港や複数業者の手配によりリスクを回避します。
国内搬入の時間指定や規制まで含めた「ラストマイル計画」の策定が重要です。請求書内訳や保証金返却条件を明確にすることで、突発的なコスト発生を抑えられるでしょう。
中国貿易実務で活用できるチェック項目
契約条項(SLA)設定の例
- D&Dフリー期間は展示会貨物では短縮されやすいため、必ず事前確認が必要です
- チャーター便や臨時便はブッキング後のキャンセル料が全額実費となります。
- 検査費用については書類不備は当事者負担、通常検査は買主負担とします。
- 展示会搬入規制(時間枠、車両制限)は契約に明記することが重要です。
- 遅延連絡についてはイベント日程に影響するため、判明後2時間以内の通知が必要
変動要因の確認項目
- 展示会場の搬入規制や事前予約の有無
- チャーター便の需要急増による価格高騰
- 通関の検査強化による遅延リスク
- 短納期輸送での航空スペース逼迫
- 為替や燃油サーチャージの変動
中小企業向け実務管理項目
- 展示会の納入締切から逆算して輸送計画を作成し、搬入時間や車両制限を主催者資料と照合
- チャーター利用時はキャンセル条件を必ず確認し、納期遅延時の代替案(別便、別港)を事前に検討します。
- サンプル貨物については検査リスクを踏まえ、余裕を持ったスケジュールで手配することが重要です。
相見積もり、インコタームズ確認、フリータイムの把握。小さな習慣の積み重ねが大きな効果を生みます。さらに詳しい実務の知恵は、中国貿易実務者向けリファレンスページをご覧ください。
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