
中国→日本 フェリー輸送 導入ガイド|小さく試して確実に定着させる方法
「気になっているけど踏み出せない」方へ
中国から日本への輸送では、フェリーがコスト面で魅力的なことは広く知られています。それでも、実際に導入に踏み切れていない企業が多いのが現実です。台風による遅延への不安、週1〜2便の限られた運航スケジュール、フォワーダーからの提案不足、そして社内承認の難しさ──これらの“心理的なハードル”が導入を阻んでいます。
本記事では、こうした不安を“管理できるリスク”に変え、フェリー輸送を小さく試しながら安全に社内へ定着させるための実務的ステップを解説します。
なぜフェリー導入が進まない?
1.社内の壁:部署ごとの優先順位の違い
営業部門はコスト削減を重視し、調達・物流部門は納期遅延のリスクを警戒します。新しい輸送方法を試して万が一遅延が発生すれば、現場が責任を問われる構造になっています。この「失敗したときの責任」への不安が、挑戦する意欲を奪います。
2.外部の壁:提案力と運用体制の不足
既存のフォワーダーにフェリー運用の経験がなかったり、通関・搬出・国内配送を当日中に連動させる体制が整っていなかったりするケースが見られます。その結果、チャーター便扱いになってコストが高くなり、「やはり航空便の方が確実」という判断に落ち着いてしまいます。
このように、社内外の事情が重なることで、フェリー導入は“理解されていても実行されにくい”状況が生まれます。
では、どのような条件ならフェリーが現実的な選択肢となるのでしょうか。
フェリーに向く案件・向かない案件
条件 | フェリーに向く案件 | フェリーに不向きな案件 |
---|---|---|
リードタイム | 出荷〜納品10〜15日が許容できる | ジャストインタイム型で余裕がない |
品目特性 | 中価格帯・軽中量品 | 温度管理・危険物・高額品 |
航路条件 | 博多・大阪・東京など主要港向け | 地方港で接続が難しい |
リードタイムに2〜3日の余裕があれば、フェリーは現実的な選択肢です。ここで重要なのは「全切り替え」ではなく、「小さく試して成功体験を積む」ことです。
小さく始める|1本単位のトライアル運用
- 急ぎでない商品を1本(1BL)単位で試す
- 船積書類・到着前申告・搬出予約が既存手順で処理できるか確認
- 結果を「遅延日数・通関完了時刻・代替輸送コスト」で測定
トライアルの目的は、フェリー輸送を「理論上の選択肢」から「再現可能な実務プロセス」に変えることです。以下の手順で、最小限のリスクで効果を確かめましょう。
KPI設定で「不安」を数値化する
指標 | 目標値 | 評価方法 |
計画差分(日) | ±2日以内 | 工場出荷〜納品までの比較 |
回復時間 | 48時間以内 | 遅延時の再納期確定まで |
回復コスト | CIF×10%以内 | 代替輸送・補償費を含む |
これらを社内KPIとして設定し、フェリー輸送を「再現性のある選択肢」として評価することで、心理的ハードルを下げられます。
トライアル運用の進め方(1コンテナで検証)
- 案件選定:納期に余裕があり、在庫リスクが許容できる商品を選ぶ
- 書類整備:Invoice・パッキングリスト・B/Lのテンプレとファイル命名ルールを統一
- 到着前申告:通関業者に早めに依頼し、審査番号を共有
- 搬出予約:到着予定日が確定したら、ターミナルの搬出枠とトラックを確保
- eD/O活用:電子荷渡指図書を使い、港での待ち時間を最小化
- 結果共有:従来の輸送方法と比較し、コスト・日数・安定性を数値化する。
回復設計|天候リスクを“想定内”に変える
フェリー輸送の最大の不安は台風などの運航乱れです。しかし、これは“想定外のトラブル”ではなく“設計可能なリスク”です。
対策 | 内容 |
二重ブッキング | 週2便運航の航路で予備枠を契約確保 |
代替ルート | 上海・青島→大阪/博多経由など複線設計 |
航空転送 | 重要品のみ航空へ切替(CIF価格の10%超を基準) |
自動承認 | Slackなどで上限費用を共有し、15分以内に決裁 |
このような回復設計をあらかじめ組み込むことで、フェリー輸送は“天候任せの賭け”ではなく“管理できるリスク”に変わります。
次に、社内稟議や評価基準の作り方を見ていきましょう。
社内稟議と合意形成のコツ
フェリー導入は物流改革ではなく“組織内の合意形成プロジェクト”でもあります。以下のように各部署への説明を準備しましょう。
- 営業→調達:「急ぎ案件は残しつつ、まずは1本だけフェリーを試しましょう」
- 調達→物流:「現行手順と同じ流れで処理できるか確認してほしい」
- 物流→経営層:「輸送コストを約30%削減。リードタイム+2日で安定性は確保」
このように、責任の所在を明確にしながら、小さく実績を積むことが社内合意を得る最短ルートです。理論や手順だけでは、社内の理解を得るのは難しいものです。
次に実際にフェリー輸送を導入した企業の事例を通じて、どのような効果が得られたのかを確認してみましょう。
実際の導入事例と効果
ケース別:実際にフェリー輸送に切り替えた事例と効果
ケース | 出発地→到着地 | 導入前(航空) | 導入後(フェリー) | コスト削減率 | リードタイム差 | 安定性評価 |
電子部品メーカー | 広東省→博多 | 7日/高コスト | 9日/安定 | 約35%削減 | +2日 | ◎(再現性高) |
日用雑貨メーカー | 青島→大阪 | 6日/混載AIR | 9日/混載FERRY | 約45%削減 | +3日 | ○(季節変動あり) |
食品原料商社 | 上海→東京 | 8日/冷蔵AIR | 10日/常温FERRY | 約50%削減 | +2日 | ◎(品質維持) |
ケース1:電子部品メーカー(広東省→博多)
- 背景:航空輸送が主流。コスト削減要請が強まりフェリーを検討
- 導入手順:納期に余裕のある部品を1コンテナ単位でトライアル。到着前申告+eD/Oで当日搬出を実施
- 結果:輸送コスト35%削減、リードタイムは+2日で安定。社内承認後、毎週1便をフェリー化
- ポイント:初回から稟議フォーマットとKPIを運用したことで、再現性を評価しやすかった
ケース2:日用雑貨メーカー(青島→大阪)
- 背景:航空コスト高騰により、混載貨物でのフェリー検討
- 導入手順:小口製品を集約し、路線便接続を前提に輸送設計。通関と配送を専門業者に分業化
- 結果:総コスト45%削減、納期の揺れは最大+3日。顧客納期に影響なし
- ポイント:輸送工程を分業管理に変えたことで、フォワーダー依存の制約を解消
ケース3:食品原料商社(上海→東京)
- 背景:航空貨物の冷蔵スペース逼迫。温度管理不要の製品でフェリー試行
- 導入手順:コンテナヤード直送・封印番号管理を徹底。到着前申告で翌日搬出
- 結果:リードタイム+2日、輸送費50%削減。検査発生率も航空便と同等
- ポイント:輸送コスト差を原料単価に反映でき、取引先への価格競争力が向上
これらの事例はすべて、「急ぎでない商品から試す→標準手順化→KPIで実証」という同じ流れで成功しています。社内の心理的な抵抗を減らし、フェリーを「安全な選択肢」として定着させることが共通です。
フォワーダー・通関業者選定のチェックポイント
フェリー輸送には、フォワーダー選ぶが重要です。フォワーダーの中には、フェリー輸送に不慣れな所もあります。特に日本入港以降の手配が悪く、高速フェリー輸送を活かしきれていないこともあります。
- フェリー、通関、ラストワンマイルの一環手配ができる?
- フェリー入港当日の通関→搬出→路線便出荷が同日で可能か?
- 夜間・祝日前対応の実績があるか?
- 港別のKPI(審査時間・許可率)を開示しているか?
- eD/O対応航路に慣れているか?
- 運航遅延時の自動再予約・連絡体制があるか?

最近は、フェリー輸送に関するあらゆる手配をオンラインで提供するサービスもあります。
フェリー導入で得られる実益
中国と日本との間で運航するフェリー輸送は、非常に便利なサービスです。海上輸送と航空輸送の”アイダのような存在”が実は、非常に大きな魅力を持っています。
- 航空輸送並みの速さで輸送できる。
- でも航空輸送よりも30〜50%のコストを削減できる。
- 航空輸送が難しい商品でも対応ができる。
- コンテナ単位での輸送安定化(積込効率向上)
- 重量物から精密機械部品まで様々な物を輸送できる。
- 日本に入港した当日の通関、荷揚げ、デバン等が当然
- 港湾・倉庫の混雑回避(到着前申告+eD/Oで停滞ゼロ)
スムーズなフェリー輸送は、フェリーに慣れているフォワーダーの選択次第だと言ってもいいでしょう。ぜひ、DIGISHIPのような中国フェリー輸送サービスを使ってみましょう!
より深く理解したい方は、以下の記事で関連分野を確認してみてください。
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- 梱包・CY直送の基礎設計は → 中国輸送を止めない梱包・ラベル標準化
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- KPIと改善手順の全体像は → 中国輸送”高速化”完全ガイド
まとめ
- フェリーは「リスクが高い」のではなく「設計すれば使える」選択肢
- 小規模トライアルで実績を作り、心理的ハードルを下げる
- 台風・遅延は「想定内」に置き、回復設計を標準手順化
- 当日連動体制とKPI測定を整えれば、航空便の代替手段になる
中国輸送のHOW TO
上級編:中国輸送の所要日数を最大1日短縮する実務ノウハウ
- 第1回:中国→日本 輸送“高速化”完全ガイド
- 第2回:中国輸送を遅らせないノミネーション活用と書類・カット管理の実務
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