予備審査制の活用で当日搬出を狙う

はじめに|“審査を前倒し”して1日を短縮する
多くの輸入貨物では、到着後に書類を提出してから審査が始まります。これでは通関許可まで1〜2日かかり、倉庫滞留の原因になります。そこで有効なのが「到着前申告」と「予備審査制」の組み合わせです。貨物が港に到着する前に書類審査を完了させておけば、検査対象外の貨物は“当日搬出”が現実的になります。
用語の整理
- 到着前申告:貨物到着前に輸入申告を行う運用。審査を先行させられます。
- 予備審査制:申告書類の予備審査を受ける仕組み。許可は到着・搬入等の要件確認後。
- 保税地域(蔵置場):税関許可前貨物を置く場所。到着・搬入情報の登録が実務の要。
- AFR(海上24時間ルール):船会社またはNVOCCが出港前に提出。輸入者は期限・情報精度をサポート。
- D/O(荷渡指図書)/eD/O:荷受け指示書。電子化で窓口滞留を縮小。
“今日から”の最短手順(15分で着手)
- 社内共有フォルダに「到着前」ディレクトリを作成(例:YYYYMMDD_Consignee_BL)
- Invoice/PL/B/Lのテンプレを統一し、ETAの数日前(目安48〜72h前)に通関業者へ共有する
- 通関業者がNACCSで到着前申告→審査番号を社内シートに転記する。
- 搬出予約(ターミナル予約サイト)とトラック確保をETA確定時点で実行。
- D/Oの事前手当(可能ならeD/O、紙なら回付順を事前合意)。
到着前申告の実務フロー(5ステップ)
- 書類準備:Invoice/Packing List/B/L(Master/House)を整える
- 到着前申告:通関業者がNACCSで作成・提出(電子添付可)
- 審査番号取得:許可見込み・検査区分を社内共有(シートやダッシュボード)
- 保税地域オペ:蔵置場で到着・搬入登録を行う
- 許可→搬出:搬出予約・トラック手配に沿って引取り

重要:蔵置場側の到着・搬入登録がないと、許可・搬出の実行が進みません。
必要書類の例:
- Invoice:品名、数量、価格、通貨、契約条件を明記
- Packing List:梱包サイズ、重量、数量を統一
- Arrival Notice:船社発行の貨物到着案内
- 保険証券コピー(必要に応じ添付)
Google DriveやBoxで共有し、WebNACCS照会結果をダッシュボードで通知。さらに、NACCS画面キャプチャを教育資料として使うことで、入力誤りを削減できます。
AEO認定通関業者の活用(時短の定番)
書類が完璧でも、通関業者の対応が遅ければ当日搬出は難しい。ここで効果的なのが、税関から信頼を得ているAEO認定通関業者の活用です。
| 項目 | 標準値 | 評価 |
| 年間通関件数 | 1000件以上 | 実績豊富な業者を優先 |
| 検査率 | 全国平均5%未満 | リスク低減効果あり |
| 対応範囲 | 夜間・休日対応可 | 緊急便に強い |
| NACCS連携 | 自動通関・電子承認可 | 電子化体制が整備済み |
| 港別強み | 上海・寧波・青島実績あり | 特定港での調整が早い |
通関業者をスコアリングし、平均4.0以上を指名候補とします。契約時にはKPI(審査時間・検査率・リードタイム)を明記し、PDCAを回すことが重要です。
書類審査の精度と速度を確保したら、次は港でのボトルネックであるD/O処理を電子化していきます。
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eD/O(電子D/O)の使い方
港での大きなボトルネックはD/O(荷渡指図書)の紙発行待ちです。これを解消するには、eD/O(電子D/O)が便利です。
主なポイント:
- Maersk、CMA CGM、ONEなど主要船社はeD/O対応済み
- 航路・港・代理店により運用差あり。案件ごとに確認が必要
- 紙併用時は、事前押印・窓口混雑帯の回避・回収後すぐ予約連携
- 社内承認は電子署名(Adobe Sign等)で即時化
eD/Oの未対応航路のハイブリッド運用マニュアル
- 電子対応航路:主要港(東京・大阪・神戸)でeD/Oを標準運用。
- 紙対応航路:地方港では事前押印・窓口ピーク回避を実施。
- 時短策:事前署名済D/Oを回収しておき、到着前にフォワーダー承認を得る。

ある精密部品メーカーでは、eD/O導入によりD/O発行から搬出までの時間を1.5日から0.2日に短縮。全体リードタイムを平均1.3日削減しました。
港倉庫の搬出予約と当日リカバリー
港倉庫は搬出予約制であり、繁忙期は数日前に枠が埋まります。ETA確定時点で前日までに予約完了・トラック確保が基本ルールです。
主な運用例:
- 東京港:CONPAS/東京港ポータル利用。締切・番号は公式サイト参照。
- 他港:各ターミナルの締切(72h/48h/前日)を確認し一覧化。
当日リカバリー策:
- キャンセル拾い:早朝6〜8時の再オープン枠を監視
- 代替ヤード搬入:フォワーダー経由で承認を取得
- 夜間延長枠:祝日前は延長可否を確認
- BOT自動連携:Slack BOTで空き通知・自動再予約(3分間隔)
社内共有と“止めない”設計
当日搬出には、社内伝達の速度設計も不可欠です。
共有ルール例:
- 審査番号・検査区分・許可時刻をダッシュボードで自動表示
- 代替便の自動承認ルール(上限◯万円/BL)をSlackに設定
- 証跡は月次でまとめてフォルダ保存(命名:YYYYMM_KPI_evidence.zip)
よくある詰まりと対策:
- AFR責任主体の誤認 → 船社/NVOCCの役割を事前確認
- 蔵置場登録漏れ → 搬入連絡のWebhook設定
- 紙D/Oの滞留 → 事前押印・午前10時台回避・窓口動線最適化
- 書類名称の不統一 → テンプレ固定と命名規則の標準化
以上の各工程を“止めない設計”でつなげると、当日搬出が再現可能になります。
行動ステップ(即日〜1か月)
| 期間 | 主な行動 |
| 即日(今日〜) | 到着前フォルダと命名ルール策定/通関業者と運用合意 |
| 1〜2週間 | eD/O導入と港予約サイト一覧作成 |
| 1か月以内 | KPIを契約別紙に明記しPDCAを開始 |
まとめ(安全な一文)
- 到着前申告+予備審査制で審査を前倒し。
- 蔵置場の到着・搬入登録/搬出予約/D/O手当が当日搬出の三本柱。
- AEO業者・eD/O・予約サイトの活用で滞留を削減。
- 効果数値は自社の実績値として注記し、一般化は避ける。
“今日から”チェック(5つだけ)
- 到着前フォルダと命名規則を社内に周知。
- 通関業者と到着前申告の運用合意(審査番号の共有方法含む)。
- 取扱ターミナルの予約サイト一覧を整備(締切・必要番号)。
- D/O運用の型(eD/O優先/紙の回付順)を決定。
- 代替便の自動承認上限を契約別紙・Slackに明記。
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