
社内で使える中国輸入SOPの作り方

書類・搬出・通関・配送を一体化する手順を設計します
属人化から「仕組み化」へ変わるタイミング
中国輸入を続けていると、どうしても担当者の知識や経験に依存しがちです。しかし、2025年以降の電子通関・リスク管理制度では、手順の明確化・再現性が求められます。
「誰が担当しても同じ結果が出る」状態――それがSOP(Standard Operating Procedure/標準作業手順)です。
この記事では、中国輸入の各プロセスを「社内SOP化」する手順と構成例を紹介します。
なぜSOPが必要なのか?現場で起きている3つのリスク
まずは現場で実際に発生している課題を整理します。
1.担当者の退職・休暇で業務が止まる
手順が頭の中だけにあり、書類フォルダの場所も分かりません。
2.フォワーダー・通関業者に完全依存
指示内容を理解せず丸投げしてしまい、結果的にトラブル時の対応が遅れます。
3.情報伝達のズレが積み重なる
担当者間で「聞いた・聞いていない」が頻発し、到着前申告やD/O処理が後手に回ります。

これらはすべて「手順の見える化」と「責任範囲の明確化」で防げます。
中国輸入SOPを構築する5ステップ
次に具体的なSOPの構築手順をご紹介していきます。
STEP1.全体フローを「線」で書き出す
中国→港→通関→配送→倉庫→納品まで、主要プロセスを一本の線でつなぎます。
基本フロー例:
仕入発注(PO発行) → 出荷書類作成(Invoice/PL/B/L) →船積・到着前申告 → 通関・搬出 → 国内配送・倉庫入庫
「誰が・何を・いつ・どの形式で」行うかを一覧化することが出発点です。
💡 注意点: NACCSなど電子通関システムの操作手順も併記すると、後任教育が簡単です。
STEP2.プロセスごとに「実務単位」で手順化する
各工程を担当部署別に細分化します。以下はSOPの基本構造例です。
工程 | 主担当 | チェックポイント | 使用書類/ツール |
---|---|---|---|
出荷書類作成 | サプライヤー | Invoice・PLの内容とHSコード整合 | Excel・PDF |
通関書類準備 | 輸入担当 | 到着前申告データの事前共有 | NACCS・メール |
通関依頼 | 通関業者 | 許可後24h以内搬出指示 | eD/O・Slack |
国内配送 | 物流担当 | チャーターor路線混載手配 | 配送依頼書・LINEWorks |
データ保存 | 管理部 | 各書類の命名・格納ルール | Google Drive/NAS |
ExcelやNotionを使えば、1ページで全体フローを一覧化できます。
💡 補足: 実際のNACCS画面キャプチャや操作例を添付すれば、さらに実務的になります。
STEP3.書類・データを「共通命名」で統一する
SOPの要は「誰でも探せるファイル管理」です。
おすすめの命名ルール
例えば、個別のファイル名を以下のように規則性を付けてネーミングします。
[日付]_品目_HSコード_工程_取引先.pdf
例:2025-02-20_PL_8538_上海FWD_Invoice.pdf
NACCS申告データ・Invoice・Form Eなど、同じ形式で保存します。変更履歴を残す(例:_v1、_v2)ことで再提出時も混乱しません。
💡 活用の注意点: 通関業者やフォワーダー側のファイル形式と整合性を取ることが重要です。
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STEP4.チェックリストと承認フローを標準化する
各工程の完了条件を「チェックリスト化」し、Slackやメール、表計算で「承認済み」「差戻し」を管理します。
例:「通関前申告」チェック項目
- ☑️ InvoiceとPLの数量一致
- ☑️ 原産地証明書の有効期限確認
- ☑️ B/L番号が一致
- ☑️ NACCS登録完了通知あり
このチェックリストを全社で共有することで、属人エラーをゼロにできます。
💡 現場事例: 通関トラブル発生後にSlack承認ログで原因特定が可能になり、対応時間を70%短縮した例もあります。
STEP5.SOPの「見直し日」を決める
制度改正・フォワーダー変更・港湾ルール更新など、輸入業務は変化が激しいため、SOPは「一度作って終わり」ではありません。
推奨運用:
- 四半期ごとの棚卸しが必要です。
- 改定日・改定箇所を履歴管理(例:「ver.2025-04 CCC改正対応版」)
- 社内共有時には「改訂箇所だけを周知」する簡易報告書を添付
💡 改善のヒント: 改訂SOPをTeamsや社内ポータルにアップし、社員がコメントできる仕組みを設けると更新精度が上がります。
SOP導入企業の改善効果(実例ベース)
改善項目 | 導入前 | 導入後 | 改善率 |
書類不備件数 | 月平均12件 | 月平均3件 | ▲75% |
通関遅延件数 | 月平均5件 | 月平均1件 | ▲80% |
担当者教育期間 | 平均2か月 | 平均2週間 | ▲75% |
クレーム発生率 | 10件/月 | 3件/月 | ▲70% |
SOP化によって「時間の短縮」よりも「安定稼働率の向上」が顕著です。
💡 補足事例: 改正後SOPに「CCC改訂対応章」を追加した企業では、再申告率が0.8%に低下しました。
推奨・SOPテンプレート構成例
セクション | 内容 | 形式 |
基本情報 | 工程名・責任者・改訂日・対象取引先 | Excel/Word |
手順概要 | 作業順序と目的(5行以内) | テキスト |
必要書類 | Invoice/PL/B/Lなど一覧 | 表形式 |
チェックリスト | 工程完了条件・承認者署名欄 | チェックボックス |
添付資料 | 見本書類・スクリーンショット | PDF/画像 |
この構成で作成すれば、社内教育資料としても即活用可能です。

補足提案: フォワーダー評価表(応答時間・通関精度・クレーム率)をSOP別に添付すると、外部委託の品質管理にも活かせます。
戦略的インサイト
「SOPは”輸入の品質保証書”である」
- 施策: 各港湾別・フォワーダー別のSOPを社内フォルダで管理
- 効果: 通関精度・納期遵守率が安定 / 教育コスト削減
- 前提条件: 電子通関・eD/O・Slack/Drive連携
- リスク: 更新放置・承認権限の曖昧化
- 重要指標: SOP遵守率・改訂頻度・輸入安定率
まとめ
SOP化は「業務効率化」ではなく「再現性の確立」です。
- 書類・搬出・通関・配送を「一つの線」で設計する
- 命名・承認・更新の3要素を共通化すると安定性が高まる
- 四半期ごとの見直しで制度改正にも対応
- SOPが整うとトラブル対応力と教育コストが同時に改善する
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