
【判断編】自分で決める勇気|現場で差がつく”判断筋”の鍛え方
“正解がない”世界で、どう動くかがすべてを決める
貿易の現場では、「これが正解!」と言い切れない判断を迫られることがたくさんあります。通関、輸送、契約、支払い、相手国の制度──どれも日々状況が変わっていきます。
そんな中で、多くの方が口にする悩みは実は共通しています。
- 書類が届いたけど、どれを先に処理すればいいかわからない
- 現地のフォワーダーから急に追加費用を請求されて混乱している
- 税関から質問票が届いたけど、どう回答すればいいかわからない。
- 仕入れ先、販売先が見つからない。うまく交渉ができない。
こうした場面で”人任せ”にしてしまうと、現場は静かに、でも確実に止まってしまいます。
ここで大切なことをひとつお伝えしたいのですが、フォワーダーも税関も仕入先も、”助けてくれる人”ではなく”一緒に進める協働者“なんです。
だからこそ、判断を自分で引き取る力──それが、トラブルを防いで、信頼を得る唯一の道になります。
判断を人に預けると、なぜ現場が止まってしまうのか
「フォワーダーに任せているから大丈夫です」 「税関から連絡が来たら動きます」
この言葉を聞いた瞬間、私たちは”危険信号“だと感じます。なぜなら、判断を先送りした分だけ、時間も費用も信用も、少しずつ失われていくからです。
では、具体的にどんなケースで問題が起きやすいのか、見ていきましょう。
よくある”判断放棄”の落とし穴
失敗例 | その時の考え方 | 結果 |
海外の仕入れ先との意思疎通不足 | 相手が全部やってくれているから大丈夫 | 輸入通関で書類外の貨物(申告外貨物)が大量に見つかる。 原産国表示が全く違う物が届く。 医療に該当する文言があるパッケージで商品が届いた |
INCO(貿易条件)・Free Time(無料保管期間)・D/O(荷渡指図書)を理解せずに契約 | 「細かいことは業者に任せておけば大丈夫」 | 想定外の現地費用が発生+遅延 |
税関からの質問票を後回しにした | 「急ぎじゃなさそうだし…」 | 検査が入って、蔵置費が数万円単位で増加 |
搬出予約を通関後に行った | 「とりあえず通関が先でしょ」 | 倉庫が満杯で搬出できない |
B/L(船荷証券)・INV(インボイス)・PL(パッキングリスト)の照合を怠った | 「書類はフォワーダーが作るから大丈夫」 | 差し戻し→再申告→2日遅延 |
実は、Hunadeで支援してきたクライアントさんの中にも、Free Timeの誤解が原因で、1件あたり平均2〜4万円の追加費用が発生してしまったケースがありました。
でも逆に、判断を前倒しできた方は、そのコストを90%以上削減できています。つまり、「いつ判断するか」が、結果を大きく左右します。
現場で生き残る”判断の型”5ステップ
現場での判断には、難しい理論は必要ありません。判断の流れは、実はとてもシンプルです。
1. 事実
まずは、数字・日付・原文で”今起きていること”をはっきりさせましょう。
例:ETA(到着予定日)、Free Timeの残り日数、質問票の原文、見積もりの単価など。
2. 選択肢
次に、A/Bの二択を明確にします。
例:「LCL(混載便)を続ける or FCL(コンテナ1本)に切り替える」「航空便 or 海上便」など。
3. 仮説
それぞれを選んだ場合、どんな結果になるかを時系列で想定してみます。
例:「Aなら翌週出荷できる、Bならコストが10%増える」など。
4. 判断
「誰が・いつまでに・何を決めるか」を明確に文字にします。
曖昧な決定は、現場を止める最大の原因になるので、ここはしっかり言葉にしましょう。
5. 記録
最後に、決定内容・根拠・時刻を1行でいいので残しておきます。
この積み重ねが、次回の判断スピードを劇的に速くしてくれます。
判断メモと一次対応SOPの具体例
「型」があると、判断がグッとスムーズになります。ここでは、実際に使えるテンプレートをご紹介しますね。
判断メモ(テンプレート例)
項目 | 内容 |
案件名 | 上海→神戸 LCL輸入 |
最遅ライン | 4/15(Free Time終了前日) |
選択肢A | FCLへ切替(費用12万円・納期短縮2日) |
選択肢B | LCL継続(費用9万円・リスク滞留) |
判断 | Bを採用・倉庫搬出予約4/10実施 |
根拠 | 3社見積比較・輸送実績ログ参照 |
一次対応SOP(検査・遅延・差し戻しが起きた時)
- 10分以内:関係者へ「現状+暫定方針」を共有
- 60分以内:不足している資料をToDo化して、担当を割り当て
- 24時間以内:正式回答→再予約→ログを更新
相談メールの書き方例
件名:税関質問票への回答案についてご相談(案件:食品サンプル)
本文:
いつもお世話になっております。
添付の質問票に対して、以下の2案を考えました。
A:用途を中心に説明する
B:成分構成を中心に説明する
どちらがより適切か、ご確認いただけますでしょうか?
このように、「自分なりに考えた上で相談する」スタイルにすると、相手も的確なアドバイスをしやすくなります。
判断が遅れた人と早かった人の明暗
では、実際にどんな差が出るのか、3つのケースをご紹介しますね。
ケース1:Free Timeの誤解で蔵置料3万円
「まだ5日あるから大丈夫」と放置してしまった結果、週末を挟んで3日超過。
→ 対策:到着前に最遅ラインを逆算して共有していれば、3万円の損失を防げました。
ケース2:税関質問票にテンプレ回答したら再質問が来た
「食品サンプルです」とだけ回答したところ、成分・用途が不明で再検査に。蔵置費が追加で4万円。
→ 対策:最初から仕様書・成分表を添付していれば、再質問ゼロで済みました。
ケース3:LCL→FCL切り替え判断の遅れ
単価が逆転していることに気づかず、1便遅れて納期が2週間延びてしまった。
→ 対策:損益テンプレで判断していれば、次回から即決で赤字を回避できました。
このように、「判断のタイミング」ひとつで、コストも信頼も大きく変わってくるんです。
コンサルを使いこなせる人と、途中で離脱してしまう人
ここでも、大きく2つのタイプに分かれます。
観点 | 使いこなせる人 | 途中で離脱してしまう人 |
準備 | 事実と仮説を整理してから相談する | 白紙で来て「正解」を求めてしまう |
対話 | 明確な質問で検証を進める | あいまいな質問で終わってしまう |
実行 | 期限付きで行動して、報告する | 動かず、結果も共有しない |
学習 | メモを残して、型を更新していく | 記録せず、毎回リセットしてしまう |
Hunadeのコンサルティングは、”答えを配る場”ではありません。判断筋を鍛えて、”自分で舵を切る経営者“を育てるための道場のような場所です。
実際に支援を受けた方の中には、3か月で判断の標準化テンプレートを構築して、対応スピードを40%も短縮できた事例もあります。
今日からできる「判断力強化3ステップ」
最後に、今日からすぐに始められる3つのステップをお伝えしますね。
1. 判断メモを作る
1案件=1ページで構いません。判断内容・理由・日付を残しましょう。
2. SOPを導入する
トラブル対応の24時間ルールを決めておきます。
3. 相談の仕方を変える
「どうすればいいですか?」ではなく、「こう考えたのですが、妥当でしょうか?」と聞くようにしましょう。
まとめ|判断力は、事業の筋力
判断を人に預けてしまうと、時間・費用・信用を失ってしまいます。
でも逆に、事実→選択肢→仮説→判断→記録の型を持っていれば、どんなトラブルでも立て直すことができます。
Hunadeのコンサルティングでは、案件ごとの判断メモ作成サポートや、トラブルを未然に防ぐ仕組みづくりを、一緒に進めていきます。
【 貿易の世界は広くて深い海。準備や経験なしで一人で泳ぐのは、まるで素手で海を渡ろうとするような挑戦 】
貿易という世界で何十年と身を置いている者からすると、失礼ながらまさにこのようことを感じてしまいます。
まずは15分の無料相談で、「判断が止まってしまう原因」を一緒に整理してみませんか?
次回:【行動編】「やりっぱなし貿易からの脱却」では、学びを仕組みに変えて、継続していくコツをお伝えしていきますね。


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